【書きたい気持ちはあるけど……】これを読めば万事解決! きっとあなたも書けるようになる創作術Q&A


書きたいけど書けないあなたに 創作Q&A
いいドラマに学び、さあ小説に生かすぞとなったときに、そのまま生かせるテクニックと、そのままは生かせないテクニックがあったりする。ここでは創作に関する疑問も含め、Q&A形式で創作術を解説しよう。
Q.どんなドラマを観ればいい?
A.小説を書くためにドラマを観るのであれば、ストーリー性のあるものがいい。ジャンルは問わないが、幅広く観たい。好きなものばかりというのも専門性が高まっていいが、好みが偏りがち。好きでない分野だが、観てみたら意外と発見があったということも。とはいえ、観たくないものを無理に観てもつらいので、まずは楽しんで観よう。
Q.展開を学ぶための観方はある?
A.ドラマを観ていると、「この先、どうなるんだ」という展開になることがある。そのとき、楽しんで待つのもいいが、「自分が作者だったらどうするか」という目で観るといい。生で観ている場合、考える時間は1分もないかもしれないが、「どうしたら解決するか」「どう解決したら面白いか」と考えると発想のトレーニングに。
Q.小説を書くのが面倒になるが?
A.映像に比べると文字は進行が遅い。映像なら室内の描写も3秒で済むが、文字では何百字かはかかり、話がなかなか進まない気になる。映像が「自動で進む動く歩道」なら、文字は自力でぬかるみを歩くがごとし。小説を書く場合は、映像での進行の早さを忘れ、小説の時間に身を委ねる。文字は1文字1文字しか進まないと覚悟して書くこと。
Q.小説でやりにくいことはある?
A.映像には複数のカメラがあり、同じ場面を数台のカメラで撮ることもある。室外のカメラから室内のカメラに切り替わることもある。文字ではカメラの切り替えがあったことを示しにくいので、こういう芸当はまねしないほうがいい。安易にやれば目まぐるしくて落ち着かない。2つの場面を交互に映すカットバックも文章ではやりにくい。
Q.人間を書くとはどういうこと?
A.「人間を書く」というのは、もともとは純文学で言われていた言葉で、とくに自然主義とこれを継承した白樺派は「ありのまま」に書いたので、血の通わないような類型的な人物を安易に登場させると、「人間が書けていない」となった。
つまり、「ありのままの人間ではない。作りものだ」と思われたとき、「人間が書けていない」と言われたりするのだが、それでは「ありのまま」とはどういうものか。
それは、「こういう場合は、人は普通、こんなリアクションを示すのではないか」を書いたもの。
と、言うのは簡単だが、現実的には1つのケースでもいろいろな正解があり得る。たとえば、急に恋人に振られたとき、相手はどんなリアクションをするか。泣くか、黙るか、怒るか、平気なふりをするか。
これは人物の性格と状況による。人物が100人いれば100通りの答えがあり得るし、同じ人物でも状況が変わればリアクションも変わる。
そうなるとどれが正解かわからなくなるが、どれが正解かを考えた末の結論なら問題ない。「恋人に振られたんだから普通泣くだろ」と安易に考えると、だいたい不自然になる。
Q.すぐに応用できるドラマの技術は?
A.よくあるもので言えば、「はずし」というのがある。最終電車で帰る恋人を追って駅に向かうが、駅に着いたときはもう電車は発車したあとで、「間に合わなかった」と肩を落とすと、柱の陰から恋人が現れたりするのがそう。
また、2人の人物の前にもう1人現れ、「父です」と紹介させることで関係を示す「三角法」というのもある。
Q.謎さえあれば引きつけられる?
A.「この先どうなるのか」といった謎で引っ張っていくのは物語の定番の手法だが、問いだけがあって答えがないというのはストレスにもなる。初心者はよく謎だらけにしてしまうことが多いが、謎でためを作っては適度に明かすことが重要。または、明かさないのであれば、キャラクターや展開で面白さを担保しないと読者は離れる。
Q.悪役や敵役を設定するときの注意点は?
A.勧善懲悪という物語がある。典型的な例が昔話の『桃太郎』だが、悪役が最後に罰を受ける場合は、罰を受けても仕方がないと思えるように悪人らしく設定しておく。そうしないと、「罰を受けてかわいそう」となって話が成立しない。
しかし、単に敵対しているだけの場合は、敵にも敵の正しさを与えたい。NHK朝の連続ドラマ『半分、青い。』で、鈴すず愛め が清さやとけんかする場面があるが、鈴愛は律の幼なじみだからずっと一緒にいたい。一方、律の恋人の清からすれば自分の知らない昔の話をされるのは疎外感があっていら立つ。どちらにも言い分があり、どちらも正しい。そうするほうが葛藤があり、話も深まる。
お勧めできないのは、現実の恨みを小説の中で晴らそうとし、自分をいじめた人を悪人にするパターン。悪役でも愛すべき悪役でないといいキャラクターにはなりにくい。
Q.構成の見本としてドラマを観るには?
A.ドラマの構成法に3幕構成がある。連続ドラマの1話60分(実質45分)ではわかりにくいが、意識して観るとポイントとなるところがわかる。
第1幕
全体の1/4。
〈セットアップ〉 導入部。先が観たくなるようなインパクトのあるものが多いが、その中で、いつ、どこで、誰が、何をといったこと、出来事のきっかけ、主人公の目的が示される。
〈第1ターニングポイント〉 第1幕の終わりに大きな出来事があり、主人公を次の行動に移させる。
第2幕
全体の1/2。話が展開する(展開とは、それまでとは状況や場所が変わること)。
〈ミッドポイント〉 第2幕の真ん中(2時間ドラマなら1時間が過ぎたあたり)に大きな出来事があり、ここから結末に向かう。
〈第2ターニングポイント〉 第2幕の終わりに大きな出来事があり、いよいよクライマックスに向かう。主人公を次の行動に移させる。
第3幕
全体の1/4。クライマックスがあり、結末を迎える。
3つの不自然なケース
CASE1 非科学的
1年間、飲まず食わずで生き埋めになっていて、運よく生きていたと言われても納得できない。すべて科学的でなくてもいいし、科学的な説明があればいいわけでもないが、何が科学的かを理解し、読者をきちんと納得させてほしい。
CASE2 偶然に頼りすぎ
「歩いていたら、偶然出会って」「たまたまポケットの中にあった」「運よく電車が来て」など、いろいろな可能性がある中で、よくそんな偶然が起きるものだという設定。伏線を張るなどして、より自然に話をつないでいきたい。
CASE3 そんなにうまくいく?
「好きな人と付き合うことができた」「頑張った結果、ホームランを打てた」など、ハッピーエンドによくある。現実世界はうまくいかないことのほうが多く、うまくいかせるならそう思わせる伏線がたくさん必要になる。
殺人事件の心理学
ミステリーでは、「フーダニット」「ハウダニット」「ホワイダニット」の3つがある。日本語で言えば「誰がやったのか」「どうやったのか」「なぜやったのか」だ。「誰がやったか」と「どうやったか」は事件を解決するうえで当然明かすことだが、「なぜやったか」には人間の心理がかかわってくる。
つまり、「恨んでいたから」「悔しかったから」といったことだが、それなりの理由がないと、そんなことで人を殺すかなあと言われかねない。
心理学は必要ないが、人間の心理に裏打ちされた動機があると深くなる。
クラブ雑誌とご都合主義
戦前から戦後にかけて、娯楽読み物雑誌が何誌もあり、誌名に「倶楽部」とつく雑誌が多かったので「クラブ雑誌」と言われた。高度のエンタメ小説もあったが、大半は読み捨てられる娯楽読み物だったようだ。
文芸評論家の百目鬼恭三郎によると、クラブ雑誌とは「読者に頭を使わせずに、低俗な欲求を満たすことだけが要求され、従って文章は下品でなければならず、登場人物は紋切り型で、月並みな行動パターンと、必然性のないご都合主義の筋書きに乗って書くのが特徴」だそうだ。
端的に言えば、男女が出会えばすぐ濡れ場というもので、読者もそうした痛快さを求めていたわけだが、今、エンタメ小説を書くのであれば「下品、紋切り、月並み、ご都合主義」は排除しないといけない。
※本記事は2018年8月号に掲載した記事を再掲載したものです。