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創作キット福袋③コピー

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日々多くの公募が開催されているキャッチコピーや広告コピーは人気ジャンルの1つ。オリジナリティーのあるコピーが書けるようになろう。

コピーに正解はない その先にいこう

コピーを書くうえで大事なのは、「コピーに正解はない」と知ることと、「もっとほかに書けることがあるのではないか」と常に自分に問いかけ続けることだ。プロのコピーライターである渡辺さんでも「競合とかぶったらどうしよう」と、会議ギリギリまで準備を重ねるという。

特に初心者は、自分が思いつくことの9割はほかの人も思いつくものだと認識しながら考えてほしい。たとえば、眼鏡のコピーを書くときに「よく見える」「かわいい」ぐらいの発想で止まっていては、なかなかよいコピーは生まれない。眼鏡に対して言えることをいくつも書き、そしてその一つ一つについて「ほかの言い方はないか?」と言葉を磨き続ける必要がある。

渡辺さんいわく「コピーは誰かと同じだった時点で輝きを失ってしまうので、ほかにはないコピーにたどり着かなくてはならない。そのためには、これでいいかな?と正解を探すのではなく、正解も飛び越えた唯一の言葉を目指す」のがよいコピーを生む方法だそう。

また、渡辺さんは著書の『広告コピーの筋力トレーニング』の中で「コピーとは大きな矢印のようなもの」と書いている。写真やイラストにただ添えてあるだけの言葉ではなく、太くて大きな矢印として人々の意識を集め、同じ方向に向かせる力のあるコピーを書こう。

渡辺さんの好きなコピー

そうだ 京都、行こう。
(JR東海/93年/太田恵美)

みんななんとなくは思っていたけれど言葉になっていなかった価値を言語化して、あらゆる人の前に提示している強さがある。ちょっとルーズな言葉を使うことで気軽な感じも伝わる。(渡辺)

NO MUSIC,NO LIFE.
(タワーレコード/96年/木村透)

音楽を取り巻く環境は変わってもコピーの持つパワーは衰えないどころかすごみを増している。僕たちは旬な言葉を探しがちだけれど、こんないつまでも衰えない言葉を書きたいと思う。(渡辺)

渡辺さん自選 思い入れのあるコピー

三菱地所を、見に行こう。
(三菱地所/11年/渡辺潤平)

三菱地所を知っている人は多くない。どんな会社かわからないのにいいところだけ並べても結局伝わらない。そこでまず、一人一人が三菱地所と関係があるんだよと伝える広告を作った。(渡辺)

待ってるぞ。プロ野球
(スポーツナビ/20年/渡辺潤平)

ファン向けアプリのコピーなので、プロ野球側ではなくてファン目線で書いた。コロナでプロ野球が中止になったことを「残念だ」ではなく、「待ってるぞ」と前向きに捉えたコピー。(渡辺)

コピーに、あなたらしさを。

ほかの人とかぶらないコピー、言い換えるならばあなただけのコピーが書けるようになれば入選も目前。渡辺さん直伝の5つのステップで自分らしいコピーが書けるようになろう!

【チャレンジ】 「住宅メーカー」のコピーを考えよう

5つのステップに沿って実際にコピーを書いてみよう!見た人に「家が欲しいな」と感じてもらえるようなコピーを書こう。

STEP1 体験する

似ているようで違う 「知る」と「体験する」

テーマが与えられた直後にやりがちなのが、ネットで検索して新しい知識を身に付けることだ。知識として知るのはもちろん必要だが、それよりも「自分で体験してみる」ことのほうがまずは重要。「家」であれば自分の家をくまなく歩きまわってみたり、住宅街を歩いてみたりなど、「家」を五感で感じてみよう。経験からしかよいコピーは生まれない。

体験するときのポイント

主観的に

体験したことのメモをとっていくときに分析したり客観視したりする必要はない。主観的に感じたことでOK。

悪い部分も見てみる

コピーは商品の良さを引き出すものだが、この段階では良い悪い関係なく、素直に商品を見つめてみよう。

STEP2 ターゲットを考える

絞り込みすぎはNG だけど想像力は働かせてみよう

コピーは大多数の人に届くものでなくてはならないので、ターゲットを絞りすぎてそれに縛られてしまうのは避けたい。

しかし、「こんな人がターゲットになるかも」と想像することで、商品の新たな一面や本質が見えてくることはある。たとえば、結婚を機に家を買いたい夫婦と、子供が巣立ったので家を買いなおしたい夫婦では、求めていることは違う。どんな人がターゲットになりそうか想像してみよう。

STEP3  「なに」を言うか

武器はどこ? 可能性に光を当てよう

商品を実際に体験して自分の感覚として知り、ターゲットも想像したら、次は「なにを言うか」を考えよう。その商品の武器はどこなのかを書き出す作業だ。

企業のサイトには、その商品の売り出したい部分が説明されている。だがそれをそのまま書いても人に刺さるコピーにはならない。企業側ではなく受け手側に立って、「家」の魅力はなにか、最大の武器はどこなのか探し出す必要がある。

しかしたいていの場合、考えたものはほかの人とかぶってしまう。ではどうすればいいのか? 渡辺さんは「とにかく量を書くしかない」と言う。平凡な案を「膿を出す」ように出し切り、他の人とは違うものにたどり着けるまで書くのだ。ぜひノートや紙を用意してどんどん書いてほしい。

名コピーに学ぶ 「なに」を言うか

家族がそばにいるだけで、生きるチカラをもらっている。
(旭化成ホームズ/15年)

本質を探し当てる

家の本質は「家族が一緒にいられる場所」だということを、強い言葉で表現している。「家=家族」までだとありがちだが、「家=家族=生きる力」まで本質に迫ったコピー。

新しい日々へ
(積水ハウス/20年)

世の中から考える

2020年の広告。コロナ禍で「新しい生活様式」が求められている世の中を踏まえて作られている。「家」を見るだけではなく、今の社会状況の中での価値を捉えなおしている。

ヒント

なにを言うかを考えるとき、「家=家族」や「家=思い出の場所」で止まってしまっては、たくさんの人に響くコピーにはならない。もっと深掘りすることが必要だ。いろいろとやり方はあるが、初心者は自分のエピソードを元に考えていくとよい。そうすると、自分だけの視点でコピーを書くことができる。

STEP4 「どう」言うか

1つの「なに」に対していくつもの「どう」を考えよう

「なにを言うか」をたくさん書き、その中からよいものをいくつか選んだら、その一つ一つについて「どう言うか?」を広げていく。

STEP3で考えた「なにを言うか=武器」1つに対して、最低でも3つくらいは「どう言うか」を考えてみよう。よくある方法として「比較( 例/ 〇〇よりいい!)」などあるが、よくあるということは、それだけ似たようなコピーが多いということ。安易に使わないようにしよう。もちろん、検討を重ねてそれがよかったというのはOK。

「どう」言うか?のポイント

想像の範ちゅうを超えよう

審査ではたいてい、いくつも似たようなコピーが並ぶ。その中で目を引くのは、「この言葉よく見つけたな」と思えるコピー。人々の想像の範ちゅうにとどまらない、想像を超えた言葉の提示が、どう言うかを考えるときに目指すべき理想像だ。

多方面から考えよう

どう言うかを考えるとき、たとえば助詞をちょっと変えただけではどう言うかのバリエーションが出せたとは言えない。言葉を丁寧に選ぶのは次の段階の作業だ。この段階では、誰の視点で語るかや、どこをコピーの中心に置くかなど、多方面から考えるようにしよう。

STEP5 整えて完成させよう

漢字やひらがな、句読点の位置など最後まで考えよう

同じ言葉だとしても、漢字を使えば真面目でクールな印象になるし、ひらがなであればやわらかさや親しみやすさを感じさせる。また、句読点を打つかなども検討が必要だ。

たとえば渡辺さんの「待ってるぞ。プロ野球」というコピーは、文章としては「待ってるぞ、プロ野球。」のほうが違和感はない。しかし「待ってるぞ」のあとに句点を挟んだことで一拍空き、強さが出ている。ストレスなく読めて、人を引きつけられるように細部まで考えよう。

 

【コピーの先生】

渡辺潤平

コピーライター。博報堂、GROUNDを経て渡辺潤平社設立。カンヌ国際広告祭ブロンズ、TCC新人賞、日経広告賞部門賞など受賞。

※本記事は2021年2月号に掲載した記事を再掲載したものです。