【小説を書くコツ】いい小説は重構造になっている! ストーリーの骨格と深みを作る方法


小説を書くコツ②絵が浮かぶ場面を書こう
頭に場面が浮かぶ。これは最低条件。絵が浮かんだら、説明と描写、セリフ、心情を交えながら、場面という空間を読者の頭の中に再現しよう!
小説の3つの材料、説明・描写・セリフ
材料がわからないと料理は作れないが、それと同じで、小説も素材について知っておきたい。
小説は、説明と描写とセリフで書かれている。説明は、「いつ、どこで、誰が」といったこと。
ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。(芥川龍之介『蜘蛛の糸』)
「ある日」「極楽の蓮池のふちを」「お釈迦様は」が説明だ。
もちろん、必要なことが必要なときに書かれていればいいので、どれかが抜けていることもあるし、書く順番も作品によって違う。
描写は、説明では表現しきれない感じを書いたもの。
この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、三途の河や針の山の景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。(芥川龍之介『蜘蛛の糸』)
ここでは比喩になっているが、「水晶のような」「覗き眼鏡を見るように」が描写的な部分。
セリフはカッコ書きで「おはようございます」と書く直接話法と、〈彼は朝の挨拶を述べた。〉のような間接話法があり、もう1つ、心の中のセリフをカッコなしで書く自由間接話法がある。これは一視点の小説のみ書くことができる。
小説は何でできているか
説明
「いつ」「どこで」など言葉で説明できることを書いたもの。設定や経緯、人間関係、時間の経過など。絵で言えば輪郭。
描写
言葉では説明できない感じを、直接的な言葉を使わずに表現したもの。情景描写、心理描写。絵で言えばタッチや筆づかい。
セリフ
会話。セリフに強弱がないと英会話の例文のようになる。説明的なセリフ、長ゼリフに注意。誰のセリフかもわかるように!
いい小説は重構造になっている
読んで面白いだけの小説や推理小説は別にして、いい小説は再読に堪えるものであり、読む前に結末を知らされても少しも価値が損なわれない。
そういう小説は、いろいろな読み方ができる。たとえば、表向きは「主人公が、奪われたものを奪還する話」だが、一面では恋愛ものであり、別の見方をすれば文明批判だったり。
たとえば、きむらゆういちの童話『あらしのよるに』はオオカミとヤギの友情物語だが、男女の話とも読めるし、人種問題の寓話とも読める。
長い鑑賞に堪える作品の条件は、話の骨格がシンプルで、ストーリーを一言で言えること。かつ、そこに普遍性があること。『あらしのよるに』も「敵対する者同士は仲よくなれるか」というテーマに普遍性があったからヒットした。

空間と時間を表現しよう!
小説には絵がない。直接的に映像を見せるわけでもない。作者の頭にあるものと同じものを、言葉によって読者の頭に浮かべさせるように表現する。
そのために必要なことは、空間を書くということ。
場面には空間があり、そこは奥行きのある三次元で、色もあれば音もある。手ざわり、肌ざわりもあり、ものを食べれば味もする。
もちろん、そこには時間も流れていて、作者が延々と描写をしているようなときはストップモーションになっているが、物語の進行とともに時間も進んでいく。
小説ではそうした時空を表現する。その基本のきは、頭に描いた絵を写す(写生する)ことだが、これは絵を描くのとは少し違う。
文章では一から十まで場面を写生することはできないし、効率が悪い。伝えたい部分を選び取り、場面を想像する手がかりとなる言葉を選んでいくのが小説の書き方の基本だ。
小説の文章は、 目を働かせて書く
小説の情報は大半が視覚情報で、読者はそれを手がかりに頭に絵を浮かべる。次いで多いのが聴覚情報。嗅覚、触覚、味覚情報は少ないが、これらを加えると描写が豊かになる。

※本記事は2018年10月号に掲載した記事を再掲載したものです。