ネットの海で物語る【第7回】創作活動に付随する悪意 1/2
創作活動に付随する悪意
好事魔多し?
2021年5月某日、メールボックスに表示された文字を見た瞬間に心臓が縮み上がった。
『コンテストに関するご連絡』
小説を書き始めて半年、そのようなメールがきたのは初めてでした。震える指でメールを開くと、そこには私の作品が朗読作品として採用された旨が書かれていました。
「え、マジ? いやいやまさか……」
と、声を出しながら何度も何度も来たメールを読み返しました。このコンテストは人気ラジオ番組J-WAVE SPARKと講談社が運営する小説投稿サイトNOVEL DAYSが共同で実施しており、 採用された作品は山本彩さんが番組内で朗読してくれるというものでした。
ようやく実感が湧いてきたときに「本当にこんなのってあるんだ……」と採用されたくて応募していたのに、なんだかよくわからない感情になったのをよく覚えています。
Xでも採用された旨を報告し、たくさんの創作仲間に祝ってもらいました。そしてその2日後、コロナ禍のマンガ&文章コンテスト「Our Day to Day」で優秀賞をいただきました。さらに続けて小説投稿サイト野いちごのエピソードコンテストで佳作を受賞。5月だけで3回受賞するという奇跡が起こりました。たぶん、自分が一番驚いていました。
結果が出せたことに安心しながら、前向きにこれからも文章を書いていこうと思っていた矢先のことです。 嫌がらせ・陰口・誹謗中傷を受けるようになりました。
このエッセイで晒し行為や糾弾をするつもりはないので詳細は伏せますが、ある程度創作活動が目立ってくると 「悪意を向けられる」可能性が一気に上がります。
ネット上の創作活動は、悪意を受けやすい
もともと、公募・コンテストというものはそのような性質があって当然なのです。
考えてみてください。限られた受賞の枠を巡って、数百人、公募によっては何千人の人が挑戦しているのです。自分が受賞した喜びのその影には、数えきれない涙とため息があります。恨まれたり、妬まれたり、そんなものがない方が不自然のように思えてきませんか?
前回の記事でも触れましたが、公募で落選が続くと他者の活躍や成功が羨ましくなります。人間ですから嫉妬することもあれば落ち込むこともあるでしょう。私だって嫉妬したり羨んだりしていましたから、動機としては理解できます。
もし、これを見ているあなたが受賞したときに悪意を向けられたら『賞レースはそういうものだ』とできるだけ割り切って受け止めた方がいいでしょう。あなただから、あなたの作品だから責められたりしたわけじゃない。誰にだって訪れる可能性があるイベントのようなものなので、過度に自分を責めてはいけません。どれだけ自分の行動に気をつけても、全ての人から認められることは無理です。自分を変えることはできても、他人を変えるのは簡単ではありません。
ちなみに、割り切ることが必要だと書きましたが、 誹謗中傷が許される行為とは全く考えていません。 応募者は自分が落選する可能性を理解したうえで賞レースに参加しているはずですし、その落選のダメージを受賞者にぶつけることは大変に愚かな行為です。自分のなかで負の感情が激しく湧き上がっても、できる限り心の中に留めておくか、身内に愚痴る程度にしといた方がいいでしょう。受賞者や主催者に直接文句を言ったり、誹謗中傷をSNSで発信した場合、その発言が原因で全てを失ってもおかしくありません。
■profile
蜂賀三月 (はちが みつき)
小説家。ショートショート、児童書、YA小説をメインに執筆活動を行う。著書に『絶対通報システム~いじめ復讐ゲームのはじまり~』(スターツ出版)、 短編小説収録『5分後に奇跡のラスト』(河出書房新社)など。小説情報メディア
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