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【児童文庫作家の第一歩】今の子どもって何を考えてるの? “小学生のリアル”から始める物語設計

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児童文庫小説賞攻略法 PART1 「小学生」を知ろう!

読み手のことを知らずに小説は書けない。児童文庫の主な読者である小学生について、インタビューや統計を通じて想像力を働かせてみよう。

今の子どもを想像しよう

子どもたちの生活や気持ちを想像してみよう。

大人が子どもに何かを教えるための読み物の場合は、読みやすい文章と教訓さえあればいい。しかし、児童文庫は「子ども自身が選ぶ」小説、自分で面白いと感じて読むものだ。だから子どもたちに共感されるかどうかが重要。

児童文庫の読者は小学生から中学生と幅広いが、その中で特に多いのは小学校高学年だ。年齢でいうと10〜12歳あたり。そんな年代の子どもたちに届く物語を書くために、まずは子どもたちのことを知る必要がある。自分が10歳のときとは変わっているはず。「今」の子どもたちは何に関心があって、何が好きで、どんなことに悩んでいるのか。子どもたちの側に立った物語を書くために、子どもの心を想像しながら書こう。

最初に思いつくのはインターネットや電子機器の普及だろう。小学生のスマートフォン所有率はこの数年で一気に伸びている。YouTubeやゲームの人気も著しい。それらをそのまま題材にすることはなくとも、「小学生が公衆電話から電話をかけていたらちょっと変かも」「会話の中にゲームが出てくるのは普通」などの感覚をつかもう。

また、身近に子どものいない人は、売れている児童文庫小説を読んで分析するのもおすすめ。

12歳に聞いてみた

石田凛音さん
2008年生まれの中学1年生。女優として活躍中。本好きで児童文庫とライトノベルが特に好き。

「今時の小中学生は本を読まないのでは?」と質問してみたところ、こんな答えが返ってきた。

「学校では朝読の時間に読むし、家に帰ってからもけっこう読みます。休み時間にTikTokで遊んだり、家でYouTubeを見たりもするけど、本のほうが面白いな〜って思うことも多いです。特に好きなのはキュンキュンする小説です。友だちとも読んだ本についてはよくお喋りします。最近は加藤シゲアキさんの本を勧められました」

また、今は学校では『なぜ僕らは働くのか』(学研プラス)を読み、家では大好きな恋愛小説と読みわけをしている。理由は、「学校で読んで泣いちゃったら恥ずかしいから」とのこと。等身大の感情を描いたものはやはり人気だ。

お気に入りの児童文庫

『夜カフェ』 倉橋燿子(講談社青い鳥文庫・680 円+税)
いろんな登場人物が出てきて、それぞれに思いがあって、特に主人公と友だちの女の子の友情が好きです。

『作家になりたい!』 小林深雪(講談社青い鳥文庫・680 円+税)
主人公の恋愛模様にきゅんきゅんするし、文章の書き方も実際に役に立つものばかりなので新刊がでるたびに買っています!

時代が変化しても不変の面白さを

子どもたちの生活が日々変化していることは事実だ。しかし、読んで「面白い」と感じるものはいつの時代も変わらない。そのため、子どもたちを想像するのと同時に重要なのが、自分が子どもの頃を思い出すこと。

現代っ子の生活スタイルに合わせた物語は共感のために大切だが、それだけでは本当に面白い物語は書けない。自分が子どもの頃を思い出して、大好きだったものや心を揺さぶられたものを思い出そう。それが面白さの核になるはず

子どもたちのため芯のある物語を書きたい

現在はライターをしている林さん。小説を書き始めたのは結婚して転勤族になった10年前で、文章スクールなどで書き方を学んだ。「始めたころは5枚がやっと書けたという感じだったんですけど、今は100枚に手が届きそうです」

児童小説に挑戦し始めたのは昨年の夏。それまでは一般文芸を基本に書いており「女による女のためのR‐18文学賞」などに挑戦していた。

そんな林さんの転機となったのが2人の子どもの存在。転勤族のため転校が多く、コロナによる休校なども重なり子どもたちが学校生活に悩むように。

「子どもたちが明るくなれる小説を書きたいなと思うようになりました」

ちょうどそのころに親子で読んだのがミヒャエル・エンデの『モモ』だった。

「40年以上前に書かれた話なのに、全然古くなくて面白かったんです。芯があって強くて、こんな小説を書きたい、子どもに届けたいと感じたのが決定的な出来事でした」

最近書き上げたのは、男の子2人がゲーム世界でプログラミングを駆使して冒険する話。子どもたちの様子を見ていて「人間関係に悩みがある子でも楽しめているプログラミングはいいお題になると思った」そう。でも課題もあった。

「私自身がゲームもプログラミングも詳しくないので、取材は欠かせないなと感じました」

書き上げたものは子どもにも読んでもらう。取材時に、「お母さんの小説どう?」と聞いてみると「どんどん読めるという感じではないけれど、ちゃんと読めば面白い」と冷静な感想を話してくれた。

思い出すときのポイント

なんとなく思い出すのではなく、子どもの頃の自分の気持ちを深掘りしてみよう。

❶ 10歳のときに大好きだった物語は?
❷ どこが好きだったのか言語化しよう。
❸ 逆に苦手だったものも考えてみよう。

 

林夏子さん
1978年生まれ。金沢大学法学部卒。法律関係のライターとして働いている。子どもは小学3年生と5年生。

※本記事は2021年4月号に掲載した記事を再掲載したものです。