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【青い鳥文庫編集長に聞いた!】児童文庫はエンタメ小説! 子どもたちが夢中になって楽しめる作品を

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童話・児童文学
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※掲載している情報は過去のものの場合があります。今年度の開催状況は、主催者サイトを随時ご確認ください。

人気作家ばかりの老舗 青い鳥文庫小説賞

2020年に創刊40周年 ロングヒットの宝庫

児童文庫レーベルと聞いて真っ先に思い浮かぶのは「青い鳥」という読者も多いのではないだろうか。書店でも子ども向けのコーナーには青い背表紙がたくさん並んでいる。

青い鳥文庫は2020年に創刊40年を迎えており、レーベルとしてはかなりの古株。創刊時は、子どもたち向けに世界の名作を集めて安価に販売することを目的としていた。そんな青い鳥文庫だが、小説賞をスタートさせたのは4年前。長い歴史のわりには日の浅い賞のようにみえる。田中利幸編集長によると、

「それまでは講談社児童文学新人賞が青い鳥文庫の新人発掘も兼ねていたが、もっとエンタメ色が強くて子どもたちを楽しませられる作品を作りたいと考えて創設した」

そのため、求めているのは今までの青い鳥文庫にはなかったような作品だ。累計数百万部を超える人気作も数多くある青い鳥文庫は、ほかのレーベルよりも「堅そう」というイメージを持たれやすいが、そんなことはない。自由な発想で、子どもたちを楽しませて心を豊かにさせる作品を書こう。

編集長に聞く! 青い鳥文庫編集長 田中利幸さん

あなたの手で新しい風を吹かせて

時代が変わってもずっと読書を楽しんでもらえるように、青い鳥文庫に新しい風を吹かせてくれるような書き手を求めています。

選考会では、編集者だけではなく小中学生や大学生も参加し、意見を出し合って選考を進めています。毎年500編以上の力作をいただいていますが、これから応募する方には「児童文庫はエンタメ小説だ」ということを念頭においてほしいです。児童「文学」は「子どもの抱える問題の描写が主題」ですが、児童「文庫」では悩みが描かれることはあっても「主題はエンタメ」です。ストーリーやキャラクターでも、今の子どもたちが夢中になって楽しめる面白い作品作りを意識してみてください。

また、面白い物語を書こうとするとつい子どもたちの流行を追ってしまいます。昨年で言えば「鬼退治風」の作品が多かった。それがダメではないですが、ライバルも多いですし、狙った感のある作品を子どもたちは見抜きます。あなた自身の思う「面白い」を書くのがいちばんです。

——求めている作品を一言で言うと?

たとえば恋愛ものや男の子向けなど、これまでの青い鳥文庫にはないような作品を求めています。勢いがあって面白い、そんな物語を!

青い鳥文庫小説賞の3つの特徴

審査委員は小中学生!?

「青い鳥文庫ファンクラブ」に所属している子どもたちが「ジュニア編集者」となって作品を審査する。編集長によると、子どもたちの意見をかなり参考にしているそう。子どもの目から読んで面白いかどうかがやはり大事だ。

受賞作は第2巻まで刊行

シリーズとして長く楽しんでもらうことを目的としているため、基本的に受賞作は第2巻までは刊行する。そのため、執筆するときには「この物語世界は広がっていけるか」を考えつつ進めるのがおすすめ。

U-15部門もあり!

第3回から新設されたU-15部門。15歳以下の子どもたちからの作品を募集しており、初代大賞作品『神様の救世主』は昨年11月に発売されている。子どもでもデビューの機会を持つことができるのだ。親子で挑戦も大いにあり!

青い鳥文庫小説賞 受賞者対談もえぎ桃 × 百舌涼一

第3回青い鳥文庫小説賞にて金賞を受賞した2人に、児童文庫小説執筆の「本当のところ」をたっぷりと語ってもらった。

各レーベルの賞に出し続けた日々

——まずはお2人の執筆歴などを簡単に教えてください。

もえぎ 私は元々出版社に勤めていて、今はフリーライターとして働いています。娘が本当に楽しそうに児童文庫を読むのを見て、こんなに夢中にさせるなんてすごいと思って書き始めました。

百舌 僕も子どもが生まれたときに、自分で書いて読んであげたいと思ったことがきっかけです。絵本の公募にいくつか出したんですが全く引っかからず、じゃあ童話で、一般文芸でとどんどん枚数を増やしていって(笑)。最終的には『ウンメイト』という作品で一度デビューしています。

——青い鳥文庫以外のレーベルの賞にも出したことはありますか?

もえぎ つばさもみらいも出しました。青い鳥も毎年毎年出していて、1次選考や2次選考落ちを何度も経験するたびに知り合いが増えて(笑)。

百舌 そうそう。一緒に残ったことのある方が別のところで賞を取っていたりはあるあるですよね。

——それぞれのレーベルに違いは感じましたか。

百舌 僕はけっこう文章量を見るんですが、みらいは少ないですね。

もえぎ たしかにそう。みらいは応募しやすい。あとは青い鳥も、老舗かと思いきや意外とはっちゃけていて、なんでもアリでしたね。

今の小学生に面白いと思ってほしい

——今回の受賞作は恋愛ものと男の子向けですが、最初から得意なジャンルだったんですか。

もえぎ 7年前に書き始めたころは好きなホラーから始めて、落選するたびにジャンルも文体もどんどん変えていきました。売れている児童文庫を読んで「今の小学生はこんなのが好きなのか」と研究もして。ライターという仕事上、本当は「…(三点リーダー)」や「!」の多用を好ましく思っていなかったんですが、小学生に勢いよく読んでもらいたくて、受賞作ではたくさん使っています。「ガチ恋」なんかも入れてますよ(笑)。今回の話は娘が実際に生徒会選挙に出たときの話を元に書いたので、リアル感はあったのかもしれないですね。

百舌 僕はどちらかというと逆で、ジャンルを変えたりはせずに、いつも男の子向けに、男の子が面白い話を目指していました。今回の受賞作で意識したことは、主人公の透明性などでしょうか。どんな子でも感情移入できるキャラづくりを心掛けました。一般文芸なら平凡でつまらない主人公と言われてしまうと思います。

子どもの気持ちを想像しながら書く

——面白くて複雑なキャラを作ったりはしないんですね。

百舌 子どもは想像できる人物像も大人ほどは多くないので、入れるとしても1人ですね。

——もえぎさんは、男の子向けの恋愛を書くとかもあり? 

もえぎ あ、それは厳しいかなと思います。大人だと「これ今までにないしいいかも!」ってたしかに思うんですが、実際のところ小学生の男の子は、恋愛にそもそも興味がない子が多いと思うので、本人の関心からはずれてしまいます。

——なるほど、大人の都合の押しつけはだめですね。

もえぎ桃さん
1970年生まれ。小学生の子どもがいる。フリーライターとして働くかたわら、7年間にわたり児童文庫小説賞に挑戦し続けた。

受賞作 『両想いになりたい』
中学生でプロのイラストレーターのスピカ。親友の那由多に恋をしている。しかし那由多は違う女の子の生徒会選挙の推薦人になるって言いだして……。生徒会を舞台にした胸キュン恋愛小説! 2021年2月に刊行。

 

百舌涼一さん
1980年生まれ。小学生の子どもがいる。広告制作会社に勤めながら執筆活動中。2016年に本のサナギ賞を受賞し『ウンメイト』でデビューしている。

受賞作 『ゼツメッシュ!』
時は2XXX年。【絶滅種図鑑】を愛する少年ヒラナリの前に、絶滅種「ヤンキー」が現れた。その後も「ニート」「シュフ」など絶滅種が続々と現れて、ヒラナリの世界を変えていく! 2020年11月に刊行。

※本記事は2021年4月号に掲載した記事を再掲載したものです。