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あなたとよむ短歌 vol.29 読みやすさも大切に

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
結果発表

入選を逃した短歌や投稿できなかった短歌などを募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。作品は常時募集中です!

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.29
読みやすさも大切に

梅雨のような天気が戻ってきたり、熱中症が心配になるようなかんかん照りだったり。同じ「夏」でも、数十年前と今とではずいぶんと気候が違う気がします。

貴族たちが和歌をたしなんでいた時代は、さらに気候も違ったんでしょうね。古い文学は当時の風土を伝えてくれます。この夏に生まれる短歌も、未来の人から見ると別の意味で興味深いものになっているかもしれません。なんだかロマンがありますね!

それでは今月も、みなさんの一首を読んで・詠んでいきましょう。

ついでだと寺へ案内してくれる生き仏のような老いたる夫婦
(ゴルゴキャットさん/方代の里なかみち短歌大会応募作品)


「方代の里なかみち短歌大会」は、山梨県甲府市出身の歌人・山崎方代(ほうだい)の名を冠した短歌大会です。甲府市教育委員会が主催ですが、全国から応募可能だそうです。

大正時代に生まれた方代は、太平洋戦争で視力をほぼ失い、各地を転々としながら生きていました。放浪の歌人、漂白の歌人と言われています。方代の平易で素直な口語体の短歌は、現代に生きる私たちの心にもまっすぐに届きます。

柚子の実がさんらんと地を打って落つただそれだけのことなのよ
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
(山崎方代)


さて、ゴルゴキャットさんの応募作を読んでいきます。
旅先でしょうか? 老夫婦は「(何かの)ついでだ」と、お寺まで案内してくれます。作中の主体は、そんな夫婦を「生き仏のような」と表しています。おそらく、老夫婦は「ついで」というほどお寺の方に用があったわけではないと、作中主体も気づいているのでしょう。老夫婦の親切と気遣いに感謝しながら、お寺まで案内してもらう、そんな優しい時間が感じられる一首です。

少し気になるのが、一句目「ついでだと」です。ひらがな5文字で表記しているため、一読した際に「ついで」という単語が浮かび上がらず、意味が読み取りづらくなっています。

短歌は「歌」なので、ぜひ声に出して読みたいものですが、一方で「文字」の文学でもあります。やはり、目で読んだときの伝わりやすさも考慮したいもの。

①「ついで」だと
②「ついでだ」と

いずれかのように、かぎ括弧でくくってみてはいかがでしょうか? 短歌にかぎ括弧を使ってはいけない、というようなルールはありません。音数にもカウントしません。

私としては②のほうが、実際に老夫婦が声にしたセリフのようになり、臨場感が増すような気がします。ついでに、結句も「老たる夫婦」と体言止めにするのを避けてみましょう。

「ついでだ」と寺へ案内してくれる老いたる夫婦は生き仏かな

体言止めはビシッと決まる感覚がありますが、余韻が消えて固い印象を与えがちです。この短歌については、人の優しさや素朴さ、柔らかさが出た方がいいと思うので、語順を入れ替えてみました。どうでしょうか。読みやすさも向上した気がします。

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています。
来月は連載30回を記念した、短歌コンテストの発表回です。お楽しみに!

 
応募要項
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