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公募Q&A「著作権」写真に知らない人が写った。肖像権の問題になる?後ろ姿ならセーフ?フォトコンには出せる?

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写真に知らない人が写ったとき、顔がはっきり見えなければ許諾なしでもいい? どれくらいから肖像権の問題になる?

境界はありませんが、個人が特定できる場合は許諾を得たほうが安心です。

見知らぬ人を写すときは、声をかけるのがマナー

フォトコンに応募するために、観光地、祭り、イベント会場、町や公園などに行って写真を撮る場合、無断で見知らぬ人を撮ってはいけませんし、盗撮がだめなのは言うまでもありません。
あなただって、いきなり「パシャッ」とやられたら不愉快ですよね。

たとえば、「〇〇町観光写真コンテスト」に応募するため、その町の名物でもある朝市に行き、露店で特産品を売っている人を撮る場合なら、その前に、
・写真を撮ってもいいか聞く(許諾)
・その写真をフォトコンに応募する旨、伝える(使用目的)

のは最低限のマナーです。

その際、許諾を得た証拠に一筆書いてもらえれば一番ですが、それを求めるとだいぶ大げさな話になり、「だったら断る」と言われかねません。動画に収めておく手もありますが、口頭でも許諾が得られれば、その後、大きな問題になることはまずありません。

それ以前に、単に許諾を得るというのではなく、最初にきちんと挨拶し、人としてコミュニケーションを図りましょう。
「朝獲れの魚ですか、生きがいいですね」「この仕事にどのくらい携わっているんですか」など相手の話を聞くとともに、自分のこともさりげなく伝え、気持ちを通じ合わせる。その上で気持ちよくフレームに収まってもらいましょう。
相手だって「なぜ私を撮りたいのか」が会話の中から見出せれば、そうそう嫌とは言わないはずです。

例外的に、突然、シャッターチャンスに恵まれ、思わず撮ってしまったというケースがあります。露店のエビが突然跳ね、驚いた子どもが尻もちをついたとか。
こういう場合は撮影後に事情を話し、丁重にお詫びをしたうえで、許諾を得ます。もちろん、断られたら諦めましょう。

個人が特定できなければ問題なし

このようにメインの被写体にする場合は被写体から許諾を得ますが、背景などに見知らぬ人物が写り込んでしまった場合はどうでしょうか。
許諾が得られれば得たいですが、さっと通り過ぎていってしまった人や、イベントの見物人といった群衆では、許諾を得るのが難しい場合があります。

まず、許諾を得る必要がない場合を挙げてみましょう。

・豆粒のような大きさ、またはピンボケで個人を特定できない。
・後ろ姿、または体の一部だけ。
・ぼかしなどで修正してある。
(フォトコンに応募する場合は修正できませんが)

後ろ姿でも、背格好や衣服の特徴から「あの人だ」とわかる場合もありますが、そこまでは問われません。
横顔はどうでしょうか。この場合、個人が特定できる大きさになると、残念ながら許諾が必要となります。

横顔ぐらいいいじゃないかと思うかもしれませんが、相手がどんな事情を抱えているか、こちらにはわかりません。
普通に生活しているように見えて、実は夫のDVから逃れて隠れ住んでいる人かもしれません。
ストーカーに追われ、居場所を知られたくない人かもしれません。
出張と偽って会社に内緒で旅行に来ている人かもしれません。
お忍びの芸能人かもしれません。
そういう人が写っていて、それでその人が大きな被害を受けた場合、トラブルにならないとは言いきれません。

ですので、誰かが見て「あの人だ」と特定できる場合は、フォトコンへの応募はお勧めできません。

個人が特定できても受忍限度の範囲なら大丈夫

とはいえ、あまり神経質に考えていたら、野外では撮影できなくなってしまいます。
「不安なら応募しないこと」と言うのは簡単ですが、そのことで創作意欲までそいでしまうのは本分ではありません。
そこで、改めて肖像権とは何かを知り、法的に問題があるかどうかの判断基準としてもらいたいと思います。

肖像権は著作権などと違い、どこかの法律に規定されているものではありません。肖像権法というものはないのですね。
しかし、憲法13条(自己決定権)を根拠とした判例はあります。

人は、みだりに自己の容ぼうなどを撮影されないことや、自己の容ぼうなどを撮影された写真をみだりに公表されないことについて、法律上保護されるべき人格的利益を有する
(最高裁平成17年11月10日判決)

簡単にいうと、「撮影を拒絶する権利」と「公表を拒絶する権利」があるということです。
もちろん、なんでもかんでも「拒絶」できません。「みだりに」とありますので、「みだりに」でなければいいということになります。
では、「みだりに」に当たらず、許諾を得なくても公表できる範囲は?

ある者の容ぼう、姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性などを総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべき
(最高裁平成17年11月10日判決)

受忍限度とは、この程度は許容すべきだというものですね。
たとえば、フォトコンの受賞作の被写体が演説をする政治家で、「よく見たらバックの野次馬の先頭にはっきりとオレが写っている」といった場合、人前に出てきたのは「オレ」の意思であり、しかも、悪意をもって「野次馬のオレ」を写したわけでもなければ、それくらいは許されるべきということですね。

写り込みがあるような作品の是非は?

同様に、祭りやイベントで撮った写真に写り込みがあっても、軽微な構成部分ならまず問題になりません。そこに行けば写されるのは当然であり、それを承知で参加していると言えるからです。

それなら、駅前はどうか、公園はどうか、その辺の道を歩いている人はどうかと範囲が広がりますが、建前から言えば「トラブルになる可能性がある」という答えになります。
しかし、無理やり撮ったわけでもなく、撮影禁止の区域でもなく、しかも、軽微な写り込みであれば、許諾を得なくてもたいていは受忍限度の範囲になるのではないかと思われます。
もちろん、許諾を得られるなら得てほしいですが、上記のような場合なら、過度に「肖像権の侵害になる」と恐れる必要はないと思われます。

ただ、写り込みがあるような写真は、作品としてどうなのでしょうか。
撮影するときは、全体も見ます。写り込みがないように注意します。
それでも写り込みが避けられないなら、被写体だけにピントがいき、背景はぼけるように写すこともできたはずです。
それをしなかったということは、その作品は失敗作かもしれません。
そういう観点で、自らボツにするという判断もあろうかと思います。

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