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あなたとよむ短歌 vol.30 テーマ詠「食べ物」結果発表

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
結果発表

入選を逃した短歌や投稿できなかった短歌などを募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。今回からテーマ詠で作品を募集します!

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.30
あなたとよむ短歌コンテスト・テーマ詠「食べ物」結果発表

連載「あたなとよむ短歌」も30回を迎えました。
大切な作品をご投稿くださった皆さん、連載を読んでくださった皆さんのおかげです。
今回は30回を記念して、WEB上の短歌コンテストを開催。テーマ詠「食べ物」の短歌を募集し、なんと500首以上の作品をお寄せいただきました。

優秀作品として3首ご紹介します。それでは、一緒に読んでいきましょう!


いつだってパピコのようにくっついた弟が今日家を出ていく
(海瀬安紀子さん)

プラスチックのやわらかな容器が、2つ繋がった形状で売られているパピコ。昔からある、定番のアイスです。
その容器は滑らかな曲線でできています。しっかり繋がってこの世に生まれてきたのに、いつか離れる。しかも意外と簡単に、きれいに離れる……そんなパピコと、弟の独立をなぞらえた一首の説得力に唸りました。


チーズinハンバーグin人間in一緒の布団inあたしんち
(短歌練習さん)

テーマ詠「食べ物」なので、てっきり「チーズinハンバーグ」を詠んだものかと思いきや、この入子構造。あえて翻訳すると「チーズが入ったハンバーグが入った人間がふたり入った布団があたしんちにある」という意味ですね。途中で人間が2人いることが判明するのも驚きです。
名詞を「in」で繋げているだけなのに、物語が立ち上がってきます。同じハンバーグをお腹におさめて、一緒の布団で眠るふたりは恋人同士でしょうか。とても窮屈で、幸せそうです。
名歌として知られる「ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲(佐佐木信綱)」を思わせ、かつ現代的で衝撃的な一首です。


光源を集めたようにとうもろこし置
いてあり「一人一個」の付箋
(桜望子さん)

「光源を集めたように」という比喩から、黄色く、つやつやと盛られたトウモロコシが想像できます。親が外出する前に、子供たちのために茹でておいてくれたのでしょうか。それとも、地域のお祭りか何かでしょうか。
誰かが誰かのために茹でてくれたトウモロコシが、野菜の美しさや夏の空気とあいまって、一首のなかで特別な存在感を放っています。
一首めの海瀬さんの作品も、この桜さんの作品も「ように」という直喩を生かした作品です。比喩は、伝わらなければ意味をなしませんが、月並みすぎても面白くありません。限られた文字数で、自分らしく情景にぴったりな比喩を探す楽しさも、短歌の楽しさです。



500首以上の作品をお寄せいただき、優秀作品の3首以外にもすてきな短歌がたくさんありました。スペースをいただき、いくつかご紹介致します。


チラシみて安くて良い品さがしたらこんなにおいしい料理ができた
(鵜飼剛史さん)

毎日毎日繰り返しつづく料理。そのなかの素直なよろこびがシンプルに表現された一首です。


さくらんぼここが思案の分かれ道進路に迷う孫の横顔
(夢追い人さん)

こちらの作品は「さくらんぼ」が「隠喩」になっているとも、枕詞のような役割を果たしているとも言えそうです。孫、ファイト!


ちまちまと葡萄を食べて笑われる 井上さんはケバブが似合う
(小亀令子さん)

「ケバブが似合う」人ってなんだか魅力的ですね。井上さんに興味が湧くのは、この一首に魅力があるからです。


子の作るトルティージャなど食べるとき我のじゃがいも世界へはばたく
(やじまみほさん)

「我のじゃがいも世界へはばたく」がなんとも爽快! じゃかいもに対する概念がパーンっと開けた瞬間です。


ぶたさんを食べたくないと泣く子いて不安に駆られ見回している
(レモン丸さん)

なぜ「見回している」のか、絶妙にわかるようなわからないような……と不穏さを感じる一首。


朝起きてみると小さな妖精がダブルソフトの上で寝ていた
(あみさん)

ダブルソフトはいい香りでふわふわで、寝心地が良さそうです。しばらく寝かせてあげたくなります。


道のべのミネラル水を蕗の葉に掬うひとくち奥多摩に来たぁ
(遠藤愛子さん)

結句の「奥多摩に来たぁ」の勢いが最高です。自然に触れて、元気を出して、今年の後半も頑張りたいですね!




今回、公募ガイド編集部の方からコンテスト開催のご相談をいただいた際、テーマ詠「食べ物」はどうかとご提案しました。
私自身、食べ物はよく短歌に詠みます。食べないで生きてきた日はありません。食べることは日々の選択でもあり、楽しみでもあり、一方でどうしても暴力性を孕んでいます。これからも詠んでいきたいテーマのひとつです。

今回は、すばらしい作品の数々をお寄せいただきありがとうございました!
今月からは、テーマを設けて短歌を募集します。著作権がご自身にある作品でしたら、新作でも既発表でもOKです。これからも、一緒に短歌を詠んで・読んでいきましょう!

 
応募要項
今回から募集内容が変わります。
ご注意ください。
応募規定 短歌(57577)を募集します。
テーマは「かわいい」。
応募点数制限なし。
応募方法 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌かわいい」をつけてツイートしてください。
※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分
優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分
佳作数点=ウェブ掲載

※該当作品なしの場合があります。
※作品を記事内で推敲する場合があります。
締切 2022年9月30日
発表 2022年11月1日