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【主人公を困らせろ】面白い物語が生まれるシナリオ発想法&感情移入される脚本の作り方

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前回に引き続き、シナリオ・センターの講師・浅田直亮先生インタビューをお届け!

まず職業と性格を決めることが大事

——キャラクターとストーリーはどっちを先に作ればいいですか。

私はまずキャラクターを作ったほうがいいと考えています。ストーリーを先に作ると、そこにキャラクターをあてはめて個性を際立たせるのって技術的にはすごく難しいんです。だいたいストーリーに合わせてキャラクターを動かしてしまうんで、無個性化する。どんなことも言いそうだし、どんなこともしそうな、ストーリーに合わせやすい無個性なキャラクターになる。初心者の頃は場面場面でころころ人が変わるんですが、そのうちにこれでは不自然だと気づき、そこで陥っていくのが無個性ということなんですね。

内館牧子さんも言っていますが、先にストーリーを作って、そこに人物をはめ込んじゃうからセリフがいきいきしないんだと。そこで、私は「先にキャラクターを作っちゃいなよ」とお勧めしています。

——白紙の状態でキャラクターを作るって難しくないですか。

皆さんそう言いますが、いやいや、それなら白紙の状態でストーリーを作っている。お話だって無数の可能性がある中で作っている。人一人作るのがなんでそんなに難しいのかと思っちゃいますが、要は慣れ。ストーリーを作るほうは慣れているんです。

——とっかかりが欲しいです。

まず、具体的な職業を考えることです。警察官なら警察官と決めて、それならどんな性格がいいかなと考えていく。

——人物の履歴を作る?

それは性格を考えたあとです。最初に履歴を考えて、「そろばんを習っていた」のように設定すると、キャラクターがバラバラになります。まず、「まじめすぎる」のように性格を決め、「まじめすぎる性格だから、今もそろばんをやっているだろうな」というように性格と関連づけて考えていく。そうすればブレないんです。

「すぎる」とすると個性が際立つ

——主人公の職業を考えるとき、たとえば「裁判官」と設定しても、普通の人は詳しく書けません。

裁判ものをやりたいなら、徹底して裁判のことを調べるしかないですよね。裁判官が出てくる映画を観てみる、小説を読んでみる、書籍を読む、ネットでくまなく見る……。ただ、職業設定が裁判官というだけで、それでホームドラマを書くのであれば、そんなに詳しく知らなくても書けます。

一番いいのは、自分の身のまわりにいる人の職業にする。自分が生活する中でよく見る、よく会うような職業の人ですね。自分の知り合いに面白い職業の人がいれば話も聞きやすいし、だいたいどんな職業なのかも知っている。

——ごく普通の職業、たとえば主婦を主人公として面白くする方法はありますか。

ごく普通とおっしゃいましたが、ごく普通という人は一人もいませんよ。みんな個性がある。ご自身では自分のことをごく普通だと思ってらっしゃいます?

——はい、ごく普通です。

雑誌の編集をされていますよね。趣味はありますか。よく山に行かれますか。お酒は飲みます? ウィスキー派ですか。ウィスキーと山が好きな雑誌編集者。ほら、個性があるじゃないですか。

——いや、普通ですよ。

そのときにコツがあって、個性を際立たせるんですね。「山が好きすぎる雑誌編集者」「ウィスキーが好きすぎる雑誌編集者」としてはどうですか。

——なるほど。なんだかキャラクターが立ってきました。

先ほど主婦が出てきましたが、前職と夫の職業でも個性を持たせられます。以前、『スキャンダル』というドラマがあり、登場する女性4人は主婦ですが、1人は元キャビンアテンダントで夫が広告代理店勤務、1人は秘書で夫は弁護士、1人は元銀行員で夫は財務省の役人、1人は元モデルで夫が整形外科医。というふうに考えると個性を持たせられますよね。

まわりにいる友達を考えても、1人1人違いますよね。

——彼は気遣いができる、彼はきっぷがいいなどいろいろですね。

それを際立たせればいいんです。「気遣いができすぎる」「きっぷがよすぎる」のように、「すぎる」をつけるのがコツです。

主人公が困るように設定する

——話を面白くするコツは?

主人公を困らせることです。うまくいくようにうまくいくように書いてしまう人が多いのですが、うまくいかないようにうまくいかないように書かないと面白くなりません。主人公をとことん困らせる、もっともっと困らせる。

よくないのは、大したことない困らせ方をさせてしまうこと。つまり、自分で解決できそうな範囲で発想してしまうこと。それだと先が見えてしまうし、「こうすれば解決する」とわかってしまう。

——主人公が困れば困るほど、それを解決させるのが難しくなります。そういうときはどうすれば?

一番いいのは解決しないこと。解決しようとすると面白くならない。むしろ解決させない。もっと悪くする。もちろん、殺人事件のような場合は逆算して解決法を用意しておきますが、そうでない場合は解決しなくていい。

——もう少し小さな問題というか、たとえば試合前にユニフォームがないという困らせ方をした場合はどうでしょう。解決させないわけにはいかないですよね。

それは形だけの問題で、ユニフォームがないということは、誰が隠したのか、なんのために隠したのかという問題がある。ドラマって人間関係なんで、人間と人間をぶつけ合わないといけない。ユニフォームが見つかることは大きな問題ではないんです。

葛藤させると感情移入しやすい

——ドラマにはよく「対立」が描かれますが?

それも主人公を困らせるためですね。登場人物は主人公を困らせるために登場すると言ってもいい。

——「主人公を葛藤させる」というのもありますが、たとえば、自販機の前で何にしようか迷うというのも葛藤になりますか。

缶酎ハイを飲みたい。でもγーGTPが高い。ウーロン茶にしよう。こうなるとちょっと話が大きくなりません? 健康か、欲望か。その場の幸せか、長く続く幸せか。単純に迷わせるのでもいいですが、ちょっと大きくしたり、迷いの根源ってなんだろうと考える。洋服で迷っている場合も、自分が着たい服なのか、人が見たらどう思うかを考えているのか、どういう迷いなのかと考えていくと葛藤になります。このキャラクターだったらどういう揺れ動きになるのかということですよね。

——葛藤はなぜ必要なんですか。

葛藤させたほうが感情移入できるからです。困らせるのも同じですが、困っているのを見ると、どうするんだろうと思うんですね。

——最後にセリフについてお聞きしたいと思います。

「セリフはうそつき」と言います。やることと言うことが違う、思っていることと違うことを言う。遊びに行くと言って、そのまま遊びに行ったら面白くないですよね。

ただ、セリフだけ考えるととってつけたような不自然なセリフになる。セリフもキャラクター次第なんですね。普通の人が「倍返しだ」と言ったら不自然ですよね。セリフはストーリーからは生まれません。キャラクターから生まれるんですね。

知っておきたいエンタメの技巧

省略

人は「場面」と「場面」を関係で観ている。ある場面で「家の中にいた人」が、次の場面で「玄関から出てきた」ら、途中は書かなくてもわかる。これが省略。

省略すると話が早く進んだようで小気味よいが、笑いや意外性につなげることもできる。

たとえば、真冬に競馬に行こうとしている人物がいて、しかし、お金がない。そこで着ているコートを質屋に預けることにする。もうかればコートなど2着も3着も買えるとうそぶく。ところが、次の場面では裸で震えている。間に何があったかは明白。

シャレード

シャレードというのは、間接表現と言われる。直接的に表現せず、モノや小道具などに言わせる。ある村があり、そこを訪れた人物が「なんだかやばそうな村だ」と言えば直接的だが、ふいに現れた犬が人間の腕をくわえていたら、感覚的にやばさを示せる。

あるいは、出産間近の女性がいて、赤ちゃんの服を編んでいる。それがどんどん完成に近づけば時間の経過が示せ、また、その女性の叫び声と救急車のサイレンの音が響いたあとの場面で、編み棒が折られ、服も捨てられていたら、何ごとかがあったことが察せられる。

倒叙

結果を先に示してから、実はこんなことがあったと時間を巻き戻す方法。回想で説明する場合もある。

たとえば、母親は下の子どもの参観日に出かけたが、次の場面では怒った顔をして家にいる。そこに帰宅してきた高校生のお兄ちゃんが、「あれ、参観日は?」と言うと、母親は無言で紙を差し出す。そこには先週の今日の日付が書かれていて、「あいつ、参観日に来てほしくないからうそをついたのよ」。

というようにするとメリハリがつき、観ているほうも「え?」「なるほど」と思う。

シナリオを学ぶメリット

シナリオは映像のための台本。そこに映像にならないことは書かれないし、脚本家は映像化された場面を頭に思い浮かべながら書く。小説を書くときも似たようなことをするが、小説の場合、映像が浮かばない文章を書いても成り立つと言えば成り立つ。それを意識的にやっているのなら別だが、言語脳ばかりが発達してしまった人が無意識にやっている場合もある。そういう人はシナリオを書くとイメージ脳が鍛えられる。

浅田直亮
早稲田大学卒。93年、『八丁堀捕物ばなし』シリーズで脚本家デビュー。著書に『いきなりドラマを面白くするシナリオ錬金術』『シナリオ・パラダイス 人気ドラマが教えてくれるシナリオの書き方』などがある。

※本記事は2018年8月号に掲載した記事を再掲載したものです。