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『僕は小説が書けない』すべての君へ3:物語を面白くする方法を知っておこう

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キャラ分けと対立構造

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「キャラがかぶる」という言い方がありますが、一つの物語の中には、同じ性格、特徴のキャラクターは二人は必要ありません。
もしも似たような人物がいた場合、それぞれ固有の性格を与えるか、与えられなければ一人にします。これをキャラ分けと言います。
『僕は小説が書けない』でも、文芸部の面々の嗜好は、SF小説、ライトノベル、歴史小説、BL小説、ホラー小説とそれぞれ違います。
また、登場人物たちの関係でいうと、対立(対照的・対比)といった要素があると面白くなります。
『僕は小説が書けない』では、文芸部と生徒会が対立し、OBの原田さんと御大は対照的な人物として登場します。
また、光太郎にとって原田さんは恋のライバルであり、原田さんの婚約者と七瀬も恋仇です。また、光太郎と弟の颯太にも対照的な性格づけがされています。

キャラクター造形のポイント

人物の履歴を作る

主要人物については、どんな環境で育ち、どんな経験を経てきたかプロフィールを持たせます。単に性格づけするだけでなく、その性格になった過去を持たせます。

プラスの性格には欠点を

読者が憧れるようなヒーローは魅力的ですが、それだけでは漫画です。欠点を持たせ、「私と同じ問題を抱えている」と思わせる。すると共感が持てます。

具体的に考える

「優しい」といった性格づけでは抽象的でイメージしにくいです。「他人に傘を貸して自分は濡れて風邪をひく」など、性格が絵になるように具体化します。

マイナスの人物には長所を

主人公がいればそれと敵対する敵役もいますが、ただの悪役というだけだと魅力的ではありません。悪役だけど一点長所を与える。すると人間くさくなります。

二面性を与える

「いじわる」という一面しか持っていないと類型的な人物になりがちです。「いじわるだけど、実は懐が大きい」とか、二つの面を待たせるのがポイントです。

脇役の人物造形

脇役や端役は主要人物ほど人物造形は必要ありませんが、他の人物と区別できるように、口調、服装、体型などに個性的で印象的な特徴を一点与えます。

物語の基本の型

物語に必要な要素を五つ挙げてみましょう。
まずは主人公。
これは当然ですね。主人公がいないと始まりません。
主人公は一人にします。刑事ものなどでは相棒(バディ)がいたりしますが、メインキャラクターは一人がいいです。
主人公が五人も六人もいる群像劇は、初心者のうちは難しいのでやめておきましょう。
主人公には、物語上の目的がないといけません。なんの目的もなく生きているという主人公もありですが、その場合は目的を探すということが物語上の目的(主人公が向かうべき到達点)になります。
『僕は小説が書けない』でいうと、「小説を書きあげる」というのが光太郎の目的です。
主人公は、なんらかの動機があって目的に向かいます。動機は自らが持っている場合と、誰かに与えられる場合とがあります。
誰かに与えられる場合、その人のことを任命者と言います。
任命者はいなくても成り立ちますが、たとえば目の前で事件が起きても、その人物には事件を解決する必然性がありませんので、そんなときは主人公を事件解決(目的)に向かわせる人物を登場させる。すると話が自然に運びます。
協力者は、主人公の目的実現を助ける人です。
『僕は小説が書けない』でいうと、小説の書き方について教えてくれる原田さんや御大、そして七瀬が協力者にあたります。
逆に障害は、主人公の目的実現を阻むものです。
障害は、ライバル、敵というように人物である場合もありますし、小説を書く力が不足しているという状況であったりもします。
こうした設定をし、そのうえで人物を対立させたり、必死にさせたり、葛藤させたりすると、話はいっそう面白くなります。

話がグーンと面白くなる条件

対立させる

物語にとって対立は不可欠な要素です。対立があると盛り上がります。たとえば、新田次郎『剣岳―点の記』もただ山に登るというだけでは盛り上がりませんが、初登頂
を目指すライバルを登場させたことで話が格段に面白くなりました。

必死にさせる

主人公の成長物語などでは、主人公が目的に向かって邁進したり、逆境にもめげずに奮闘努力したりすると面白くなります。また、事件に巻き込まれ、目的を達成し
ないと大変なことになるといった設定も話を盛り上げる要素です。

葛藤させる

「主人公は目的に向かい、敵はそれを阻む」という対立構造だけでは単純です。そこで「 目標を達成するだけではだめ」、「達成はしたいが、そうなると別のものを失う」というように主人公を葛藤させると面白くなります。

恋愛を盛り込む

必須の条件ではありませんが、恋愛には対立と葛藤が付きもの、盛り込みたい要素です。人物設定とも絡みますが、主人公と副主人公は異性とし、そこに恋愛のもつれを交えると盛り上がります。

超初心者向け独習方法

段階を踏む

マラソン選手になりたいとして、いきなり42.195㎞を走る人はいません。最初は自分に見合った距離から始め、徐々に距離を伸ばしていくはずです。
小説の場合も同じです。文章にも、書く体力というものがあって、書きなれない人がいきなり長編に挑戦しても無理があります。なんとか書き終えたとしても、中身はぐずぐずだったりします。
書きなれない方は、原稿用紙で3枚〜5枚ぐらいから始めてみましょう。それが難なく書けるなら10枚、それもクリアできたら20枚、さらに40〜50枚と増やしていき、その倍の80〜100枚までいけばいよいよ新人文学賞に応募することができます。
100枚までいければ、あとは楽で、同じように起承転結を繰り返せば200枚でも300枚でも書けます。
ただ、原稿用紙で100枚書くというのは、ただ100枚を埋めることではありません。100枚全体が把握でき、100枚を何十回と読み返すことが難なくできるということです。
それができないうちは、焦らずに100枚で練習しましょう。

あとは書くしかない

小説の練習は二通りあります。
一つは、読むこと。
ただし、自分でも書く意識をもって読む。作品を一つの教科書だと思って読まないとあまり効果がありません。
もう一つは、書くこと。
自分に合った枚数を選び、着想を得たら、どんどん書いていく。毎週一編とか毎月一編のように決め、必ず書く。それをずっと続けていきます。
着想やテーマについては、「1日1ストーリー」という方法があります。これは必ず毎日1話、簡単なあらすじを書いていくという方法です。
小説になるネタはそんなにないと思うかもしれませんが、1日一つはあらすじを考えなければならないとなれば、仕事をしていても家事をしていても、何かないかと探してしまうもので、そうなると(大ネタか小ネタかはともかく)、意外と見つかるものです。
あるいは、見つけたのはささいな題材でも、「もしもこれが○○だったら」「これをあれに置きかえたら」と空想、妄想しているうちに膨らんだりします。ぜひ試してみてください。

初心者の文学賞選び

 どの賞に応募しようかと思ったとき、最初にチェックするのは規定枚数と締切です。
規定枚数が数百枚という長編の賞では、初心者にはハードルが高すぎますね。応募者にもよりますが、30枚以下の短編がちょうどいいでしょう。
次に締切。いくら枚数的には手頃でも、すでに締切間際ではどうにもなりません。できれば、「構想・執筆・推敲」の時間がとれる期間があるといいです。
必要な時間は人によりますが、30枚なら2〜3ヶ月は欲しいところです。
チェック項目で見逃がせないのが、小説のジャンルです。
ミステリー、ファンタジー、ホラー、SFなど特定のジャンルの小説賞の場合、そのジャンルであることは必須の条件になります。SFの賞なのにSFでない作品で応募しても入選しません。
上記の6賞は、定期開催の短編文学賞です。上段の3賞は題材や応募資格に条件があり、倍率は比較的低め。下段の3賞は賞金も高額で、応募数は千編を超えます。
初心者はまずはこのあたりから腕試ししてみるといいでしょう。

 

※本記事は「公募ガイド2015年1月号」の記事を再掲載したものです。