“自分の普通”に価値がある!『おひとりさまのあったか1ヶ月食費2万円生活』著者・おづまりこさんに学ぶ創作のヒント


以前はストーリー漫画を描いていたおづ先生が、人気エッセイ漫画家に! プロへの道と、コツについて聞いた。
自分の〝普通〞が普通でないことも!
もともとは、ストーリー漫画の作家を目指していたというおづさん。友人から「コミックエッセイを描いたら?」と勧められても、「コミックエッセイは際立った特技やネタをもっている人が描くもの」というイメージが強かったため、いまひとつ乗り気になれなかったという。
だが、本来の夢がうまくいかないまま20代後半に。「ストーリー漫画とコミックエッセイ、どちらもだめだったら1回この道はあきらめよう」と編集部に両方の作品を持ち込んだ。すると、コミックエッセイで好感触を得て、「この道で行こう」と決めた。
持ち込んだ作品は「ひとり暮らしの生活」がテーマだったが、転機となったのは「食費月2万」というキーワードだった。
「編集者さんとの打ち合わせの中で『月2万円の食費で暮らしていて』と口にしたら、『少なすぎない!?』とびっくりされて。自分では普通のことだと思っていたので、逆に驚きました(笑)」
以来、「月2万円の食生活」にテーマを絞って毎日ブログに作品(本人いわく「下書き程度のものですが」)をアップし続けたところ、閲覧数はみるみる上昇。初の単行本『おひとりさまのあったか1ヶ月食費2万円生活』の出版が実現した。今や、シリーズ累計12万部を誇る人気コミックエッセイ作家の1人である。
「描いて、見せる」でどんどん磨かれていく
作品づくりのコツを尋ねると、「人に見せることですね」と明確な答えが返ってきた。おづさんの場合は編集者の意見はもちろん、ブログに設けた読者からのコメント欄がとても役に立ったという。
「読んだ人の反応を知ることは、すごく大事。自分の描いたものが面白いかどうかがわかるだけでなく、『〇〇がよかった』『〇〇についても知りたい』など具体的な意見や感想があると、モチベーションが上がりますし、次のネタのヒントにもなります。手直しするべきところもわかり、作品がどんどん磨かれると思います」
さらに、おづさんは言う。
「伝えたいと思うから描くわけですよね。発信するからには反応がないと、やりがいがなくて続かないものなんです」
おづさんの既刊シリーズは「いかに安く、ラクに、楽しく暮らすか」を伝えるための実用書のような作りを意識しており、自身の感情などはほとんど省かれている。
「今後はよりエッセイの要素を強くしたいというか、自分の思いやひとり暮らしの情景を中心に描いていきたい」と語るおづさん。こうした新機軸への挑戦も、読者の声に後押しされたところが大きい。
描いて、見せる。作り手が発信したものに、読み手が反応する。そうした人と人との相乗効果により、作品の魅力とともに作り手の可能性も広がっていくのだ。
おづまりこ先生に創作について聞いた!
ネタのストックはタイトル風に
「このネタを描こう」とメモをするときは、タイトル風にひと言で。こうすると話全体のイメージが膨らみやすく、描いているうちに軸がブレてしまうこともない。
あらすじができれば完成したも同然!
まずは話のあらすじを文字で書いておく。話の流れができれば、1話分はできたも同然! その次に、どういう絵を入れるかを考える。コマ割りは二の次!
ブログでどんどん発表する
下書き程度のものでいいので、ブログでどんどん発表する。アメブロやライブドアなど競合が多いサイトは「関連作品」として紹介されることも多く、読者がつきやすい。
おづまりこ
兵庫県生まれ、東京在住のアラサー漫画家。美大(映像専攻)卒業後に上京、ルームシェアを数年した後、ひとり暮らしに。
※本記事は2019年7月号に掲載した記事を再掲載したものです。