【主観的すぎる文章は要注意】思い込みを疑うだけで文章の説得力が激変! 自分とは真逆な人を想像しよう


普遍性のない考えに「別の見方は?」と突っ込め!
独りよがりで普遍性がなければ失格。そうならない方策を考えよう! 自分の常識を疑うだけで、文章は普遍性を獲得する。
自分は正しいという思い込みを捨てろ
海外に行くと日本が見えたりする。国内でも遠方に行くと居住地との違いを実感したりする。
どんな人も、〝内部〞にいると客観視できず、自分の考え方、やり方が〝普通〞だと思ってしまう。書くときは、自分が正しいと思っていること、当然と思っていることを疑ってみよう。
自分とは真逆な人を想像しよう
個人として書く文章は主観的なもので、だからこそ面白いという面もあるが、書きながら、あるいは書き上がったあと、冷静に考え、自分とは正反対の立場の人はどう思うかと考えてみよう。
男性は女性を、若い人は高齢者のことをちょっと考えるだけで文章の完成度は大きく違ってくる。
思い込みで書いてしまいがちな文脈
自分中心に書いてしまい、一方的と思われがちな例を6つ挙げる。
外国のこと
明治以降、日本にとっての外国はイコール欧米諸国と言っていいくらい影響を受けた。そのせいか、〈外国には漢字はない。〉と書いてしまう。当然、中国や台湾などでも漢字を使う。
年齢差
年齢を重ねるほど、「これまでそうだったのだから、これからもそうだ、そうあるべきだ」と妄信し、一方的になる。ちょっとだけでも、自分以外の世代はどうかと考えてみよう。
性差
『話を聞かない男、地図が読めない女』という本があったが、男と女(男性脳と女性脳)は違い、一方だけが正しいと思うと理解できない。自分とは正反対の考えがあることを意識しよう。
教科書
教科書を信じなければ授業は成り立たない。それゆえ、「教科書は絶対的に正しい」という思い込みは強い。もちろん、ある時点では正しいのだが、その後、訂正される〝常識〟も多い。
多数派
多数派は傲慢になりやすい。世間の大半の人が「イエス」なら「正しい」と思ってしまいがちだが、だからといって少数派が間違っているわけではない。少数意見にも耳を傾けよう。
地域差
世界が狭いと自分が住んでいる地域の常識が世間一般の常識と思えてしまう。〈梅が散り、桜が咲く季節となった。〉は地域を限定したほうがいい。東北や北海道では同時に咲く地域が多い。
客観的に見て、独りよがりを退治
独りよがりな箇所はないほうがいいが、とりわけ、書こうとしている文章の核となる部分については、否定されたら話にならない。
たとえば、〈田舎は娯楽が少ない。〉と書いて、この前提が崩れると話自体が成り立たなくなる。このような場合は対処が必要だ。
一例だが、〈「田舎は娯楽が少ない」と地元の知人は言った。〉と個別の見解にするとか、〈都会に比べると田舎は娯楽が少ない。〉のように条件付きにするとか。
書き替えるだけでは済まない場合は、書くこと自体を再考しよう。
反論・反感 事前対策シート
反論を防ぐ、または事前に予防線を張っておこう!
使い方
内容と素材を書き出すのは普通の作文と同じ。このあと、「いい」と思った人の感想と、反感を持った人の感想を予想してみる。前者には共感が得られるようにし、後者には配慮をするとともに反論への予防線を張っておく。
内容
才能ある作家志望者は、応募を始めて3年以内に受賞している。彼にはどう書けば受賞するかが見えている。そんな人が高齢で無冠であるはずがない。
材料
◉プロになる人は3年以内に結果を出す。
◉受賞しなくても、3年以内にいいところまで行く。
◉集中して書かないと実力が出にくい。
◉長く落ち続けていると、負け癖がつく。
◉大器晩成というのはない。
この作文を読んで、いいと思った人の感想
「作家は選ばれた人間だ。ぼくもそうだ」
「ぼくもリミットを決めて、集中して頑張ろう」
「3年以内に最終選考まで行きたいな」
「若い今のうちにやろう!」
反感を持った人の感想
「世の中、プロ志向の人ばかりではない」
「大器晩成の作家だっているじゃないか」
「苦節十年なんてよくあること」
「ぼくは凡人で若くもない」
知らないと書いてしまううそ
ひき始めには葛根湯が効く
市販薬はひき始めに効くと言うが、風邪に特効薬はない。“効く”とは症状を和らげることで、治すことはできない。
魚卵はプリン体が多い
プリン体は1日400mgが摂取の限度。イクラは100gに約4mgと少ない。意外と多いのがワカメで100gに約260mg。
年輪の白いところが広いほうが南
細胞を成長させる養分は幹をらせん状(または扇状)に流れ、南側だけがより早く成長するとは考えられない。
鎌倉幕府は1192年に成立した
1192年は源頼朝が征夷大将軍になった年。鎌倉幕府が成立したのは、守護・地頭が設置された1185年説が有力。
聖徳太子という10人の話を聞き分けた人がいた。
十七条の憲法など偉業を成し遂げたのは厩戸王。聖徳太子の名や逸話は神格化のためのウソだったという説も。

事実と感想
〈平成元年は一九八九年。〉
これは事実。
〈東京の人は冷たい。〉
これは個人的感想に近い。
〈日本は単一民族。〉
そう言って辞任した大臣がいたが、事実とするなら定義を明確にしないといけない。
〈コンビニは朝七時に開店し、夜十一時に閉店する。〉
一般論とするには無理がある。「近所のコンビニは」と個別の事例にするしかない。
文章を書くとき、事実か意見か、事実なら本当にそうか考える必要がある。また、事実に感想が紛れないように注意したい。
〈来夏、東京オリンピックが開催される。東京中が外国人で埋まり、風紀が乱れるのは由々しき事態だ。〉
前半は事実だが、後半は個人的な推測で、それが事実であるかのように書いている。誤解のある表現だ。
〈彼は無職のまま夢を追い、今春、残念にも就職した。〉
一文の中に事実と主観がある。〈彼は無職のまま夢を追い、今春、就職した。〉と事実を書き、自分にはそれが「残念に思えた」と分けて書いたほうがいい。
※本記事は2019年4月号に掲載した記事を再掲載したものです。