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【創作テクニック】キャラクターを立たせないことで生まれるリアリティと余白の力

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キャラクターの強弱

小説ではキャラクターを立てないことがある。その理由とキャラを立てない人物造形について学ぼう。

語り手はある程度、常識人でないと

一般の小説では、映画やアニメのようにはキャラクターが立っていないことが多い。

これは文芸ジャンルにもより、純文学や私小説にアニメのような主人公を出してしまえば、雰囲気が壊れてしまうかもしれない。

一方、エンターテインメント小説はすべてキャラクターが立っているかというと、主人公についてはそうでもない。

主人公は語り手(ナレーター)であることが多いが、語り手は物語を客観的に語っていく必要があるから、ある程度は常識人でないといけない。極端に言えば、語り手が変人では第三者的にストーリーを説明することができない。

もしも主人公に強烈なキャラを持たせるなら、または謎めいた人物にしたいのなら、そのときは形式主人公とでも言うべき『ホームズ』シリーズにおけるワトソン的な主人公を別に立てたほうがいい。

キャラクターを立たせないケース

等身大の自分を扱う
自分をモデルとして、または自分をベースにして書いた場合、主人公は現実そのまま。個性的ではあっても、キャラクターは立っていないことが多い。

主人公が狂言回し
狂言回し、つまり、物語を語っている主人公の場合、ある程度は冷静で客観的であることが求められる。この場合はまわりの人物のほうが個性的になる。

テーマ性重視
「こんな面白い話がある」という小説はキャラが立ち、「私はこう思う」という小説では、キャラはテーマをじゃましないように抑えられる。

キャラクターを立たせない効果

人間として自然
性格の一部を大げさに強調した人物は、実際にはいない。逆に言えば、現実を生きる本当の人間を描き出そうとすると、キャラクターは必然的に弱くなる。

想像に委ねられる
純文学や私小説では、外見などは具体的には書かない。書かないから読者も読ませられることがなく、何も書いていない空白を想像で埋めて楽しめる。

雰囲気を壊さない
キャラクターはストーリーに連動するので、ストーリーによっては戯画化されたようなキャラクターでもいい。しかし、静謐な物語ではじゃまになる。

キャラは抑えめでも性格は持たせること

等身大の自分を主人公に書く場合は、もともと自分という人格があるので、人物造形をしなくても済んでしまう場合もある。

しかし、自分とは違う人格の主人公を想定したり、自分がモデルでも大きな物語の場合は、性格づけをしないと書きあぐねる。

その場合、こんなふうに思う。「このセリフ、なんだか言わされているみたいだ。この主人公が言う必然性がないし、別の人物のセリフにしても成り立ってしまう」

性格を持たなければ、そうなるだろう。感情もこもらないし、こめたつもりでもどこか空々しい。

こうなると、書いている本人も面白くないし、もちろん、読者も面白くない。

あえてキャラクターを立てないことはあるが、それとなんの目鼻もつけないのとは違う。人物造形で手を抜くと、途中で思わぬしっぺ返しにあう。

純文学とエンタメ小説

かつては純文学とエンタメ小説に分けられたが、現在はボーダレス。大半の小説は芸術性もあれば娯楽性もある。人物造形に関しても同様で、類型的な人物設定をしている作品もあれば、キャラクターを立てていない作品もある。

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キャラの強さとテーマとストーリー

キャラの強さは娯楽性、ストーリー性には比例するが、テーマ性が弱くなると、キャラは反比例して強くなる。

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世界観とテーマとストーリーとキャラクターの割合は一定で、どれかのウェイトが高まると、それ以外のものは弱まる。

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エンタメ小説でも、キャラを立てない場合

キャラクターの強さは、娯楽性に比例し、娯楽性が強くなれば物語性(ストーリー性)も強くなるが、例外もある。

それがホラーやサスペンス、パニックアクションなど。この場合、読者の関心は「どうなってしまうのか」というストーリーにある。だから、このケースでは、変にキャラクターを立ててしまうとうるさい感じになることがある。

実際、小説でも映画でも、心理的にハラハラドキドキする作品では登場人物はごく普通の人物であることが多い。普通の人が巻き込まれるから、そこにリアリティーが生まれるとも言える。

ただし、キャラクターは抑えめでも、性格がない(無個性)のではない。これは大きなポイントだ。

主人公の性格は結果である

現実と地続きのリアリズムでは、「心配性の主婦」といったざっくりした設定しかしない場合もある。

しかし、出来事が起き、なんらかの反応(選択)を示すたびに性格が出てきて、作者自身、書いたら「こんな性格だった」と気づく。人物も経験を経んで、性格・人格が形成されたのだ。

詳しく人物造形をしないのはストーリーに未定の部分があるからということもあるが、そのほうがあとでわかる性格を吸収しやすいからという部分もある。

小説の設定にかかわる4要素

人物造形と密接にかかわる4つの要素を挙げてみた!

1.世界観
世界観とはSFやファンタジーでは架空の世界のありようを指し、リアリズムでは作品の雰囲気を指す。世界観が特殊な場合、キャラは普通でも成り立ち得る。

2.テーマ
テーマとは作品を通じて言いたいこと、行間に込められた主題。作者自身、意識していない場合も。テーマ性が強い作品ではキャラは抑えめになることが多い。

3.ストーリー
話の筋、展開。スリリングな展開、サスペンスの場合はキャラは立っていなくてもいい。キャラが立っている場合は、ストーリーはシンプルでもいい。

4.キャラクター
登場人物の性格。性格は多面的だが、ある部分だけが強調されると際立つ。キャラクターは娯楽性が強い小説ほど立ち、テーマ性が強い小説では弱められる。

※本記事は2019年5月号に掲載した記事を再掲載したものです。