大阪関西万博2025イタリアパビリオン「サルデーニャ州」週間 (2)イベントレポート報告
2025年6月22日(日)~28日(土)開催大阪関西万博2025イタリアパビリオン

サルデーニャ州ウィークが大阪・関西万博イタリア館で開幕
2025年6月22日(日)、大阪・関西万博のイタリア館にて、「サルデーニャ州ウィーク」が開幕した。午前10時30分、サルデーニャの伝統楽器「ラウネッダス」と「オルガネット」の音色に包まれるなか、大阪関西万博・イタリア政府代表のマリオ・ヴァッターニ大使と、サルデーニャ州観光・工芸・商業担当評議員のフランコ・クックレッドゥ氏によってテープカットが行われ、イベントの幕が正式に開かれた。その後、クックレッドゥ氏はヴァッターニ氏の案内でイタリア館を視察。ヴァッターニ氏は、「イタリア館では、イタリアの『今』と『過去』を紹介しています。イタリアは『時代を超える国』であり、『過去と現在の調和』の象徴なのです。」と説明した。クックレッドゥ氏は続けて、「この一週間を通じて、伝統を守りながら未来を見据える『現在のサルデーニャ』を、職人たちの手を通して伝えていきたいと考えています。」と述べた。
●「カルラ・デヌーレ」コンサート
2025年6月22日(日)午後6時からは、イタリア館シアターにて、サルデーニャを代表する歌手カルラ・デヌーレによるパフォーマンスが開催された。打楽器はブルーノ・ピッチンヌ氏、ギターとピアノはマルコ・ピラス氏が担当。さらに、伝統楽器を奏でるデュオ「ファンタ・フォルク」から、オルガネット担当のバンニ・マサラ氏と、ラウネッダス奏者のアンドレア・ピズ氏もスペシャルゲストとして登場し、豪華なステージが繰り広げられた。
イタリア館のシアターは、サルデーニャの伝統音楽に包まれ、観客たちはまるで広大な大地を駆け抜け、波のきらめく海を渡り、丘を吹き抜ける風に身をまかせ、港から村の祭りまでを巡る旅をしているかのような感覚に浸った。
ステージのラストには、カルラが大阪万博のために書き下ろした新曲「ムンドゥ・イン・トゥンドゥ(世界で回ろう)」が披露された。伝統楽器と弦楽器による伴奏に加え、サルデーニャ語によるラップという斬新な要素が取り入れられ、伝統と現代の見事な融合を体現する作品となった。歌詞はすべてサルデーニャ語であったが、そのリズミカルで抑揚のある響きは、日本の観客の心にも深く響いた。
「今回が初めての日本です。」と、カルラ氏は嬉しそうに語った。「言葉が通じない観客の前でサルデーニャ語の歌を披露するのは特別な体験でしたが、日本のお客さまはとても温かく、感受性が豊かで、音楽に深く入り込んでくださいました。本当に素晴らしい経験でした。自分の故郷を世界に伝える責任を感じているので、簡単なことではありませんが、光栄でした。」
●「ファンタ・フォルク」コンサート
6月23日(月)午後6時からは、同じくイタリア館シアターにて、「ファンタ・フォルク」のバンニ・マサラ氏とアンドレア・ピズ氏がステージに登場。ラウネッダスは約3000年の歴史を持つ古代の管楽器、オルガネットは20世紀初頭にオーストリアからサルデーニャに伝わった小型アコーディオンで、現在も日常生活に根づいている楽器である。「ファンタ・フォルク」は、伝統音楽の枠組みを大切にしながらも、即興演奏を取り入れるなど、ジャズを思わせる自由な表現が特徴の、ユニークなスタイルで知られている。更には、カバー曲を演奏するなど、伝統音楽に馴染みのない観客にも親しまれており、ブラジル、アルゼンチン、チリ、タイなど世界各地で人気を博している。2023年には東京のイタリア文化会館でも公演を行い、聴衆を魅了した。この日のコンサートは、伝統的なレパートリーから始まった。観客の中には思わず手拍子を打ったり体を揺らしたりする人も多く、サルデーニャ出身の観客が口ずさむ姿も見られた。ある女性は、「これ、私踊れるのよ。」とつぶやいていたほどだ。
その後、前日に共演したカルラ・デヌーレ氏、ブルーノ・ピッチンヌ氏、マルコ・ピラス氏らがゲストとして登場。カルラ氏の力強くも優しい歌声と楽器の音色が見事に調和し、会場全体が感動に包まれた。演奏後、バンニ・マサラ氏は「とても感動的で温かい時間でした。観客の皆さんが積極的に参加してくださったおかげで、心から演奏することができました。」とコメント。アンドレア・ピズも「日本でまた演奏できて光栄です。これから毎年、日本でコンサートができたら嬉しいです!」と語った。
●ワークショップ「Sardinia Meets Japan: Tourism B2B」
6月27日(月)14時からは、同じくイタリア館内オーディトリアムにて、イタリアと日本の観光業者を対象としたB2Bワークショップ「Sardinia Meets Japan: Tourism B2B Workshop」が開催された。本イベントには、サルデーニャのオルビアに本社を構え、カリアリにも支店を持つツアーオペレーター「Renata Travel」(レナータ・トラベル)が参加。同社は、インバウンド・アウトバウンド両方を手がけるDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)として、サルデーニャ全域はもちろん、コルシカ島、シチリア島、さらにはローマ、フィレンツェ、ミラノといった主要なイタリア都市を含む旅行プログラムを提供している。ワークショップでは、日本の観光関連企業の代表者たちがレナータ・トラベルと個別に面談し、サルデーニャの旅行商品や目的地に関する具体的な提案・情報を得ることができた。待機時間には、ヌラーゲ文明の遺跡群をバーチャル体験できる3Dゴーグルが用意され、好評を博した。約2時間半にわたるワークショップを通じて、日本市場における旅行ニーズが明確に浮かび上がった。特に、文化や食にフォーカスした旅行への関心が高く、日本語を話せるガイドや添乗員の存在が重視されていることが明らかとなった。また、羊飼いとのランチといった農村でのリアルな暮らしを体験できるプログラムにも強い関心が寄せられ、体験型アトラクションの重要性が再確認された。
●サルデーニャの職人達
18時からは、サルデーニャの職人たちの魅力を紹介するイベント「Sardinia: Island of Craftsmanship(サルデーニャ:クラフトの島)」が開催された。クックレッドゥ氏は、サルデーニャ週間で職人たちが来場者にどれほど感動を与えたかを語った。そして、サルデーニャ州代表として参加した10人の職人が次々に紹介された。
最初に紹介されたのは「織物」の職人たちであった。サルデーニャはイタリアで唯一、織物の伝統が今なお生き続けており、絨毯(タッペート)は単なる装飾品ではなく、サルデーニャのアイデンティティを象徴するものとして、今も家庭を彩っている。
マリアントニア・ウッル 「1981年に家族でこの会社を設立しました。私たちは“サルデーニャ人のアイデンティティを伝える役割”の重みを強く感じています」と、創業者マリアントニアの息子であるジュゼッペ氏は語った。「こうして息子たちと一緒に仕事を続けられて本当にうれしいです。正直なところ、みんな大学を卒業したら別の道に進むと思っていたので、思いがけないことでした。織物は伝統的に女性の仕事で、男性が携わるのは非常に珍しいのです。でも、うちの工房には昔から男の子もいてくれて…。この仕事は自分たちで生み出さないと、他からはやってこない。だから、希望を持ちたいですね。」とマリアントニア氏は話した。また日本での経験については「日本滞在を1週間延ばしてでも続けたいほど素晴らしい体験でした。」と語り、日本のデザイナーとのコラボレーションにも前向きな姿勢を示した。「サルデーニャと日本の文化の対話が生まれることを願っています。」と述べていた。
●エウジェニア・ピンナ
サルデーニャ週間で注目を集めたもう一人の職人がエウジェニア・ピンナ氏。彼女のブランドは、伝統工芸とコンテンポラリーデザインを融合させた独自のスタイルで知られています。エウジェニア氏は情熱を込めて語った。「子どもの頃に独学で織りを学びました。そして、40年にわたる研究と努力の末に、ようやく“手で作ることの価値”を真に理解し、その実績を築くことができました」しかし、少し寂しげな表情で、もうすぐ定年を迎えることを明かした。「今の若者たちは興味や好奇心は持っているものの、この仕事を本気のキャリアとして選ぶ人は少ないのです。だから、私には後継者がいません。」
これに対し、クックレッドゥ氏は「これまでは職人の世代交代が“親から子へ”という狭い範囲で考えられてきましたが、今後は親族だけでなく、職場で働く従業員や見習いにも支援の対象を広げていきます。伝統を守るためには、新しい道を取り入れることも必要です」と述べた。
●ロザウラ・サンナ ~ グルッポ・インテルノ
工房「グルッポ・インテルノ」の創設者であるロザウラ氏は、自身の芸術的な歩みを語り、彼女の陶芸作品がサルデーニャの壮大な風景体験や独自の視点から生まれていることを説明した。「私は陶芸家の家系に生まれたわけではなく、この芸術と偶然出会いました。伝統的なイメージだけにとらわれず、私たちの文化の動きや素材をヒントに、革新的な技術で表現しています。例えば、パン作りの伝統技法を真似て薄い生地を作るのですが、小麦粉の代わりに粘土を使っています。この挑戦的なアプローチは、若い陶芸家たちにも徐々に受け入れられています。」
ジュリアーナ・コッル
「私は陶芸家の家系に生まれ、幼い頃から叔父の工房を手伝いながら工芸の技術を学びました。インスピレーションはいつも、私の故郷サルデーニャの海や文化、そして伝統から得ています。それらを土を通して表現し、物語を語る作品を作り続けています。」大阪万博での体験については、観客の温かい反応に深く感動したと語った。「来てくれた子どもたちには、粘土で自由に遊んでもらいました。これは私が子どもの頃、叔父たちからしてもらったことと同じです。あの時の体験が今の私を作ったのだと思うと、それを子どもたちに返すことが、叔父たちへの恩返しだと感じています。土に触れることは、子どもたちにとってとても大切なことだと信じています。」
●マーナ・パッターダ
織物に続いて登場したのは、「コルテッレリア(鍛冶)」。これもまた非常に古い伝統です。 「パターダ」は羊飼いのための日常用具として生まれた、何世紀にもわたる伝統的なナイフです。現在はコレクターの間でも高い人気を誇っています。」こう語るのは、自ら独学で刃物作りを学んだ職人、マッシモ氏。「家族に刃物職人はいませんでした。21年前、ある時期の気まぐれから“面白そうだ”と思い、始めたのがきっかけで…そして今日、ここ大阪・万博の場に立っているのです。」
●アルブゼーラ・エーレディ・プシェッドゥ
「サルデーニャのナイフと、日本の包丁には深いつながりがあります。先日、大阪の有名な鍛冶職人の工房を訪れる機会に恵まれ、古来の技術を今なお守る姿に感動しました。」と語るのは、三代目のジュリア氏。「私の祖父は鍛冶職人で、その伝統は父へ、そして今、私の世代へと継がれています。」
●アンナ・ダルテ
伝統的なフィリグラーナ(銀線細工)を用いて作品を生み出すアンナ氏は、一方で常に新しい要素も取り入れている。「私は伝統を深く愛していますが、それだけでは十分ではないことに気づいたんです。時代に合わせて“若返らせる”必要があると感じました」と語る。イタリア館で披露されたネックレス『シャッレ・ジョイエッロ(宝石ショール)』は、まさにその精神を体現した作品だった。サルデーニャの伝統的なショールに見られる模様を、優雅かつ現代的なデザインで再解釈し、ジュエリーとして昇華させたものである。
●サンナ・ジョイエッリ
代表のフランチェスコ・カスタルドゥ氏が登壇し、挨拶した。「Konbanwa!サンゴの文化は、サルデーニャと日本の深いつながりを象徴しています。私たちはすでに何年も前から日本に輸出を行っており、東京や神戸の展示会にも出展しています。日本は、まるで“もう一つの我が家”のような存在です。今回、こうして大阪万博でご紹介いただけることを、本当に光栄に思います」と、自身の家族のエピソードを披露した。「私の父方の家族は1950年代にサルデーニャに移住し、そこで若き日の母と出会って恋に落ち、やがて会社を設立しました。ロマンチックでしょう?私は経済学を学びましたが、最終的には…やはり“サンゴは私のDNAに刻まれていた”ようで、この道を選ぶことにしました。」
●ズィラーヌ&バルヴィス
次に、サルデーニャの自然と深く結びついた「木工芸」の分野の紹介だ。クックレッドゥ氏は語った。「我々の島は、イタリア国内で最も多くの森林面積を誇ります。何十年もの間、木工職人たちは香り高く、耐久性に優れたジュニパー(ネズ)の木を最も多く使用してきました。この木は、我々の伝統の象徴なのです」
50年以上のキャリアを誇るフランチェスコ・バルヴィス氏は、当イベントに参加できなかったが、その作品とストーリーは来場者に強い印象を残した。伝統的な家具を現代的な感性で再構成し、素材と手仕事への敬意を損なうことなく、唯一無二の作品へと昇華させている。
スティレーニョ
創業者のアルフレード・アッスント氏は、穏やかな口調で短く語ったが、その笑顔がすべてを物語っていた。「4代続く職人の家系に生まれました。62歳になりますが、子どもの頃からこの仕事をしていて、47年になります。」
彼はパビリオンの展示スペースで実演を行い、細密に彫られた伝統家具の製作風景を披露した。観客はその技術に魅了され、積極的に質問を投げかけたという。「本当に素晴らしい体験でした。」と、アルフレード氏は満面の笑顔で語った。
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