【小説家になる方法】公募・投稿サイト・持ち込みの違いを徹底比較&わかりやすい解説付き!


小説家になる方法
漫画『響』の主人公は、芥川賞と直木賞を同時受賞する圧倒的天才。そこで今回は『響』のようになりたい君のために、小説の書き方、プロになる方法を特集する!
【ルート1】公募文学賞 公募文学賞を受賞してデビューするのが王道
小説家になろうと思ったら公募文学賞に応募するのが王道。このルートが始まった経緯と適性を解説しよう。
公募文学賞が王道になったのは戦後
昭和のある時期までは、小説家になろうと思ったら師匠に弟子入りするか、出版社に持ち込みするぐらいしか手がなかった。
これを打ち破ったのが、昭和30年創設の文學界新人賞と石原慎太郎の受賞作『太陽の季節』。同作は大ブームを巻き起こすだけでなく、新人賞を受賞して小説家になるというルートを世に知らしめた。プロへの新しい道を明確に示したと言っていい。以降は弟子入りしなくてもツテがなくても、作品一本で勝負できるようになった。
公募文学賞を経て小説家になるメリットは、その賞に歴史と権威があるほど鳴り物入りでデビューすることができること。プロフィールには「○○賞受賞」と書ける。
デビュー作の宣伝、販売にも力を入れてくれ、出身作家として大事に育ててくれる。とくに純文学系は他の方法で世に出るのが難しいため、公募文学賞がプロへの最短距離と言える。
内向的で自己PRが苦手な人は助かる
公募文学賞以外の方法で編集者に自作を知ってもらうとしたら、作品を持ち込むか郵送するか、同人誌を作って献本するしかない。
いずれの方法も難がある。持ち込みは自作小説の訪問販売のようなもので、その手の売り込みが苦手な人もいるだろう。同人誌などはある程度の費用がかかる。
【公募文学賞に向いた人】
審査料は原則無料。交渉するようなことが苦手な人には便利なシステム。ただし、文芸誌、小説誌を母体とする文学賞でないとプロにはなりにくいので要注意。
公募文学賞に傾向はあるか
ジャンル的傾向はあるが、内容や雰囲気の傾向はない。というよりむしろ逆。
第1回文學界新人賞は石原慎太郎の『太陽の季節』だったが、同時期に実施された第1回中央公論新人賞には深沢七郎の『楢山節考』が選ばれた。一説によると、こちらは敢えて『太陽の季節』的でない作風の作品にしたそうだ。当然だろう。
同じ賞の中でも、有名な作品が出るとそれに似た作品が増えるそうだが、新しさを求めているのなら、似た作品は選ばれない。選ばれたとしても本意ではないはずだ。
【ルート2】小説投稿サイト 出版各社が注目する新人発掘の場
小説投稿サイトは誰でも気軽に小説を発表でき、近年は新人発掘の場でもある。このルートのメリットは?
早く発表したい人や反響が欲しい人向き
小説投稿サイトは20年ぐらい前から人気が出始め、『魔法科高校の劣等生』や『君の膵臓をたべたい』などのヒット作が出ると、書きたい人が飛躍的に増えた。
膨大な数の小説が掲載されており、玉石混交ではあるが、分母が大きいから今やヒット商品を生む巨大マーケットとなっている。
最大のメリットは、誰でも無審査、無料で掲載できること。また、同好の仲間から評価や感想がもらえるので刺激になる。同人誌の機能がすべてあり、一面ではインターネット上の同人誌とも言える
【小説投稿サイトに向いた人】
毎日、毎週のように定期的に作品をアップできる人。第三者の感想を欲しい人、批判をされても耐えられる人。ストーリーメイクに自信のある人。
投稿サイトは同人誌に代わる修業の場
かつては大御所の小説家のまわりには作家志望者が集まった。夏目漱石の木曜会には芥川龍之介や内田百閒がいた。大衆文学の大御所、長谷川伸の新しんよう鷹会には池波正太郎、平岩弓枝、新田次郎らがいた。
また、芥川龍之介や菊池寛の『新思潮』、太宰治の『海豹』、川端康成や横光利一の『文藝時代』など、同人誌を作家修業の場とする人も少なくなかった。
今は小説投稿サイトが作家修業の場でもあり、『小説家になろう』の「なろう系」は、ある一派として文学史にその名を残すかもしれない。
【ルート3】持ち込み 99%は門前払いだが、例外はなくもない
手っ取り早く編集部に売り込むなら、持ち込みという手もある。今でも持ち込みをするメリットはあるのだろうか。
需要のあるジャンルなら多少の可能性が
持ち込みをしようと電話をすると、「文学賞に応募してください」と言われる。編集者は審査員ではないし、業務で手一杯で、原稿を読む時間も余裕もないからだ。
持ち込みが成功するとしたら、公募文学賞を持っていない出版社であるか、公募文学賞では対象外の枚数やジャンルで、かつ、一定の水準であると見込めること(別の作品で最終選考まで残った、他のジャンルではプロの実績がある、プロの推薦があるなど)。
加えて、とにかく質より数が欲しいという出版社側の事情があれば、多少は可能性があるかも!
【持ち込みに向いた人】
売り込みができる人(作品を持ち込むだけでなく、概要、あらすじ、他の小説にない価値をきちんとプレゼンできる人
【持ち込みなどで出版された小説】
●島田雅彦『優しいサヨクのための嬉遊曲』
●京極夏彦 『姑獲鳥の夏』
●原尞 『そして夜は甦る』
●伊東潤 『武田家滅亡』
●山口恵以子 『邪剣始末』
●平野啓一郎 『日蝕』
※本記事は2018年10月号に掲載した記事を再掲載したものです。