公募Q&A「受賞」 受賞したら出版社に面倒を見てもらえる?
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受賞して作品が書籍化されたら、その出版社に面倒を見てもらえるのでしょうか。
売るためのサポートは全力でしてくれますが、甘い期待はしないでください。
編集者は作家を全力でサポートする
まず、主催者側に“面倒を見る能力”があるかどうかが問題になります。
作家を育成する場、つまり、文芸誌や小説誌を持っていない出版社では、面倒の見ようがないとも言えます。ですので、ここではそうした主催者は除外します。
書籍化したのが、大手出版社が主催する文学賞だと仮定しましょう。
書籍化したということは、受賞したか、最終選考までいった作品ということですね。
作家に対して、出版社は多大なアシストをしてくれます。
よく「二人三脚で」と言いますが、編集者は伴走するようにしてサポートしてくれます。
人間関係が密になっている作家と編集者であれば、呑みながら雑談しながら、その中で次作の内容を詰めたりし、作家はそこで着想を得たりします。
そして、「この題材で行こう」となったら、編集者は資料を集めてくれる場合もありますし、取材の手配をしてくれることもあります。
よく作家の方が「編集の○○さんがいなかったら書けない」と言うのを聞きますが、編集者はそれぐらいの存在、強い味方です。
書かなければ始まらない
でも、勘違いしないでください。
編集者は、慈善事業でやっているわけではありませんし、ただの親切でやっているわけでもありません。学校でも親でもありません。誰にでもなんでもしてくれるわけではありません。
自分は何もせず、「誰か才能を開花させてくれないかな」というのは甘すぎます。
編集者は才能を発掘はしますが、開花させるのは自分です。
他力本願の人に、世間はものすごく冷たいのです。
受賞したら、編集者は「さて、次は何を書きましょうか」と言ってきます。
発注されたわけですね。
それで納期になっても作品が届かなかったら、どうなるでしょうか。
これが出前だったら怒りますよね。
店のことを心配し、「なんだ、作れないのか、一緒に考えよう」とはなりません。
その店にはもう注文しません。別の店にします。
作家の場合も同じだと思ってください。そんな甘い世界ではないです。
やり直しはいくらでもきく
とはいえ、せっかく発掘した受賞者ですから、編集者もなんとかしようとはします。なんとかというのは、まずは対話ですね。
「何が書きたいの?」と聞かれると思います。それがなかったら困りますが、それでも編集者はあなたとの話し合いの中から、あなたが書くべきものを探り、「だったらそれを書けば?」とか、「ある作家はこの方法でスランプを克服したよ」といった助言をしてくれると思います。
でも、それ以上は期待できないです。誰かのサポートだけで2作目を書いてもまた3作目で困りますし、手取り足取り面倒をみてもらうことは得になりません。それより「自分で這い上がってこい」と檄を入れてくれるほうが親切かもしれません。
では、書けなかったらどうなるかですが、一応縁ができていますので、受賞後3年ぐらいは「やっと書けました」と言って連絡すれば、原稿を見てくれると思います。
それ以上は? 編集者も異動になってしまいますし、ちょっと厳しいかもしれません。
しかし、ある作家は、仕方なく受賞経験者として別の出版社に持ち込みをし、関係を作り直して今に至っています。また、別のある作家は、一応募者に戻り、別の文学賞(プロ・アマ不問の賞)で受賞し直し、見事再起を果たしました。やり直しはいくらでもできるのです。