せきしろの自由律俳句 第95回「山」結果発表 (2/3)
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第 95回 課題: 山
佳作
秋を踏み締めると山
(栃木県 夜来風雨 17歳)
今日は富士が見えたと話している
(千葉県 ような恵 27歳)
富士の姿を確かめてから布団を干す
(神奈川県 廣瀬順子 80歳)
校歌の山だけが変わらない
(神奈川県 老人生(ろうにんせい) 67歳)
かまくらを諦めた小さな雪の山
(秋田県 紗江 37歳)
挨拶なんかして健康な俺だ
(大阪府 石川聡 43歳)
町より先に夜になる
(鹿児島県 佐藤橙 27歳)
山頂に忘れた帽子を諦める
(埼玉県 空手チョップ陽子 41歳)
山彦を試す度胸もない
(埼玉県 こせきり 19歳)
山笑う新芽出てくすぐったくて
(岡山県 フラワー 12歳)
砂場に小さな山ひとつ
(東京都 めめめい 17歳)
体育座りで山を抱えている
(愛知県 野村齋藤 22歳)
遠くの山が冷たい
(神奈川県 ななみん 24歳)
黄色い山を崩す掬う食う
(東京都 くろまきー 31歳)
山頂が狭い
(鳥取県 きゅうりのたこよ 34歳)
親が登山から帰宅した音
(神奈川県 へやぼし 35歳)
砂山からウルトラマンの片腕
(北海道 エリンギ 37歳)
緑黄色に走り出す山
(岡山県 たけし 38歳)
お邪魔しますどうか殺さないでください
(京都府 きよむ 44歳)
陽燃え落ちてただの黒に
(宮城県 カズタカ 47歳)
夏の山を雲の影が駆け上がっていった
(千葉県 xissa 59歳)
帰れないふるさとの山が笑ってる
(福島県 やんちゃん 63歳)
山に近づくと山が消える
(大阪府 和悟 70歳)
山火事消えて黒い亡霊たちが行進
(栃木県 チョウピン 75歳)
山の悲鳴呼ぶ咲き過ぎた藤の花
(千葉県 牛美 87歳)
『秋を踏み締めると山』
落ち葉や枯れ枝を踏みながら歩いていく。それくらいではびくともしない山である。
『今日は富士が見えたと話している』
とにかく天気の話をする。歳をとるとそれは顕著になる。地域によってはそこに富士山が加わることもある。
『富士の姿を確かめてから布団を干す』
こちらも日常に富士山がある。羨ましくもある。
『校歌の山だけが変わらない』
私の通っていた学校の校歌を思い出してみたが、山は健在だ。
『かまくらを諦めた小さな雪の山』
こういったちょっとした風景や気づきに詩情が加わることで自由律俳句になる。
『挨拶なんかして健康な俺だ』
自嘲気味なのが良い。
『町より先に夜になる』
そして朝にもなる。冬にもなる。
『山頂に忘れた帽子を諦める』
これは仕方ない。
『山彦を試す度胸もない』
度胸があれば私も今頃違う仕事をしていただろう。