【お悩み回答】生きながら短歌を詠む|社交性に悩む人へ贈る言葉の居場所


今回はこちらの質問について考えていきたいと思います。
葵先生は、どうして短歌をしようと思われたのですか?
今更ですが、最初に短歌を作った思い出やキッカケが知りたいです。
葵先生と呼ばれたのは初めてですが、かわいい響きですね。先生呼びじゃなくてもいいですよ~(なんでもいいです)
他の媒体にも書いたことがあるのですが、私が短歌に継続的に取り組みはじめたのは、勤めていた会社を辞めて、家族の海外転勤に同行したことがきっかけです。それまで中高6年間は演劇部で主に演技をし、大学4年間は舞台美術に熱中していました。そして卒業後は9年間、同じ部署に勤務していました。
それらからすべて離れて海外にしばらく滞在することになったのですが、引っ越しが落ち着いたころ、なんだか自分自身の手のなかに何もなくなってしまったようなさみしさがありました。
長くできそうなことを今すぐ始めなければ、と私は急に焦りました。できたら、会社勤めの9年間よりも長く続けられることがいいな。短歌ならどこに住んでいてもWEBから投稿できましたし、すでに当時のTwitter(現・X)には短歌アカウント勢がたくさんいました。私は早速、短歌用のTwitterアカウントをつくり、まずはNHK短歌と雑誌ダ・ヴィンチの「短歌ください」のコーナーに1年間だけ投稿してみよう、と決めたのです。それから11年が経ちました。安直な理由なのに、長く続いたと思いませんか?
なぜ短歌だったかというと、社会人1年目のころに、俵万智さんと穂村弘さんの歌集に出会って「自分でも書いてみたい!」と思って短歌を詠んだものの、発表するあてがなくて、全部まとめて短歌研究新人賞に応募したことがあったからです。これまた安直ですね。そこからしばらくまともに短歌を読まず、詠まず、上記の海外渡航に至ります。
こう考えると私の短歌への取り組みは公募とともにありました。結社や学生短歌会、勉強会などに所属する人もいますが、私のようにふらふらとした1人でも公募はよいペースメーカーになり、励みになり、発表の場にもなります。
今は一人で黙々と短歌を作っているのですが、自分より後に初めた人もどんどんSNSで短歌友だちを作っていて、一瞬でフォロワーが抜かされたりします。
気にしちゃいけないと思い、短歌を作ったり、インプットをしたりして気を紛らわしてはいるのですが、ふとしたときにこのままでいいのか、自分は社交から逃げているだけなんじゃないか、本気になるといって頑張りきれていないんじゃないか、と不安に駆られたりします。
こうしたときにどのようにモチベーションを保てばいいでしょうか?
私も短歌を11年も続けているうちに、良い知り合いができたり、友だちができたり、同人に誘ってもらったりしてきましたが、基本的にはふらふらとした1人なので、質問者さんのお気持ちがとてもよくわかります。もっと社交的だったら、もっと行動できたら、もっと時間があったら。今だって思います。第二歌集を出したいのですが、金銭的な面も含めて、なかなか攻めの姿勢になるタイミングが持てません。
でも、私が生きているから私の短歌がこの世に生まれたのも事実です。生きていないと短歌は詠めません。社交的でない自分も、不器用な自分も、仕事をする自分も、子どもたちの親をやっている自分も、言葉が好きで短歌が好きな自分も、そういう自分だから(世の中の大半の人がやらない)短歌をやるようになりました。質問者さんもそうではないですか? もし自分がすっごく社交的だったら、短歌、やっていましたか?
仕事、育児、介護、闘病、なかなか時間が取れない人、ままならない人。生活が苦しくても楽しくても、常に隣に置いておけて、一旦手放しても取りにいけるのが短歌であるような気がしています。フォロワーが増えるときもいつかあるかもしれません。ないかもしれません。フォロワー数を目的にしても私はいいと思います。でも、それが目的でないなら、見誤るのはもったいないです。
短歌は「短い歌」なので、1人の人間がいれば短歌は詠めますし、1人の人間がいれば読んでもらえます。交流には価値があるかもしれませんが、基本はソロ活動です。人の歌人同士、一緒にやっていきましょう。
今月は、テーマ詠「熱」を募集しています。
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
分かち書き、句ごとの改行はしなくてOKです。採用されている短歌の書式をご参考に!
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「熱」。 応募点数制限なし。 応募フォームに柴田葵さんへの質問欄を設けています。短歌のことや、作品づくりについて選者:柴田葵さんに質問があればご自由にお書きください。匿名で質問内容とその回答を記事に掲載させていただく場合があります。必ずしも回答があるわけではございませんので、ご了承ください。 |
応募方法 | 応募フォームからご応募ください。 ※X(旧Twitter)での応募はなくなりました。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末~翌月頭を予定しております。 |
締切 | 2025年8月31日 |
発表 | 2025年10月1日 |