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人気児童文庫レーベルの特徴を徹底比較!集英社・角川・小学館の小説賞とヒット作の傾向とは

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童話・児童文学
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※掲載している情報は過去のものの場合があります。今年度の開催状況は、主催者サイトを随時ご確認ください。

子どもたちの面白い!のために 集英社みらい文庫大賞

集英社だからできる!オリジナル+ノベライズ

2011年に創刊し、今年で10周年を迎える集英社みらい文庫。その強みはなんといっても「ノベライズにもオリジナルにも人気作がある」ということ。

特にノベライズ(あるコンテンツを小説化することを指す)作品は他の追随を許さない作品数と売り上げを記録しており、児童文庫の売り上げランキングには、みらい文庫の『鬼滅の刃』ノベライズ作品が複数ランクインしている。週刊少年ジャンプやりぼんなどの小中学生に根強い人気を持つ漫画雑誌を発刊していたり、映画作品も多く手掛けていたりする集英社だからこそできることだ。

また、オリジナル作品にも人気作は数多くある。特に『電車で行こう!』シリーズと『戦国ベースボール』シリーズは、児童文庫では難しいとされている男の子読者の獲得に成功している。どちらも読者の9割以上が男の子なのだ。

今後はオリジナル作品を充実させていくために、新人の発掘に力を入れており、昨年は「1章だけ大賞」も開催した。文字通り児童小説の1章だけを募集するもので、なんと初回にもかかわらず400編以上の応募があったという。

選考突破のヒント!

1次選考

全作品が読まれる。この段階で多い「残念な作品」は「うまいけど児童文庫じゃないな」という作品。子ども向けのエンタメ小説という枠をしっかりとらえた作品を書こう。

2次選考

3~4割が残る。2次審査に残るのは「何かひとつ、光るものがある」作品。文章の上手さ、キャラのよさ、ストーリーや設定の面白さ、なんでもOK。なんとみらい文庫大賞は2次審査に残るだけでも担当編集者がつく可能性があるので、応募する際はぜひ意識して「ここだけは自信がある」というポイントを作れるといい。

最終選考

5~15作品ほどが残る。最終審査に残る作品は「全体の完成度の高いもの」だ。大賞受賞者にはデビューを確約しているため、「書籍にできるか、世に出せるか」という点も判断基準になってくる。ここまで残れば確実に担当編集者がつくので、みらい文庫大賞に出すならまずはここを目指したい。

受賞後

例年だと3作品ほどが入賞するが増減あり。大賞と優秀賞の違いは「完成度の差」とのこと。受賞者は担当編集者と打ち合わせを重ねて刊行を目指すことになる。

編集長に聞く! 集英社みらい文庫 編集長 藤原隆博さん

児童文庫は読書体験の入り口

みらい文庫はノベライズ作品も多いレーベルですが、それだけに集中するつもりはありません。ノベライズはあくまでも読書の入り口であると考えています。

本は読まないけれど漫画や映画は好きだという子どもたちに、まずはノベライズ作品を読んで読書に親しんでもらう。そしてその次はオリジナル作品も読んで、「面白い!」とどんどん読書してもらうことを目標に頑張っているところです。

新たな書き手と出会いたい

現在、児童文庫は恋愛ストーリーが隆盛を極めていますが、そればかりだと、「児童文庫は女の子が読むもの」というイメージが強くなってしまいます。ぜひ男の子にも児童文庫を読んでほしいという気持ちはありますね。

そのため、たとえば既刊でいうと『戦国ベースボール』の「戦国×野球」のような、新しい切り口や斬新な設定の作品を特に求めています。男の子向け、女の子向け、どちらにもチャレンジしていきたいです。

また、みらい文庫大賞では、最終審査に残れば必ず担当編集がつきます。できるだけ多くのよい作品を世に送り出すためです。何か光るものがあれば、2次審査で落ちてしまった方でも、編集部からご連絡をする場合もあります。選考自体も、応募者のことを考えて、小説賞の審査としてはかなり早い2カ月間で結果発表をします。

——求めている作品を一言で言うと?

斬新な驚きに満ちた、これまでにはない切り口の作品を募集しています。ぜひ力作をお寄せください。

ラブストーリーからスポーツものまで!

これまでに10作品以上がみらい文庫大賞から刊行されている。近年の応募作品は恋愛ものやデスゲームものが多い傾向にあるそうだが、実際に出版に結びついている作品のジャンルはさまざま。ただ、主人公はほぼ小中学生だという。共感を生むためには欠かせないポイントの1つといえるだろう。

主人公が読者に近い年齢であることに加えて、児童文庫は一般文庫とは異なる文体で書かれているものがほとんどだ。勢いよく読ませるための工夫が凝らされている。リズム感や1章の長さを知ったり、なにが子どもたちにウケているのかを考えるために、先輩受賞者の作品を読もう。

入選のポイント

書き出しからつかもう

本屋さんでパラパラと本をめくったとき、WEBサイトで試し読みをしたとき、冒頭からつかんで離さないような作品はやはり強い。回りくどい説明や凡庸な書き出しは避け、明快かつ面白いスタートを切ろう。数行で「主人公が何をする話かがわかる」のがベスト。

屈折しすぎはNG

子どもたちは大人に比べると圧倒的に人生経験が少ない。キャラクターが凝りすぎていても置いてけぼりにしてしまう。どんな性格で、どんな話し方をするのかなど、一貫性があってわかりやすいことが大切だ。小学生に共感してもらえるキャラづくりを!

詰め込みすぎない

例年、アイデアを詰め込みすぎて全体が薄くなっている作品が多いという。山場はまずは1つあれば十分。その1つを引きたてるために構成を考えよう。小学生読者には「ここが楽しみどころだよ」と明確に提示することも重要。

シェアNo.1の人気レーベル 角川つばさ文庫小説賞

今の小学生が読んで楽しい物語を!

豊富なラインナップをそろえ、創刊4〜5年でシェア1位に躍り出た角川つばさ文庫。児童文庫レーベルでは後発組だが、それだけに新しさ、親しみやすさがある。

角川つばさ文庫小説賞は児童文庫小説賞で唯一、選考委員を立てているが、受賞に必要なものは?「今の小学生が読んで楽しい物語なのか、その点を意識して書かれているかということが重要だと思います」(服部圭子編集長)

締切は例年8月末日。じっくり練って取りかかろう。

第8回選評に見る受賞の課題(抜粋)

あいはらひろゆき
今年はレベルの高い作品がそろいましたが、選考委員を驚かせるようなスケールの大きな作品はなく、残念ながら大賞はありませんでした。力作をお待ちしております。

宗田理
「デスコレ!」は特殊能力を持つ少女と少年が未来に挑む物語。やや無理のある展開もあったが、学園ものの枠を超えた奇想天外な小説に挑戦したことを評価したい。

本上まなみ
お菓子作りって実験の要素が満載。「リケジョとオカシな実験室」は理科的視点から謎解きをしていく展開が面白い。子どもたちが夢中で読めそうな、かわいらしい作品。

第8回 受賞作(一般部門)

金賞 「デスコレ!─運命は、変えられる─」 七海まち

Story
美羽は、人の不幸な未来が見える力を持っている。絶対秘密にしていたはずが、同級生の瀧島君にバレ、二人で未来を変えることに!?「サキヨミ!」と改題し、シリーズ発売中!

Advice
自分の子ども時代の記憶だけで書かずに、なるべく今の事情を調べるようにしています。また、伝えたいメッセージが「大人目線のお説教」にならないように気をつけています。

金賞 「リケジョとオカシな実験室」 やまもとふみ

Story
理花は、理科が得意な小学5年生。知識を見込まれ、なぜか憧れのクラスメイトとお菓子作りをすることになってしまう。「理花のおかしな実験室」と改題し、シリーズ発売中!

Advice
とくに恥ずかしかった記憶、いわゆる黒歴史を大事にしています。忘れたくても忘れられない記憶なので、細部まで思い出せて、自然と子ども目線で書くことができるのです。

銀賞 「パートナー」 夏美

Story
だまされて、カラステングの学校!?に入学した颯太。風を起こす羽術のテストで、思いがけず力を出した颯太は……。超ハードな学園生活!『 空神』と改題し、現在発売中!

Advice
魔法使いの話を書きたいと思いました。羽うちわで風や嵐を起こすカラステングが日本の魔法使いのように思い、カラステングの学校のイメージをふくらませて書きました。

編集長に聞く! 角川つばさ文庫編集長 服部圭子さん

角川つばさ文庫は、角川文庫を読む前に「本を読むこと」を楽しんでもらいたいと創刊しました。

秋木真さんの『怪盗レッド』などオリジナル小説もたくさん刊行していますが、宗田理さんの『ぼくらの七日間戦争』など、角川文庫ほかで刊行している作品で、今の子どもが読んで面白いと思える小説も刊行している点が、角川つばさ文庫の特徴です。

デビューのチャンス大!? 小学館ジュニア文庫小説賞

ノベライズに負けない人気作家を目指そう!

小学館ジュニア文庫は映画、アニメ、漫画のノベライズが多く、書き下ろしのオリジナル小説は決して多くないが、それだけにデビューへの道は近いかもしれない。

「大賞受賞者は受賞作品が刊行され、デビュー。金賞受賞者は担当者がつき、デビューを目指す。受賞者以外でもきらりと光る可能性があれば担当者がつき、デビューすることも」(今村愛子編集長)

大賞が出にくい児童文庫小説賞だが、同賞では前回、大賞受賞者が出た。皆さんもこれに続こう!

第6回 結果と講評

大賞 「姫さまですよねっ!? 」 ソウマチ

金賞 「メチャ盛りユーチューバーアイドル☆いおん」 山本李奈

総評(抜粋)
大賞はキャラクターの魅力が抜きんでていました。なおかつ奇想天外なアイデアとクライマックスの盛り上げ、ゴールの伏線回収、すべて圧巻!大賞、金賞を選考するにあたって、重視したポイントは次の三つです。

①主人公のキャラクターに魅力があり、ジュニア文庫の読者が感情移入できるか。
②主人公の行動によってストーリーが進行しているか。
③エンターテインメント性が高いか(たとえば、作品をマンガやアニメ、実写映画にしたとき、メインとなるシーンが想像できるか)。

小中学生の読者が「ぐいぐい引き込まれる!」そんな作品を待っています。

編集長に聞く! 小学館ジュニア文庫編集長 今村愛子さん

09年、『ボクの初恋を君に捧ぐ』を小学館ジュニアシネマ文庫レーベルで発刊。その後、ジュニア文庫に改称し、14年に初のオリジナル作品『華麗なるアリス&ペンギン』シリーズを刊行しました。

「ドラえもん」「ポケモン」「名探偵コナン」など人気キャラの作品が豊富なのが小学館ジュニア文庫の特徴ですが、これら人気キャラコンテンツとの連携作品も継続しながら、ジュニア文庫独自のオリジナル作品に注力しています。

※本記事は2021年4月号に掲載した記事を再掲載したものです。