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絵本を作ろう!①ストーリー絵本を作ろう

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絵本は、対象年齢や内容によりさまざまな種類がある。今回は、「ストーリー絵本」の作り方を説明する。物語+絵で展開されるオーソドックスな絵本の形だ。

対象年齢での分類が一般的

書店の絵本コーナーに行くと、対象年齢順で並んでいることが多い。0〜1歳のまだ言葉を話せない赤ちゃん向けと、多少複雑なストーリーも理解できる小学生向けでは、内容が異なるためだ。また、絵本は目的もさまざま。子どもたちに楽しんでもらうだけでなく、「色」に親しむための絵本や、あいさつを学ぶための絵本など教えることが目的の本もある。

しかし、書き手がそのような分類を気にしすぎる必要はないと筒井さんは言う。

「3歳向けだからこうしようとか、あまり考えすぎないほうがいいと思います。自分が面白いと思ったアイデアをシンプルに展開することが大事。実際、けっこう上の年齢向けとして書店で売られているものを、もっと幼い子どもたちが面白いと真剣に読んでいることはよくありますよね」

絵本の分類

赤ちゃん絵本

まだおしゃべりする前の0~2歳ぐらいまでの赤ちゃん向け。

『いないいないばあ』 松谷みよ子 作/ 瀬川康男 絵(童心社)

絵本をめくるたび、ネコ、クマ、キツネ……いろいろな動物がいないいないばあをします。

赤ちゃん向けの絵本はシンプルな作りながら、リズムや色使いはどれも考え抜かれている。めくるたびに新しい刺激と発見があり、何回も何回も楽しめる名作も多い。

知識絵本

知識を与えながら、子どもたちの好奇心を刺激する絵本。

『おへそのひみつ』 やぎゅうげんいちろう 作・絵(福音館書店)

おへその役目と、母から子へ受け継がれる生命のすばらしさを面白く温かく伝える。

仕掛け絵本

開くと飛び出してくるなど、ものとしての絵本が楽しめる。

かがみのえほん『きょうのおやつは』 わたなべちなつ 作・絵(福音館書店)

鏡のように反射する紙でできており、両側の絵が映り込むことで3次元的に楽しめる。

ストーリー絵本

物語の筋があるもの。多くの絵本がこれにあてはまる。

『そらまめくんのベッド』 なかやみわ 作・絵 (福音館書店)

そらまめくんの宝物はふわふわのベッド。だれにも貸してあげません。しかし、ベッドが突然なくなり…。

ベッドを独占せず友だちと分け合うようになるそらまめくんの成長が子どもたちにも重なる。

『ぼくはいしころ』 坂本千明 作・絵(岩崎書店)

ぼくは街でひとり暮らす猫。だれもぼくのことを気にとめない。道端のいしころと同じ。でもある日、声をかけてくる人間がいて……。

繊細な紙版画で、黒猫が自分の気持ちに気づいていく心の動きが丁寧に描かれている。気持ちが溢れ出る瞬間の演出にも注目。

『ぐりとぐら』 なかがわりえこ 作/おおむらゆりこ 絵(福音館書店)

お料理することと食べることが大好きなぐりとぐら。森で大きな卵を見つけ、カステラを作ることに。

大人気ぐりとぐらシリーズの1作目。大きなカステラができあがっていくのにわくわく。

基本ストーリーを考える

ストーリーの作り方を解説。基本のストーリーは自分の経験をもとに考えていくと作りやすい。子どもの自分に戻って考えてみよう。

タネを探そう

子どもの自分にとって印象深かったことを

絵本を描くためにまず必要なのは、基本的なストーリーの流れを考えること。いわばプロットを作る作業だ。

でも小説ほどいくつものシーンや登場人物は必要ない。自分の子どもの頃を思い出して、印象深かった出来事が1つあれば絵本のストーリーにすることができる。

幼い頃の楽しかったこと、悲しかったこと、なぜかよく覚えていることなど、文章で書き出してみよう。そこに絵本のヒントがあるはずだ。

書いてみよう!

〔 登場した人 〕
例:友達3人と自分、友達のおじいちゃん

〔 いつ・どこで・なにを 〕 匂いや色、感情など細かく書き出そう。
例:4人でお祭りに行ったら迷子になってしまった。いつも遊んでいるはずの神社が暗くて、お祭りの太鼓の音がやけに大きく聞こえて怖かったが、友達のおじいちゃんが助けに来てくれてほっとした。

小さなことでも大きなことでもOK

子どもの頃のことをストーリーのタネにする利点は2つ。1つ目は0から考えるよりも簡単なこと。2つ目は、「これが子どもにとっても面白いかわからない」という不安を持たずに済む点だ。

大人の私たちは、子ども向けのものを書くときにどうしても、「子どもにとってはどうだろう?」と考えてしまう。少なくとも自分が子どものときには面白かった、と自信を持って取り組もう。

本人の実話を絵本の形に

『やましたくんはしゃべらない』 山下賢二 作/中田いくみ 絵 ( 岩崎書店)

となりの席の山下くんは、1年生の頃から6年生の今まで、ひと言もしゃべったことがない。声を聞いた友達は、だれひとりいない。山下くんは、決してしゃべらない。筒井大介さん担当絵本。

作者の山下賢二さんの実話です。エッセイを読み、9年間しゃべらなかった事実に衝撃を受けるとともに、それを当たり前のように受け入れていた周りの存在がとても稀けう有に思え、絵本にしましょうと声をかけました。絵本化にあたり、視点人物を本人から同級生に変えるなど調整を重ねて完成しました。

骨組みを作ろう

タネを元にしてストーリーを作ろう

タネを1つ決めたら、絵本のストーリーに仕立てていく。筒井さんは、一般的な小説の「起承転結」のストーリーと、絵本のストーリーでは少し違うと言う。

「小説なら起承転結に沿って、徐々に盛り上げていくことが多いですよね。時系列が複雑だったり、人物の関係性が面白かったりする場合も。絵本も山場に向けての流れはあるのですが、ページ数が少ないので最初に設定を描いたらすぐに〝転〞に移ると思ったほうがよいかもしれません。前置きはできる限り短くして、なるべく早く本題に入ることが大切。子どもたちが飽きずに物語に入り込める工夫ですね」

絵本は、1つのアイデアのバリエーションで話が展開していくのも特徴。『おおきなかぶ』なら、誰が来てくれるのかというバリエーションで話が進んでいく。あれもこれもと詰め込まず、面白いと思った一点を生かす構成にしよう。

登場人物

どんどん仲間が増えていく物語など例外はあるものの、初心者の場合、基本の登場人物は少なくを心がけよう。たとえば4人で体験した出来事でも、主人公は1 ~ 2人に減らすなど子どもたちが混乱しない人数にするといい。

プロット

ラフを描きながらプロットを立てる作家さんもいるが、今回は文章である程度まとめるやり方を紹介する。絵があまり得意でない人は特に、先にストーリーを固めたほうが取り組みやすい。最初はどんな場面からスタートして、山場はどんな場面で、結末はどうなるのか、その3つは最低限固めておきたい。その後、それらをどうつなげば自然か考えてみよう。

書いてみよう!

起・転・結の3つに分けてプロットを立てる。むずかしい場合は、以下で展開の基本の形を説明しているので参考にしてみよう。

スクリーンショット 2025-05-16 152340.png

例:友達と2人でお祭りに出かける場面。はじめて子どもだけで夜に出かけるのでドキドキしながら浴衣を着せてもらい、明るくて楽しいお祭り会場に行く。

例:屋台を見て歩いていて、気づいたら知らない路地にいた。きれいな飴やお面に交じって、たぬきが踊っていたり、妖怪がいたりする。太鼓の音がして怖くなり、山の上の神社まで逃げることに。

例:自分のおじいちゃんが、神社に行く2人を見て追ってきてくれる。実は1本となりの路地だった

名作に学ぶストーリーの展開方法

多くの子どもたちに愛されてきた名作を元に、ストーリーの展開方法をご紹介。今回は基本の型である「その場でくり返しなにかがある」と「どこかに出かけてまた戻る」の2つを解説する。

行って戻る

『はじめてのおつかい』 筒井頼子 作 / 林明子 絵(福音館書店)

2~3ページ目 
5歳の女の子であるみいちゃんは、あかちゃんのための牛乳を買ってきてほしいとままにおつかいを頼まれる。みいちゃんのはじめてのおつかいが始まるシーン。

8~9ページ目 
お店まで歩いていくみいちゃん。途中で友達に会ったり、坂道でこけてしまったりしつつもお店まで向かう。町の様子と、お店までの道のりが伝わってくる構図。

24~25ページ目 
お店についてもなかなかおばさんに気づいてもらえず、勇気を出して大きな声で話しかける。やっと牛乳を買うことができ、ほっとすると同時になみだがひとつこぼれた。

30~31ページ目 
ままが帰りを待ってくれているシーン。「おつかいの途中でさまざまなものに出会う」というアイデアのバリエーションで話が展開しながら、「行って戻る」ストーリーが丁寧に描かれている。

くり返し

『おおきなかぶ』 ロシアの昔話 A・トルストイ 再話/内田莉莎子 訳/佐藤忠良 画(福音館書店)

4~5ページ目 
2~3ページ目で植えたかぶは、めくると大きく育っている。育つまでの様子は描かれていない。ページに入りきらないほどのびのび描くことでかぶの大きさが伝わってくる。

6~7ページ目 
おじいさんはさっそくかぶを引き抜こうとするが抜ける気配は全くない。「うんとこしょどっこいしょ ところがかぶはぬけません」というリズム感のいい文が特徴的。

20~21ページ目 
おじいさんがおばあさんを呼んで、さらにおばあさんは孫娘を呼んで……それでもやっぱりかぶは抜けない。「誰かを呼ぶ」→「それでも抜けない」のくり返しが楽しい。

26~27ページ目 
ラストはかぶが抜けたシーン。かぶが育つ様子や、抜いた後のことは書かずに、抜いているところだけをシンプルにくり返して描写している。

 

※本記事は2021年9月号に掲載した記事を再掲載したものです。