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創作キット福袋①絵手紙

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新春といえば初売りの福袋。公募ガイドも特製福袋を作りました。人気が高くて手軽に取り組める5つのジャンルの創作キットが詰め込まれています。プロに取材したノウハウもぎっしりです! 楽しく1年のスタートを切りましょう!

絵手紙

絵手紙も手紙 相手への気持ちが大切

絵手紙というと、「難しそう」 「道具をそろえなきゃいけないから大変そう」としり込みする人も多いだろう。公募ガイド読者であれば、絵手紙公募の入選作を目にする機会もあるので、なおさらそのように思うかもしれない。

しかし実は絵手紙に明確なルールはない。墨の種類や色ののせ方など、基本の道具や方法はあり、それを使えばよりよく描けるのは確かだが、使わなくても絵とメッセージがあれば絵手紙だ。まずは身の回りにあるもので始めてみよう。花城さんも40歳で絵手紙を始めたときは、家にあったマッチ棒で描いていたという。

また、「絵が下手だから恥ずかしい」という人もいるだろう。花城さんに絵が下手でもいい絵手紙は書けるか伺ったところ、「絵手紙も手紙です。相手に喜んでもらおうという気持ちで素直に描いたのがいい絵手紙です。いくつかのコツさえ知れば、絵のうまさは関係ないですよ」とのこと。ここでは基本的かつ重要なポイントを押さえてあるので、誰でもすてきな絵手紙が描けるはず。ぜひ楽しんで描こう!

絵手紙のキホン 道具&筆の持ち方

絵手紙には推奨されている筆の持ち方や道具が存在する。絵手紙をより一層味わい深いものにするためだ。忠実に守る必要はないが、基本として知っておこう。たとえば絵手紙で使う墨は「青墨」と呼ばれるものであり、一般的に書道で使われる茶墨よりも青みがかった墨だ。これは他の色との調和がとれるので推奨されている。このように道具一つ一つにも理由がある。取り入れられるものにはぜひ挑戦してほしい。

道具

①筆…墨用1本と彩色用に2本
②墨と硯…青墨をすって使う
③画仙紙…にじみや発色がよい紙
④印泥と印…鮮やかな朱が美しい
⑤梅皿…絵の具と水をなじませる
⑥筆洗い…筆はこまめに洗う
⑦顔彩絵の具…やわらかい発色が特徴
※正式には上記を使うが、墨汁や水彩絵の具など家にあるもので応用OK

筆の持ち方

親指と人差し指と中指で筆の一番上を持ち、脇は体から離す。このとき、握り込みすぎないよう気をつける。書道では筆先を寝かせて書くこともあるが、絵手紙を描くときは筆と紙は垂直を保ったまま動かすようにしよう。穂先で紙を切るようなイメージで描くとうまくいく。墨のにじみを意識して描こう。

絵手紙を描いてみよう!

基本を押さえたところでさっそく絵手紙にチャレンジ! 一般的な描き方の流れと、初心者へのアドバイスをギュギュッとまとめた。

①モチーフと構図を決める

季節に合ったモチーフを選ぼう

最初に送りたい相手と内容を決めたら、モチーフを考えよう。モチーフは旬の食べ物など季節を感じさせるものがよい。写真でも描けるが、手元でモチーフを触りながら確認できたほうが進めやすいので、初心者は実物を用意するのがおすすめ。また、花束のような大きなものを描く場合は「切り取る」工程が加わり難しくなるので、手のひらにのるくらいの小さなものを描くほうが簡単だ。

今回お手本として描いてもらったのは「しばらく会っていない友人に会いたい気持ちを伝える」絵手紙。モチーフは冷蔵庫にあったミニトマトに決定。トマトを人に見立てて、仲良く顔を合わせているような構図にした。

全体を描けないモチーフの場合

①大きなものを描く場合、初心者は花瓶から花まで全体を描きがち。そうすると、小さくまとまった元気のない絵手紙になってしまう。

②描きたい部分を切り取ろう。上の場合は花2つを中心に、少し葉が入る部分を選んだ。大きなものを描く際はこの「描く部分を選ぶ」工程がある。

③選んだ花を中心にして描き始める。葉をどのように配置するか、つぼみを付け足すかなどは自由に描いてよい。言葉を入れるスペースをとる。

1月・2月おすすめモチーフ

1年で一番寒い季節。読んだ人の心も体も温まるようなモチーフを選ぼう。

【食べ物】
白菜、大根、カブ、カボチャ、ニンジン、サツマイモ、寄せ鍋、コーヒー、しょうが湯、おでん、シチュー、タイ、エビ、カキ、カニ、ミカン、ユズ、リンゴ、キンカン、梨

【植物】
水仙、ポインセチア、千両、万両、梅、ロウバイ、サザンカ、アネモネ、寒桜、クロッカス、スノードロップ、ツバキ、フクジュソウ

【イベントなど】
成人式=振り袖、かんざし、げた、節分=豆、鬼、おかめ、恵方巻、バレンタインデー=チョコレート、冬の風物=セーター、雪だるま

②下絵を描く

余白を考えつつ大きく描く

構図まで決まったらさっそく筆を持って描き始めよう。鉛筆で下描きをしたりはしない。花城さんは下絵から色を塗り終わるまでに5分もかからないという。どこに文字を入れるかということだけは意識しながら、のびのびと大きく描けば大丈夫。

POINT1 モノの中心から描く

輪郭から描きがちだが、そうするとどうしても小さくなる。中心から、トマトであればヘタから描けば自然と大きく描ける。

POINT2 重ね合わせてみる

モノ同士がバラバラに置かれているよりも、重なっている部分があるほうが躍動感が生まれる。重なりを意識してみよう。

③色を塗る

のびのびと大胆に、色を置くイメージで

下絵が完成したら色を塗っていく。水を含ませた筆で色を取り、皿の上で調節する。最初は水の量とにじみ方のバランスをつかむのが難しいはず。皿の上で少しずつ水の量と色合いを確認しよう。納得のいく色になったら、そっと色を置くイメージで筆を動かそう。

POINT1 混ぜるのは2色まで!

基本的に色は混ぜたりせずそのままの色を使う。2色程度を混ぜて変化をつけるのはあり。また、影もつけない。

POINT2 塗り残しでつやを表現

べた塗りはせず、白い部分が残るくらいのラフさで色をのせよう。ハガキの白がつやを表現してくれる。

④文字を書く

思っていることを素直に言葉にしよう

絵が描けたら文字を入れる。文字も筆と墨を使って書くが、「きれいさ」は気にしなくてOK。楷書体で相手が読みやすい字を目指そう。言葉は好きなものでよいが、あまりに小さいとにじんで読みにくくなってしまう可能性があるので気をつけよう。

POINT1 バランスを意識しよう

絵と同様に鉛筆で下書きしたりはしない。書きたい文字数と余白を計算して、大きさのバランスを考えてから書き出そう。

POINT2 絵と合う言葉を

顔を合わせているようなトマトの絵に合わせて、「会いたいね」と語りかけるようなものに。絵にマッチする言葉にしよう。

⑤印を押す

赤い印で作品の仕上げ

最後の仕上げは自分の印を押す作業だ。たいていは隅のほうか文字の後の余白に押す。赤の印を押すことによって、作品としてぐっとしまりが出る。印泥と呼ばれる朱の印肉は鮮やかでおすすめ。印を持っていない場合は、好きな字を彫れる消しゴム印を作ってみるのもあり。

 

【絵手紙の先生】
花城祐子
絵手紙講師。2000年、手紙文化の功労者として逓信記念日郵政大臣賞受賞。ユーキャン「絵手紙講座」主任講師。朝日カルチャーセンターなどで指導。TBS系列バラエティ番組『プレバト‼』で絵手紙部門の査定を務める。

 

※本記事は2021年2月号に掲載した記事を再掲載したものです。