【地図井式】忙しくても7万字書く!(2)メンタルトレーニング的執筆ライフ 4/4
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執筆レベルも上がる、書く私たちにあった思考法
自分を科学して失敗を因数分解し、自分の特性や状態を知ろうとする態度は、執筆にも役に立ちます。
執筆に生かす思考方法①:キャラクター造形に活かす
作品を読んでいて、自分がどう感じたのか、なぜこう思ったのかなどを捉える時、その感情と一緒に、キャラクターの性格・個性・背景といった「特性」に加えて、その時どういう「状態」だったかを考えます。この考え方を自分自身にも周りの人間にも適用すると、キャラクターの動きがよりリアルになります。
また、このキャラクターのどの悩みのパーツを解決したら読者にカタルシスが生まれるかなど、パーツに分けて物事を捉える因数分解グセは、メンタルトレーニングと同様に日頃の考え方の癖付けとしてはとても価値があります。文章を書いている私たちだからこそきっと得意な分野で、かつ興味を持てる思考法ではないかなと思います。
執筆に生かす思考方法②:「落選」に落ち込まず、プロジェクトとして解決する
また、事象をパーツに分けて因数分解する癖をつけると、「落選」にも強くなります。
「落選」をくらうとたとえ自信作でなかったとしても執筆モチベーションに多大に影響を与えます。ですが「落選」というプロジェクト失敗はたくさんの要素があり、どんな課題があり何はクリアできたのか、それをパーツに分けることで確実に自分が進んでいる実感と今後のモチベーションを保つことができます。
「落選」という失敗に見える大きな世界を、まず「コントロールできなかったもの」と「コントロール可能だったもの」に分けます。
・コントロールできなかったもの
コントロールできないものは、自分ではどうしようもないもの例えば、天気、交通、突然の不幸などが思いつきますが、ほかの応募者の作品の状況や選考の進み方など、自分でコントロールの方法がわからないものはまず自分の責任を負わない範囲なので悩んでも考えてもどうしようもできません。自分が責任を負わないものとして諦めます。私は気持ちを目で見えるように言語化すると非常に落ち着く特性があるので、コントロールできないことで悔やまれることを思いついたら、その都度付箋に書いて物理的にゴミ箱に捨てます。基本的に他人のことや時代や周囲のことはここで捨てられます。
・コントロール可能だったもの
コントロールできなかったものを全て捨てると残るのは「コントロール可能だったもの」の部分で、これはほとんどが「自分」でできる範囲のことです。応募した作品の時間的な計画、作品の内容、応募先のニーズの把握など、自分で把握できて、自分で学んで作ってきた部分は子細に振り返り、何ができて何ができなかったかを細分化します。
例えば締め切りまでのスケジュールと執筆時間をとることができて、だいぶ「時間的な計画」はうまく進んだように見えたけれども、「作品の内容」について、自分がヨシと思ったものを書いたが、客観性が欠けていた可能性があったので、「時間的な計画」にやはり課題があり、複数の読者に事前に見せて修正するだけの時間を持つべきだった、ということや、この描写については勉強が足りなかったことに書き始めて気が付いたけど締め切りまでの時間にほかの仕事も入りできなかった、など具体的に振り返ると自分の工夫で対処できることやコントロール可能なこともたくさん見えてきます。
対処不可能なものは向き合ってもしょうがないのであきらめる、対処できることを全てやる、というスタンスで進めると、次はこうやる、のエネルギーが対処した項目に従って増えてきて、プロジェクト進行の力になります。きっとそうなると信じて進む、最後、これだけは信仰に近いでしょうか。イメージできることは全て実現できるという信仰です。
メンタルトレーニングの分野はとても広く、音楽や具体的な訓練方法、もちろんトレーナーを介したものもありますが、執筆にも役立ちそうなものという観点で、「困難は因数分解する」という手法について紹介しました。
脳の研究や人体の科学の進化に伴ってこの分野の発展は目覚ましいので、今自分のやわらかメンタルに悩むひとこそ伸びしろだらけで、自分のメンタルをどうにかコントロールしようと自分で自分を科学することで何段階も覚醒できる可能性があります。立ち止まったらへこみながら悩みながらも、とりあえず冷静に分解してみて、自分というホモサピエンスを研究対象に向き合い、作家としての自分の最高のメンタルトレーナーになれるよう、書きながら一緒に研究していきましょう。
元バリキャリOLシングルマザーのアラフォーライター。 最近は美術館のボランティアをしていて、社畜根性を発揮して週5で入ってしまっていましたが、我に返り公募生活をしています。