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絵本を作ろう!②ラフを描いて構成を決める

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絵本制作でもっとも重要な作業ともいえるのが「ラフ」だ。どんな絵にどんな文章を書くのか、実際に描きながら決めていく。人によっては本画よりずっと時間を使う作業になるはず。

キャラを作ろう

キャラクターの掘り下げが大切

愛されている絵本はキャラクターたちも魅力的。ただかわいいだけでなく、勇気や優しさを示してくれる。そんなキャラを作るためには「掘り下げ」が必要だと筒井さんは言う。

「どんなところに住み、何が好きで、友達はいるのかなど、キャラを構成するものを掘り下げると、性格や行動原理が割り出されます。すべてを絵本に反映する必要はなく、作者が『この人はこういう人』とわかっていることが重要」

キャラ設定のポイント

キャラの年齢

厳密に〇歳と決める必要はないが、読者が入り込みやすいよう絵本の対象年齢に近い子どものキャラを主人公にするのが一般的。キャラが動物であっても、読者が自分に近いと感じるように描こう。

自然に動かす

頭の中でキャラが生き生きと自分で動くようになるとよい。キャラを作者の都合だけで便利に動かすのはNG。その場面でそのキャラなら何を言い、どのように行動するのが自然か考えよう。

大ラフを描こう

原寸ラフの前に設計図を作ろう

最終的なラフは原寸で制作するが、最初から原寸で描くと修正が大変。原寸ラフに入る前に、小さな枠で「大ラフ」を作るのがおすすめ。大ラフは、ストーリー全体のバランスや構成を見る設計図の役目を果たす。作り方としては、文章で全体のストーリーを書いたあとに場面分けして絵を描く方法や、先に場面を絵で描いてから文章をつける方法などがある。ここで重要なのは、自然な場面展開のストーリーになっていることだ。

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知っておこう 絵本の構造

絵本の構造にはいくつかの決まりがある。それらを知ることで、制作がしやすくなるだけでなく、絵本を読むときにも新たな発見をもたらしてくれるはず。

1P+15見開き(30P)+1P

絵本は基本的に32ページ。赤ちゃん絵本だともっと短くて24ページのものなどもあるが、今回は32ページで考えていく。とはいえ32枚の絵の連続ではなく、スタートの1枚、見開きで15枚、終わりの1枚というふうに、17の場面の絵を描くつもりでいよう。

めくったときの反応を考える

絵本というのは「めくる」ことによって話が展開していく。読者がリズムよくめくりながら、「次のページは何
かな」と期待をふくらませる構成になっているのがよい絵本だ。

縦書き = 右に開く

文字が縦書きの場合は右に開いていき、登場人物は左向きに進んでいくということになる。縦書きの絵本は少なめ。

横書き = 左に開く

文字が横書きの場合は左に開いていき、登場人物は右向きに進んでいくということになる。主流は横書きの絵本。

読みやすさを第一に

文字はどこに置いてもいいというわけではなく、まず第一に読みやすさが大切。さらに、ページをめくることも自然に促したい。よって中央寄りに置かれることはあまりない。図のように両端か下端付近が多い。文字量が多い場合は、ラフの段階から場所を空ける必要がある。

描いてみよう!

どんな17場面の連続にするか、描きながら考えよう。話が飛びすぎたり、逆に細かく分けすぎたりしていないかを確認しながら描こう。

どんな場面で、どのあたりにキャラを置いて、背景はどうするかなど、ざっくりと書き込んでいきましょう。文もメモ程度でも書いておくと○。

ラフで重要なのはストーリーの流れ

きくちちきさんに、ラフを描くときに考えていることは?と聞くと、「ラフは物語を探る役割が大きいです。構図をどうするかということよりも、どんな物語、話の流れにしようかなということを考えながら描いています。構図は、物語が決まればおのずと決まってきます」とのこと。筒井さんからも「ラフではどんなストーリーにして、どんな場面を描くかを決められたらOK。構図や文章の細かい部分はそのあとですね」とアドバイスをいただいた。

原寸ラフを描こう

めくれる形で作るのがベスト

大ラフが完成したら、次は原寸のラフを作る。大ラフの場合は人物の位置や文章はおおよそでOKだったが、原寸ラフでは構図や文章の量・内容なども細かく確認していく。原寸ラフはめくれる形で作るのが望ましい。A3やB4サイズの紙に絵を描き、糊で貼って本の形にする方法や、紙の真ん中を輪ゴムなどでとめる方法などがある。絵本の最大の特徴である「めくる」が生かされているか、ストーリーに不自然さはないかなどをめくりつつ確認しよう。

原寸ラフでは構図も決定させる。めくってもめくっても同じような構図だと飽きてしまう。たとえば「歩いている女の子」を描くにしても、真横から、正面でドアップ、空の上から俯瞰して、などさまざまな構図が考えられる。

原寸ラフのチェックポイント

構図は「この場面でどんな印象を読者に与えたいか」という「演出」の観点がとても大切! 安心させたいのか、不安にさせたいのか、開放感を感じてほしいのか、などで同じ状況でも構図は変わるはず。

構図が単調すぎる

何を見せたいページなのか、「演出」を考える必要がある。

目が中央にかかっている

中央は見づらくなるため、キャラクターの目や話のキーワードとなる絵など、重要な部分は置かないほうがよい。左右どちらかにずらして収まるよう調整しよう。

余白が少ない

キャラクターと背景が隙間なく描かれているページがあってもよいが、全ページがそれだと息苦しいかも。特に、文章を多めに載せる場合はしっかりと余白を取る意識を持とう。文章も、絵で描いてあることを二重に語ってしまっていないか、主語述語はすっきりしているかなど見直そう。

※本記事は2021年9月号に掲載した記事を再掲載したものです。