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【小説家志望の道しるべ】文学賞受賞から小説家デビューまでのリアルな流れ&文学賞担当者のここだけの本音!

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選考過程と小説家デビュー

受賞者はどのような過程を経て選ばれるのか、受賞したあとは即デビューなのか、選考過程と小説家デビューについて解説する。

予選・本選を経て受賞者が決まる

公募文学賞の選考は予選と本選に分けられ、予選は予選委員(下読み人)が行い、本選は応募要項に書かれた選考委員が行う。

予選は1次選考(約1割残す)と2次選考(さらに絞り込む)に分けられ、3〜5次と細かく段階を経る場合もある。

1次の前に0次というのがある場合もあり、ここでは「小説でもなく日本語ですらない」という原稿を落としていく。これらは誰が読んでも100%選外であり、お金を払って予選委員に依頼するまでもないということだろう。

2次以降は編集部で審査をする。本来は全部内部でやりたいところだが、10人もいない編集部では読み切れないので、読み切れる数になるまで絞るわけだ。

ただ、最終選考の前でまた予選委員に審査を依頼することもある。ここで依頼する方々は相当信頼のある読みのプロだ。

本選には5編前後が残り、選考委員がまずそれぞれの作品について○×△をつけ、コメントをする。その後、再投票が行われ、○を多くもらった候補者が受賞する。

他の選考委員のコメントを聞いて意見が変わったり、ある候補作を推したが、別の候補作を強く推す人がいて降りたり、選考会にも多少の運不運はある。

文学賞担当者に聞く ここだけの本音トーク

文学賞を担当する編集部の人や事務局の人に、運営や審査に関する本音を語ってもらった。

受賞作のレベルは、応募数に比例する

今、書きたい人が増えていますが、「なんとか小説になっている」と言えるのは1割もありません。大半は「なんだ、これ!」なんですが、それでも受賞作のレベルは応募数に比例します。箸棒原稿も必要なむだなんです。

小説投稿サイトとタイアップする理由

ライトノベルの秀作を発掘したいと思っているのですが、長年文芸畑にいますので、文章が下手な作品にはつい点がからくなってしまいます。だから、ある新人賞では1次選考を小説投稿サイトの方に依頼しています。

受賞作でもかなり直しがある

新人賞の受賞はプロとしてはスタートラインに立っただけ。受賞作でも商業レベルにもっていくためには大量の修正をしてもらうこともあります。同人誌ではないので、だめとわかっていて掲載はできません。それでドロップアウトしてしまう人もいますね。まれにですが、のちに他社から再デビューした人もいました。

正しい文章がいい文章ではない

今年の受賞作に関しては、ほとんど直しがありませんでした。エンターテインメント小説と違って、「こうしたらよくなる」という正解がないんですよね。日本語として正しい文章がいい文章というわけでもないですしね。

すべての応募作品の体裁を揃えるのに苦労

規定では用紙サイズはA4です。B5の原稿は拡大し、B4の原稿は縮小し、みんなA4にします。タイトルやノンブルがなければ入れ、横書きは縦書きに直します。ただ、手書き原稿は変えようがないのでそのままです。

作家さんと二人三脚で改稿

担当編集になり、一緒に改稿して最終選考に出したのですが、編集部の評判は悪くて、それで「受賞できなかったら1年間、会社のトイレ掃除をする」と言っちゃったんですよね。はい、1年間、掃除しましたよ。でも、その作家さんと一緒に次作を練り、次の年は大賞を受賞しました。私の目に狂いはありませんでした。

受賞してからが、本当の作家修業

受賞すると長編なら単行本になる。いよいよ作家デビューだ。しかし、その前に担当編集による直しがある。なかには改稿につぐ改稿を求められることも。

賞によっては、最終候補作が決まると担当編集がつき、二人三脚で改稿し、その原稿で最終選考される。受賞を逃しても担当編集がつくと次作の相談ができる。

デビュー作のあとは受賞第一作となるが、どんどん単行本が出るというわけにはいかない。

文芸誌や小説誌を母体とする文学賞ではまず雑誌に短編を書き、その続編を4〜5編書いて、好評なら1冊にまとめて単行本化。さらに好評なら文庫化となる。

同じ文学賞でもライトノベルはやや事情が異なる。受賞すると出版契約を結び、授賞式を迎えるのは同じだが、ライトノベルはいきなり文庫になり、しかもシリーズ化が前提。編集者は改稿もするが、話し合いの末、シリーズ化に向けて設定まで変えることも。

ライトノベルも一般文芸も、好評なら次の依頼につながっていく。

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※本記事は2018年10月号に掲載した記事を再掲載したものです。