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W選考委員版「小説でもどうぞ」第4回募集

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作文・エッセイ
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小説でもどうぞ
写真提供 文藝春秋
W選考委員版 第3回「小説でもどうぞ」の結果発表と選考会の裏側は、季刊公募ガイド2023冬号(1/7発売)またはこちらをご覧ください。
第4回W選考委員版「小説でもどうぞ」の募集がスタート!
ゲスト選考委員は、直木賞作家の井上荒野先生です。
今回も奮ってご応募ください!

また、季刊公募ガイド冬号(1/7発売)では井上荒野先生のインタビューを掲載しますが、ここではこのインタビューの別バージョンをお送りします。応募前にぜひとも熟読ください。作家志望者必読の内容になっています。

レギュラー選考委員
高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。 小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

<第4回>
井上荒野さん

1961年東京都生まれ。成蹊大学卒。1989年、「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞受賞。2008年、『切羽へ』で直木賞受賞。ほか、『潤一』『そこへ行くな』『赤へ』『あちらにいる鬼』など著書多数。

第4回ゲスト選考委員は、直木賞作家の井上荒野さん。
近刊の『小説家の一日』をもとに、
小説を書くコツについて伺った。

頭の中のもやもやで、

いずれは書ける

―― 井上先生は短編の名手と言われていますが、短編を書く勘所はどのようにしてつかまれたのでしょうか。
 カーラジオの中から聞こえてきた誰かの話とか、ちょっと気になる言い回しとか、喫茶店の後ろの席に座っている人がなんか面白いことを言っているなとか、耳に残った言葉を全部メモしているんです。
 そのときは、それをどういう話にしようとは決めていませんが、短編を書かなければというときにメモを見返して、なぜこの言葉が気になったんだろうということを考えていくんです。そうすると、そこからお話ができていきます。
―― ストーリーのタネのようなものですね。
 この言葉を発した人はどういう人なんだろう、なんでこんなこと言ったんだろう、あの人の家族はどんな人なんだろう、どういう状況で言ったのだろうと、そうやって考えていくことで短編を作っていきますね。
―― 見知らぬ他人を見て、その人の背景を考えてみる?
 想像してみるということです。想像には二通りがあります。この言葉を言った人はどんな人なんだろうと想像するのは、外に向かって想像すること。私はなんでこの言葉が気になるのかなと考えるのは、自分の中に降りていって想像すること。この二つが必要だと思うんですよ。
―― 自分とかかわらない話だと興味が持てませんよね。
 実体験と結びついていなくてもいいですが、なんでだろう、なんでだろうと考えていくと、だからこの言葉が気になるのかとわかり、そこからお話ができていきます。
―― ストーリーを考えるとき、場面が先にあるのですか。それとも最初に全体像があって、あとで場面が出てくるのですか。
 全体のもやもやしたものが先にある感じがします。そこからだんだん場面がくっきりしていく。
―― 表題作「小説家の一日」の中に、〈この頭の中のもやもやでいずれは書ける〉という一文があります。
 もやもやしたものがだんだん明瞭になっていく。自分の中の気になる言葉や、それと結びつく自分の記憶とかがもやもやしている。それをどんどんどんどん考えて物語にしていきます。
―― そのもやもやを感じるには感受性が強くないといけませんね。
 感受性というより想像力ですね。通りすがりの人について、あの人、どんな人だろうと考える想像力。あるいは、インターネットやツイッターなんかで、ちょっといい話などが流れてくるじゃないですか。そういうときに、「本当かな」と疑うことが大事なんですよね。本当にいい話なのかな、一見、いい話だけど、本当は……と裏を考える。その場にいる別の人の視点で見てみるとか、ツイッターに投稿するときにどういう心理が働いたんだろうとか、そういうことを想像する癖が私にはあって、小説を書くときに役立っています。
―― 光の当て方を変える?
 みんながいいと言っていることを疑う。みんなが悪いと言っていることを疑う。疑うことで、別の物語を考えてみる。見聞きした物語の別の面の物語を考えてみるということです。いい話を「いい話だなあ」と漫然と受け取っていると、それ以上のものは書けないですよね。よく聞く「一杯のかけそば」のような話しか書けなくなっちゃうじゃないですか。
―― いい話もいいですが、気づきにくいようなところに目がいっていると、すごいなあと思ったりしますね。



ちょっとした心の揺れを書くだけで

十分、小説になる

―― 面白い小説は、そんな見方があるんだと思わせてくれます。
 これも小説観の問題で、いろいろな考え方がありますが、小説ってあまり共感されなくてもいいと思うんですよね。「すごく共感しました」と言っている人や、「全然共感できませんでした」と怒っている人がいたりしますが、私は「共感した」と言われるのは嫌なんです。みんなが知っていることを書いちゃったんだなと思うから。読んでいて落ち着かなくなりましたとか、嫌な気持ちになりましたとか、そういうふうに言われたほうがうれしいし、そういう小説を読みたいんです。
―― 読んで発見があるほうがいいですよね。
 心が揺れたいんです。今まで行ったことのない場所に行きたい。
―― 『小説家の一日』に収録された「何一つ間違っていない」でも、登場人物の小説家は作品が出版されず、心が揺れます。
 小説というのは何か動いていかないと面白くないから、何も悩んでいない人とか、幸せなだけの人とか、あるいは不幸せなだけの人を書いたって、それでは小説にはならないですよね。すごく不幸せな人にちょっと幸せなことが起きるとか、すごく幸せな人なのに、心の奥底に不幸な部分があるとか、それが小説というものじゃないですかね。
―― 井上先生の作品は、ちょっとした人の感情をすくいとるところが絶妙です。
 ちょっとした心の揺れを書くだけで、十分、小説になると思います。大不幸とか、大どんでん返しとか、すごくドラマチックなことが起きなくたって、日常の中にあるちょっとした段差みたいなものをどう見せるか、その段差だけで小説になります。それをどれだけ丁寧に書くかです。
―― それは小説の仕掛けにもつながっていきますか。
 私は小説には仕掛けは不要だと思っています。叙述トリックなどで、人間がしゃべっていると思ったら犬だったとか、女の人がしゃべっていると思ったら男だったとか、やって悪くはないんだけど、手品ではないので、そこだけが主眼になっている作品は、私は全然認められないですね。
―― 仕掛けは小説を面白くする一つの要素ではありますが、本質ではないということですよね。
 仕掛け以外に表現しているものがあれば、「わあ、びっくり」という仕掛けもいいですが、仕掛けがなくても成立するようになっていてほしいです。仕掛けありきの小説ではだめです。
―― 仕掛けありきだと、ネタ割れしたら終わりですよね。二度読もうとは思いません。
 何度も読んで、読むたびに受け取るものが違う。そういうのがいい小説ですね。二十歳のときに読んで、三十歳のときに読んで、四十歳のときに読んでと、年齢が上がっていくごとに受け取るものが違うという小説もあります。自分が重ねた経験によって景色が違って見えてくるんです。
―― アマチュアにはなかなか難しくはありますが……。
 これから小説を書く人は、自分の中を覗いてほしいですね。それは実体験を書けということではありません。書こうとしていることと書く人の間に通路が欲しいんです。書くものと作者の間に、その人にしか通れない通路のようなものを感じるときが、小説を面白いなと思うときです。
―― なるほど、その人にしか通れない通路ですか。
 全部外側から持ってきて、きれいにまとめて、ちょっと悲しい場面を持ってきたり、オチをつけたりして、それはすらすらとは読めるけど、全く何も残らないんですよね。書いているうちに、自分の黒い部分に行き当たっちゃったなとか、そういうことがあるのが、その作者にとって書く意味がある小説ということだと思います。



知らないところに行ったような

気にさせられるものが読みたい

―― 書きたいけど、何を書けばいいかわからないという人は?
 書けないのは、書くことを外からとってこようとするからだと思うんです。そういう人は、自分が一番書きたくないことを考えてみればいいと思います。私小説を書けということではなく、年齢もプロフィールも状況もちょっと違う人の話として考えてみる。
 あるいは、自分にとってすごく素敵な思い出みたいな話を思いついたら、それとは全く真裏の話を考えてみる。とっかかりとして、そんなふうに考えたらどうだろうと思います。
―― 上達の近道は、やはり書くことでしょうか。
 書かないとうまくならないですね。それはプロでも同じです。
 それと読むこと。世の中には面白い小説がたくさんありますから、サクサク読める小説ばかりでなく、ちょっとハードルを上げて、アリス・マンローや大江健三郎など有名どころを読んでみる。一作、読みきってみる。そうすると、パッと広いところに出るみたいな、物語が入ってくる瞬間って絶対あるんですよね。それを経験してほしいですね。
―― 難しい問いですね。小説とはなんでしょうか。
 言葉によって自分と世界との関係を認識する作業だと思うんです。世界ってどういう場所なのかというのを言葉で確認していく、あるいは知っていく。世界に興味がないから、何を書いていいかわからないということになるんだと思います。
 社会的な意識を持てと言っているわけではなくて、この世界は、この世はと言ってもいいですが、自分にとってどういう場所なんだろうと考える。それこそ一言では言えないから、書くことで知ろうとする。それが小説を書くということなんじゃないですかね。
―― ジャンル的には幅広く読んだほうがいいですか。
 好きな作家の小説を全部読むということもやるといいですが、いつも直木賞系のものを読んでいるのなら、たまには純文系の小説を読むとか、その逆とか、日本の小説しか読んだことがないのなら翻訳を読んでみるとか。うまくなりたいなら、とにかくいろいろな小説を読むことです。
―― 今回、選考する作品には何を期待されますか。
 いい話でも笑い話でも、やはり1ミリでもいいので、今まで知らなかったところに行ったような気にさせられるものが読みたいですね。知らないことを教えてほしい。宇宙のこととか、魔女のこととか、そういうことじゃなくて、日常を書いても、人はこんなこと考えたりするんだとか、ちょっとハッとさせてほしいですね。
―― そうした題材を見つけるには?
 やはり想像力だと思います。自分以外の人のことについて、世界について想像する。自分に見えている世界なんて、指の先1ミリぐらいでしかありません。想像すれば、もっと奥行きがある世界を認識できます。
―― 応募される方にメッセージをお願いします。
 うまい小説ではなく、面白い小説を書いてください。オチがあることが悪いとは思いませんが、それが面白さだとは私は思いません。小説にオチは必要ないし、叙述トリックも必要ない。では、どういうものが面白い小説なのか。それを考えて書いてほしいですね。
井上荒野先生 近刊
『小説家の一日』
(文藝春秋・1980円)

SNS、メモ、日記、小説など、短編の名手が「書くこと」をテーマに描いた珠玉の10編を収録した短編集。

応募要項
課 題

■第4回 [ 老い ]

ぼくは今年で72歳。気がつくと、無意識に「老い」について書くことが多くなりました。みなさんにとって「老い」は遠い未来のお話でしょうか。いやいや、人は誰でも「老い」てゆきます。人類永遠のテーマなんですよ。(高橋源一郎)

締 切

■第4回 [ 老い ] 
2/9(必着)

規定枚数

A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。

応募方法

郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。

※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

発 表

第4回・2023/4/9、季刊公募ガイド春号誌上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載

応募先

● WEB応募
応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第4回W選考委員版」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

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