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【小説の書き方にマニュアルはある? セリフで始めていい?】創作の王道と邪道、二つの異なる視点からわかりやすく解説!

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小説・エッセイ相談室

創作の疑問に対する回答はコインのオモテとウラのように表裏一体。教科書的な王道の答えもあれば、それとは逆のレアケースもある。今回は読者の質問にオモテとウラから回答し、疑問の本質に迫る!

小説の文章・基本編

小説の文章について、ヒルモとヨルモがオモテとウラを解説!

【回答者】
ヒルモ/オモテ役
昼間にせっせと公募に励むヒルモ君。今回は清廉潔白、正統派のホワイト・ヒルモとして、皆さんの質問に回答!

ヨルモ/ウラ役
夜、ヒルモが寝た頃にひそかに頑張るヨルモ君。今回は人生の裏道を行くブラック・ヨルモとして回答!

小説の書き方のマニュアルはありますか。

ヒルモ:ギリシャ劇には作劇法があります。近代小説以前の物語(騎士道物語)にも定型があります。だからマニュアル化できます。でも、小説は批評も随筆も詩も物語もすべてのみ込んだアメーバみたいな存在で、定型を持たない。極論すれば、マニュアル化は無理です。

ヨルモ:書くことに自覚的な人ならマニュアル化は可能だよ。それを言語化できないときに「体で覚えろ」と言うんだよね。ただ、使えるかどうかは別の話。泳いだことがない人に水泳の教本を渡しても意味がない。でも、一定のレベルにある人にはヒントになるよね。

テーマはなければならないものですか。

ヒルモ:この場合のテーマは、「作者が本当に伝えたかったこと」という意味だよね。伝えたいことなしに、ものを書く意味ってあるかな? 伝えたい思いがなければ、落ちても落ちても書き続ける執念のようなものは体から出てこないような気がするよ。

ヨルモ:あるミステリー作家は「書きたいものはない」と言っていたよ。思いなんかなくても、注文があれば納品するのがプロだと。アマチュアの場合は書きたい思いは必要だけど、具体的なテーマは書きながら探せばいいと思うよ。きっとどこかにあるよ。

小説は描写で書くというのは本当ですか。

ヒルモ:小説は知識を使って書いた説明文と、五感を使って書いた描写文、セリフを書いた会話文でできているけど、説明文だけならあらすじ、会話文だけなら脚本になってしまう。小説に必要なのは出来事の再現性で、それを可能にするのは描写文じゃない?

ヨルモ:頭で説明するのではなく、出来事を紙の上に再現し、読者にも同じ体験、追体験をしてもらうことで心情なり感動なりを理解してもらうのが王道だけど、うまい人が書くと説明ですら面白いよね。描写で書かれていなくても効果があればなんでもOKだよ。

セリフは短く、説明ゼリフはやめたほうがいい?

ヒルモ:短くなくてもいいけど、1つのセリフの中に伝えたいことが3つも4つもあると、なんの話だったかわからなくなりそう。また、「ボクの初恋の人の絵美ちゃん」みたいな説明のためのセリフは、そんな言い方しないよなあと思って白けちゃいますね。

ヨルモ:湊かなえさんの「聖職者」(『告白』の第1章)は作品すべてがセリフでした(独り語り)。説明ゼリフにしても「ボクの初恋の人の絵美ちゃん」とおどけて言うようなキャラだったら問題ないし、要は不自然でなければ全然問題ないんだよね。

セリフ始まりの場面を書いてもいいですか。

ヒルモ:セリフから始まっていると、急に誰かから話しかけられた感じで、引き込まれます。セリフの文章は話し言葉だから理解しやすく、効果的だと思います。いきなり「おい、どうした?」みたいなセリフで始まると、何が起きたんだと思わせられます。

ヨルモ:古い小説指南書に、「セリフで始めないこと」とあったよ。その心は、「状況説明なしにセリフを書いたら読者が戸惑う」。逆に言うと、セリフで始めたなら、それがどんな状況で発せられたセリフかをすぐに説明しろってことだね。これ、忘れる人多いよ。

実話のほうがリアリティーがありますよね?

ヒルモ:「最強のふたり」という頸椎を損傷した富豪と黒人介護人を描いた映画は実話ベースですが、こんな話が本当にあったのかと驚きます。実話は設定や話の骨格ができあがっているからストーリーにしやすく、作り物ではないすごみがありますよね。

ヨルモ:実話は難しいよ。だって事実を曲げて恩人を悪人にできるかい? 抵抗あるよ。それに実話だからリアリティーがあると思わないほうがいい。私小説だってかなりウソを盛り込んでるし、意図的に物語を切り取っている。作意がないとだめだよ。

プロのまねをするのが一番ですよね?

ヒルモ:俗に「まねぶ」と言いますよね。プロのいいところはどんどんまねて、どんどん盗んでいく。文豪たちだって師匠のまねをしたり影響を受けたりして自分を作ってきたわけです。まねしようと思えば、いろんな技巧が見えてくるという効用もあります。

ヨルモ:まねをするのは芸事の基本だけど、どこをまねるかが問題だよね。比喩がうまいとか、ふりがなを多用するとか、表現の本質でない上うわ辺べ だけまねしても意味がないよね。それと影響を受けた先輩が1人しかいないと似すぎます。数人以上、欲しいよね。

小説なんでもQ&A

Q.一人称と三人称、どちらにしたらいいですか。

A.一人称は書きやすそうですが、視点について知らないと視点がブレたり。また、大きな物語も書きにくい。一人称でも三人称でも一視点で書き始め、作品によって変えていけばいいでしょう。

Q.視点の取り方について教えてください。

A.場面を写しているカメラの役目をする視点人物(主に主人公)を決め、この人物が見たもの、聞いたもの、思ったことを書きます。視点人物が一人なのを一視点、複数いるのを多視点と言います。

Q.主人公は必要ですか。1人のほうがいいですか。

A.ある事件があったとして、そこには無数の真実があります。それをたった1つの真実しかないように見せるのが主人公の役割です。基本は1人ですが、準主人公がいる場合もあります。

Q.取材(下調べ)は、今は書籍よりネットですか。

A.確認するときはネットのほうが便利です。ただ、権威あるサイトが載せたウソが参照され蔓延していることもあるので、重要なことは書籍を含め複数の情報源をもとにしたほうがいいです。

Q.説明文を書いて、それでも面白く読ませるには?

A.あったこと、思ったことを、客観的な説明文だけで書いて面白くするには、まず話自体が興味深いこと、わかりやすい文章であること、文章に心地よいリズムがあること。これは必須です。

Q.語り(ナレーション)がどういうものかわかりません。

A.落語家が語ったことを誰かが筆記したものが小説だとすると、この誰かが作家、落語家が語り手です。ただ、小説では「語り手によって語られたもの」という前提が隠され、主人公自身が語り手を兼ねたり、または語り手が主人公に同化して語ったりします。

※本記事は2020年3月号に掲載した記事を再掲載したものです。