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【人物造形の公式= 出来事× 選択】キャラの性格、どう表現する? 説明するのではなく描写する

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性格をどう表現するか

人物の性格を設定しても、それだけでは伝わらない。読者に「こんな性格なんだ」を伝える方法を考えよう。

説明をしない 描写をする

作中に「悪い男ではない」と書いたとしても、読者が「悪い男ではない」と認識してくれるのは一瞬のこと。すぐに忘れてしまう。

こうした説明は、電話番号や歴史年表と同じで、意識すれば覚えられるのだが、覚えにくく忘れやすいという特徴がある。

では、人物の性格、特徴などはどのように表現したらいいか。「悪い男ではない」と書くのではなく、「悪い男ではない」ことがわかるエピソードを書くこと。

エピソードが書かれていると、読者は「この人物は悪い男ではない」と解釈をし、自分で解釈をすることで記憶に残りやすくなる。

人物の性格を伝えたいなら、性格がわかる出来事を書き、出来事を通じて表現することだ。

描写で人物の性格を表現した例

 君はいつまでこんな宿屋に居る積りでもあるまい、僕がいい下宿を周旋してやるから移りたまえ。外のものでは承知しないが僕が話せばすぐ出来る。早い方がいいから、今日見て、あす移って、あさってから学校へ行けば極りがいいと一人で呑み込んでいる。(中略)そこのところはよろしく山嵐に頼む事にした。すると山嵐はともかくも一所に来てみろと云うから、行った。町はずれの岡の中腹にある家で至極閑静だ。主人は骨董を売買するいか銀と云う男で、女房は亭主よりも四つばかり年嵩の女だ。
(中略)とうとう明日から引き移る事にした。帰りに山嵐は通町で氷水を一杯奢った。学校で逢った時はやに横風な失敬な奴だと思ったが、こんなに色々世話をしてくれるところを見ると、わるい男でもなさそうだ。(夏目漱石『坊っちゃん』)

性格が決まれば、リアクションも変わる 

人物造形の公式= 出来事× 選択

シチュエーション
応募締切は今日の24時。帰宅しようとしたところで急な仕事が入り、23時まで残業。今すぐ帰社しないと24時までに帰宅できない。せっぱ詰まっているとき、上司に以下のように言われた。

セリフ
「おい、タバコ、買ってきてくれ」

【性格別リアクション例】

素直なお人よし
「承知しました。銘柄はメビウスでしたね」私はコンビニに急行した。

気弱な正義感
コンビニに向かう道すがら、「私用じゃねえか」と道端の猫に言った。

アホなお調子者
「へい、喜んで。超マッハでかっ飛んで行きます。この貸しは高いっすよ」

陰気で粘着質
「それってボクが行ったほうが? いや、いいんすよ、いいんすけどねえ」

気の弱い跳ねっかえり
いやいやコンビに向かいながら、「死ねー!」並木を蹴って足首をくじいた。

口の悪い人情家
「お金払って肺がんの元を? 体に毒ですよ。もちろん、買いには行きますよ」

ちゃっかりしている末っ子気質
「えー、私が行くんですかあ。めんどいい~。お釣りはお駄賃ね。へへっ」

意識高い理屈屋
「公私は分けるべきでは? 業務だと言うのなら対価はいくらでしょうか」

何を選択するかで、人物の性格が見えてくる

人物の選択を通じて性格を表現する

性格は、ある出来事にどんな選択をしたかでわかる。出来事はリトマス試験紙のようなもの。

たとえば、「タバコ、買ってきてくれ」と言われた場合でも、どんなリアクションをとるか、選択肢は無数にある。

問題は、人物にある選択をさせて、「素直すぎる人」を印象づけたのに、そのことには無自覚なまま、別の場面では「素直でない」人物にしてしまうこと。自分で書いた表現に自覚的になろう。

違う行動をとらせてもいいが、作者の中では整合性がとれていて、場面の中で辻褄を合わせておこう。

記憶に残りやすい文章

陳述記憶には意味記憶とエピソード記憶があり、高齢の方が昔のことを覚えているように、エピソード記憶は忘れにくい。また、文章を読む場合、行間に暗示されているものを解釈するように読むと記憶に残りやすい。逆に作者はそう書けば記憶に残りやすい文章になる。

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性格と名前とモデル

性格と名前
人物名は、性格や関係を思わせる名前にすると覚えやすい。たとえば、「無二の親友」だから苗字は「牟尼」とか。各人物名は音や字面を変え、姓名のどちらかが珍名なら、どちらかは普通にするといい。たとえば「田中八月朔日」「伊集院恵」。

性格とモデル
実在する人物をモデルにすると、イメージがわきやすいというメリットがある。一例だが、太った人物ならタレントの石塚英彦をイメージするとか。「石ちゃんというあだ名で呼ばれている」と設定しても。ただし、悪意がない場合に限る。

夏目漱石『坊っちゃん』の性格表現

主要人物

校長(狸)
校長は薄髯のある、色の黒い、目の大きな狸のような男である。やにもったいぶっていた。

教頭(赤シャツ)
妙に女のような優しい声を出す人だった。この暑いのにフランネルのシャツを着ている。

古賀(うらなり)
大変顔色の悪い男がいた。うらなりの唐茄子ばかり食べるから、顔が蒼くふくれている。

堀田(山嵐)
逞しい毬栗坊主で、叡山の悪僧と云うべき面構である。君が新任の人か、アハハハと言った。

吉川(野だいこ)
漢学の先生はさすがに堅い。昨日お着きで、――とのべつに弁じたのは愛嬌のあるお爺さんだ。

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あだ名という妙技と漱石流キャラ分け

文学史上、人物造形の先駆と言えば、夏目漱石の『坊っちゃん』だろう。人物に関する表現は左記のとおり。「狸」「赤シャツ」など、視覚を働かせて外見を言葉に変換しているので絵が浮かぶ。

また、外見をそのままあだ名にしており、それが人物を思い出させるキーワードにもなっている。キャラ分けもしっかりされている。

※本記事は2019年5月号に掲載した記事を再掲載したものです。