【エンタメの黄金法則】伏線・落差・対立で物語は面白くなる|『あなたには帰る家がある』と『ブラックペアン』をもとに解説!


どうしたって面白くなる! エンタメの展開と構造
ここでは、前クールのドラマの中から、『あなたには帰る家がある』と『ブラックペアン』を例に、面白くなる展開と構造について解説。
『あなたには帰る家がある』
放送 TBS
キャスト 中谷美紀 玉木宏 ユースケ・サンタマリア 木村多江
原作 山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫)
STORY
真弓は、夫の秀明と娘の麗奈の3人家族。ある日、秀明が働くモデルハウスに太郎と妻の綾子がやってくる。秀明は真弓とは対照的な綾子に衝動的に惹かれ、禁断の恋に陥ってしまう。しかし、不倫が発覚。秀明は綾子とはもう会わないと約束するが、綾子は執拗に追ってくる。真弓と秀明は離婚するが、それだけでは終わらない。
面白くなる要素がてんこ盛り
『あなたには帰る家がある』は、ごく普通の人物が不倫をするというありふれた設定で、それでもこれだけ面白くなるという好例と言ってもいい。
その理由はいろいろあるが、浮気をすれば家庭が壊れるというシリアスさがあるところもそうであり、その中にも家族愛が描かれ、ほっとさせられるシーンがあるところも面白さを支えている。
不倫相手の女性が、別れてくれと言っても執拗に追ってくるのはサスペンスでもありホラーでもある。と同時に、追い詰められれば追い詰められるほどうろたえる様はコメディーでもある。
不倫した者と不倫された者との対決も見ものであり、人には言えない過去(秘密)で引っ張るところも、定番の技巧ながらうまい。
応用するときの注意点
アットホームとシリアス、コメディーとサスペンスはその落差によって相乗効果になることもあるが、打ち消し合わないよう注意。
また、面白くなる要素てんこ盛りにしようとして、肝心のストーリーのほうがガタガタにならないように注意したい。
ドラマ第9話のワンシーン
綾子は、「秀明さんには私が必要なの」と執拗に追ってくる。秀明は後悔し、「もう会わない」と約束するが、結局、真弓に「別れましょう」と離婚を切り出される。そして、アパートで一人暮らしを始める。
その頃、娘の麗奈にトラブルがあり、そのことを知った秀明と真弓は一緒にトラブルを解決し、ちょっといい感じになって、真弓は秀明をアパートまで送ってくる。と、アパートのドアが開き、中から綾子が秀明の上着を肩にかけて出てくる(別のシーンで、雨の中を待っていた綾子に秀明は上着をかけ、そのとき、綾子がアパートの鍵をひそかに盗むシーンが伏線として描かれている)。
『ブラックペアン』
放送 TBS
キャスト 二宮和也 小泉孝太郎 内野聖陽 竹内涼真 葵わかな 市川猿之助
原作 海堂尊『新装版ブラックペアン1988』(講談社文庫)
STORY
「神の手」を持つ佐伯清剛教授がいる東城大学外科教室に、帝華大学の高階権太講師が、食道がんの手術が簡単に行える新兵器「スナイプ」を手みやげに送り込まれてくる。その東城大学には「オペ室の悪魔」と言われる渡海征司郎がいる。ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』につながる海堂尊の傑作医療ミステリー。
できないことをやってくれる
ドラマの面白さの1つに、現実的には到底できないことを主人公が代わりにやってくれる痛快さがある。それは言ってみれば、ウルトラマン的な痛快さ。
『ブラックペアン』の渡海征司郎も現実にはまずいないだろうという超人で、どんな難しい手術も天才的な手技でやってのけてしまう。ドラマの終盤で見せる手さばきは神業のようだ。
一方で渡海はダークヒーローでもあり、医療過誤になりそうな事態になっている同僚に「1000万円でもみ消してやる」と代わりに手術し、退職を迫る。
これだけ極端な人間はそうそういないが、だからこそ主人公になる。現実では叶えられないことをやってくれるから痛快なのだ。
応用するときの注意点
天才的ヒーローでも、なんでも簡単にやってのけては面白くならない。ためてためて、最後に必殺技を出す。ただし、ためすぎると読者のストレスになるので注意。
また、ヒーローを出すときには、どうせ作り話だろうと思われないように、主人公の能力以外はリアルに描いておく必要がある。
対立させるだけで面白くなる
誰かと誰かが対立すれば、それだけで物語は面白くなるが、『ブラックペアン』にはこの対立構造がたくさんある。
まず、東城大学と帝華大学が対立しているし、東城大学の佐伯教授と帝華大学の西崎教授は理事長選でも争っている。
西崎教授によって東城大学に送り込まれた高階講師と渡海征司郎は真逆のキャラクターであり、渡海自体、佐伯外科では浮いている。
さらに渡海から見ると、佐伯教授は父親の渡海一郎を大学病院から追いやった人物であり、ここにも対立がある。
看護師の猫田は渡海に協力的な立場で、それゆえ、渡海と敵対する人物とは猫田も敵対するという新たな敵対構造も生まれる。
応用するときの注意点
あちこちに対立構造があるのは、大勢がいっぺんに戦うプロレスのバトルロイヤルのようなもの。誰が主役かわからなくなるリスクがあるので注意が必要。
東城大学と帝華大学の対立を描くときも、必ずそこに主人公の渡海を絡める。主人公抜きに話が進まないよう仕組む必要がある。
※本記事は2018年8月号に掲載した記事を再掲載したものです。