あなたとよむ短歌 vol.54【お悩み回答】~自分の意見、他者の意見~(3/3)
それでは、今回はもいただいたご質問に回答していきたいと思います。今回は一気に3人の方からの質問をご紹介します。
1)わたしは自由律短歌しか作れません(とても楽しさがあります)。
いま、ひたすら5文字や7文字の言葉をメモして集めています。
それはとても楽しくありません。
「仕事でもないのだからいいか」と「5・7・5も作れなくては」というわたしで
板挟みです。つまらなくて短歌を放棄しそうです(すでになりかけ)。
(でも「形」にできる創作活動は、わたしにとってこれしかないのです)
どうしたら57577の短歌が詠めますか?
2)57577のリズムが心地よいと感じるのですが、
破調の短歌を見かけるようになりました。
平地でつんのめったような気持ちでなんかイヤです。仕方ないのでしょうか?
3)!や「」といった記号を短歌の中で使うことを、
“効果的であれば有り”とおっしゃる方と“記号を使うことは有り得ない”と
おっしゃる方の2つに分かれています。
自分で“効果的である”と自信があれば記号を使ってもいいのでしょうか?
指摘されると落ち込んでしまいます。
選考がある公募の場では、入選する作品の何倍、何十倍、下手したら何百倍もの落選作品が生まれてしまいます。選に入らないとがっかりもしますが、自分で心底気に入っている作品ができているなら、あまり気にしないほうがいいかもしれません。
3件とも「自分自身との短歌とのあり方」についての質問です。1の質問者さんは、定型(57577)ではなく自由律(あるいは破調)で短歌を作ることに楽しさを感じている。2の質問者さんは破調の短歌を好きになれない。3の質問者さんは短歌を詠む際に記号を使って、それを指摘されると落ち込んでしまう。
どれも「現代短歌というのは、背景に長い歴史を持ちながらも多様性を含むものだなあ」と感じる質問です。さまざまな考えの人がいて、さまざまな短歌を詠む人がいて、師弟関係を持つ人も持たない人もいます。今、短歌というものに定型はあっても厳密なルールというものはありません。強いていうなら、31音より著しく長くなったら「短い歌」である「短歌」ではないかもしれませんね。
1の方は、自分自身を表現する創作活動として短歌を楽しむのであれば、そのままでまったく問題ないと思います。自由律短歌、いいじゃないですか。
一方で、もし「短歌公募やコンテストで採用されたい」という希望があるならば、57577の定型のリズムを身につけ、生かせるほうが入選するとは思います。特に、企業や自治体が主催する一首単位の募集などは、定型の作品が求められる傾向があります。ただいずれにせよ、楽しんでいるものを放棄するのはもったいない気がします。抵抗がなければ、ぜひいろいろな歌集を音読してみてください。57577のリズムに魅力を感じられるようになったら、自然と詠めるかもしれません。
2の方は「すごくイヤなんだな~」という気持ちが伝わってきました。そう感じる人もいるかもしれません。定型をしっかり守る歌人も多くいるので、そういった歌人の歌集を読むと没頭できると思いますし、作品をどこかに投稿するなら、主に定型の短歌を詠む歌人が選考するコンテストだと縁がありそうです。
ご自身が破調の短歌をイヤだと感じることを無理に直す必要もないし、誰かが破調の短歌を詠むのも自由です。もし短歌結社などに所属していて、結社誌に破調の短歌が多く掲載されており、どうしてもそれに疑問を抱くということならば、結社の先輩や選者に考え方を質問して議論してみてもいいかもしれません。
3の方については「短歌で記号を使うことがルール的にNGではない」ということをご存知だからこそ、このような質問をくださったのだと思います。記号を用いた秀歌はたくさんあります。横文字の外国語を使った名歌もありますね。
記号やアルファベットは短い文字数の短歌において確かにインパクトが強いものです。それだけに使いどころには悩みます。かつてはカタカナやスペース(空白)についても、激しく是非が争われてきました。使うべきでないと考える人も、そうでない人もいます。有効かどうかは常に考えたいものです。でも、ダメだというルールはありません。
おそらく一番の問題は「指摘されると落ち込んでしまうこと」だと思います。作品を公開すれば、読んだ人はなにかしら思うはずです。機会があれば感想や評がもらえます。でも、その感想や評を聞き入れるかどうかは作者に権限があるのです。すべての指摘を聞きいれなくていいんです。
記号の使用については短歌のルールではありません。まるでルールかのようにダメだという人がいたら(その人に師事していない限りは)そっと離れましょう。相手が結社や短歌教室などで師事している人なら、可能なら「なぜそう考えるか」くわしく教えてもらいましょう。また、コンテストなどの規定に何かしら指定があったり、その発表媒体にルールやマナーがあるならば、それには従った方がいいでしょう。
それ以外は、自分でどの意見を聞き入れるか自分で決めれば大丈夫です。どんな立場のある相手からの意見でも、創作の本質的には創作者側に「寄せられた意見を取捨選択する」自由があるはずです。
作品や質問のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「天気」を募集しています。 テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。 どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「天気」。 応募点数制限なし。 応募フォームに柴田さんへの質問欄を設けています。短歌のことや、作品づくりについて選者:柴田葵さんに質問があればご自由にお書きください。匿名で質問内容とその回答を記事に掲載させていただく場合があります。必ずしも回答があるわけではございませんので、ご了承ください。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌天気」をつけてツイートしてください。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末~翌月頭を予定しております。 |
締切 | 2024年9月30日 |
発表 | 2024年11月1日 |