【文才よりも継続力】1万枚書けばデビューできる? 鈴木輝一郎先生が語る“文学賞で受賞できる人”の条件


プロを輩出する小説講座の講師が快刀乱麻を断つ
プロ作家を輩出している小説講座の講師、鈴木輝一郎先生に、小説に関する疑問やお悩みにメールで回答してもらった!
書く準備編
小説を設計、設定する段階で、どうすればいいかと考えてしまうことがある。そうした書く前段階の疑問をぶつけた。
Q.プロットとは何? どれくらいの量を書く?
オモテ:プロットとは「自分に向けての企画書」。主に書かなければならない項目は6つです。
❶いつの時代か
❷どこの話か
❸どんな登場人物が出るのか
❹何が起こるのか
❺なぜ起こるのか
❻どうやって物語は展開するのか
2000文字ぐらいにしましょう。
ウラ:プロットとは、『こうやって示すと書きやすいですよ』と解説すると、解説された側が安心するツール。現実にやってみると「プロットだけで面白い作品」を書くのは至難のワザです。それだったらプロットを読んだほうがいいもの。12万字(300枚)ぐらいの作品の場合、四の五の言うよりも、さっさと本文を書きあげて慣れたほうが早いっす。
Q.キャラクター設定はどこまでしますか。
オモテ:年齢、性別、職業、といったところで大丈夫です。ほかにも、好きな食べ物とか、ヒットポイントとか、いろんな項目があります。「キャラクター 設定表」で画像検索をかけると、いい例がたくさん出てきます。
ウラ:「徹底的に具体的に」だわさ。キャラクターをがっつり組むことで、足らない取材やら、ストーリーの行き詰まりだとかが洗えるんで。「職業」なら「転々と」ではなく具体的な職業履歴を書きます。学歴や職歴も手を抜かない。
Q.登場人物の適正人数は?( 長編と短編の場合)
オモテ:おおむね5人。長編の場合だと、下記のそれぞれのポジションに複数人を配置するといいでしょう。❶主人公 ❷敵役 ❸自分の味方 ❹敵の味方 ❺話の進行役
ウラ:「適正人数」なんてものはありません。それは著者の個性に属すること。むしろ登場人物を描きわけられるかどうかのほうが重要。描きわけられないのに、登場人物の掘り下げが不足してるからと人数を増やして枚数を埋めないこと。
Q.史実と違うことを書く場合、名前を変えれば大丈夫?
オモテ:面白ければ大丈夫です。大切なことは、そのキャラクターが作品の中で「どう生きているか」ということです。史実はあくまでも材料です。あなたの作品の主役は、あなた自身であることを忘れずに。
ウラ:歴史小説では史実は変えられない。ダメに決まっている。それを言い出したら歴史小説は成り立たない。「実在のモデルがいる」のなら、「そのモデルがその史実にぶち当たったとき、何を考えたか」がストーリーのキモになります。
ストーリー編
いったんは書き上がった。自分でもいい出来ではないと思うが、原因がわからない。そんな疑問に答えてもらった。
Q.ストーリーが平板と言われます。どうすればいい?
オモテ:❶作品の「起承転結」を書き出してみましょう。❷そのうちの「起」と「承」の部分をカットしてみましょう。ほとんどの場合、ストーリーが平板になってしまう原因は、導入部分や設定の説明にあります。この部分をカットするだけで解決します。
ウラ:オモテの話はあくまでも「その場しのぎの対症療法」です。ストーリーが平板になってしまう原因は、読書量が圧倒的に不足しているからです。「起伏のある物語」の蓄積がないから、「起伏あるストーリー」のイメージがない。結果と原因は別にあります。
Q.先が読めると言われます。予想を裏切るには?
オモテ:❶だいたいのストーリーの流れをあらすじで作ってみます。 ❷そこから「そのストーリーの流れとは違うものは何か」をリストアップします。❸上記❷の中から、最初に思いついたものを選びます。
ウラ:小説の面白さはストーリーだけでは決まりません。そう言われたのなら、問題はストーリーではありません。キャラ設定の甘さを疑うこと。「読者にとって意外」ではなく「登場人物にとって意外」にすれば、「意外な展開」になります。
Q.展開が早いと言われます。1場面の適正枚数は?
オモテ:おおむね1シーンあたり400字詰め換算10枚、4000文字を目安にするといいでしょう。その10枚の中で、それぞれ、前提・展開・収束を意識して書いていくと、安定した作りになります。
ウラ:その感想の真意は「つまりどんなシーンなのか、よくわからないうちに次のシーンになってしまう」ということです。シーンごとの5W1Hを作者が把握していないと、読者にシーンは伝わりません。
Q.話の矛盾点の洗い出しをするには?
オモテ:エクセルで作品時間内の時刻表を作ってみましょう。エクセルの縦軸に時間を、横軸にイベント(事件・事柄)を書き込みます。物語の時間軸に合わないところがわかってきます。
ウラ:そう言われたのなら、その感想の真意は、「作品が面白くないから、辻褄が合わないところが目につく」です。矛盾したところをなくしていっても、面白くなるわけではありません。欠点を洗い出すことより、面白さを探すことが先です。
鈴木輝一郎流文学賞を獲るための3ヵ条
その1 条件 執筆を続ける4つの条件
受賞するには書き続ける必要があり、書き続けるには以下の条件が必要です。
執筆を続けるための固定収入があること。作品が受賞して活字になるまで1円も入ってきません。
執筆の場所を確保すること。同居の家族がいる場合には、家族から見えないところで執筆することが重要です。
執筆に専念できる家庭環境(介護や育児がある場合は他人に任せられる環境)であること。
健康であること。小説の執筆はうつ病を誘発することがあるので、メンタル面のケアは重要です。
その2 資質 1万枚書けるかどうか
資質と言っても文才ではありません。「文才は不要。中学校卒業程度の日本語でやりとりできればOK」というのが実感です。
それよりも「継続」が重要です。「誰にも読まれるあてのない数百枚の原稿を、デビューするまで書き続けられるかどうか」ということです。
400字詰め原稿用紙換算でおおむね1万枚(200枚の作品なら50編)書けば、誰でもデビューできます。
今のところ1万枚に達する前にデビューするか挫折するかのどちらかで、例外はありません。
その3 努力 小説をたくさん読むこと
もっとも重要なことは、小説を読むことです。
小説を読んで感動した経験がなければ、小説で読者を感動させられません。
私も小説の書き方のハウツー本を書いていますが、それよりも小説を読んでください。レジュメだけ読んでもおいしい料理は作れません。
「たくさん読んで、たくさん書いて、たくさん落選する」
これが一番手っ取り早く受賞する方法です。手を抜いていいところと、抜いちゃだめなところを間違えないようにしてください。
※本記事は2020年3月号に掲載した記事を再掲載したものです。