公募Q&A「作品制作」 応募する写真は加工してもいい?
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写真の加工はしてもいいですか。どれくらいの加工までならOKなどありますか。
多少の補正はOKですが、加工と言える「嘘」はNGです。
補正の範囲を超えた演出は「嘘」と判断される
写真を撮ったあと、「もうちょっとこうしたかった」と思うことがあります。個人的な写真ならレタッチしていいですが、フォトコンに応募するとなると、いいのかなと思ってしまいます。できたらいいけど、規定違反にはならないのかなあと。
撮ったままの写真を「オリジナル」とするなら、「オリジナル」で応募するのが望ましいですが、多くのフォトコンの応募要項では、「色調やコントラストの調整、トリミングの変更はOK」となっています。
ただし、あくまでも補正の範囲内であること。過剰な演出と言えるような加工はNGです。
過剰な演出とは、具体的などんな加工でしょうか。
以下の四つが考えられます。
1. 写っていないものを足す(合成)。
2. 写っているものをなくす(消去)
(ただし、レンズやフィルムについたゴミの消去はOK)
3. 補正の範囲を超えた調整、修正。
4. 極端なトリミング。
オリジナルが「真」だとすると、加工したものは「嘘」ですね。 そのような作品は不可ということになります。
デジタルカメラなら加工は自由自在だが
なぜこのような問題が起きるかというと、デジタル写真は素人でも加工ができるからです。
昔なら写真屋さんにプリントしてもらうだけでしたが、今はデータがありますから、「Photoshop」などの画像編集ソフトで自分で加工できます。トーンカーブで色調補正をしたり、ホワイトバランスを調整したり、カラー写真をグレースケールにすることもできます。
また、カメラやスマホ自体も進化していますから、手間いらずのさまざまな機能が装備されています。たとえば、デジタルカメラなら以下のようなこともできます。
〇RAW現像
RAW現像とは、情報量が豊富なRAWデータで撮影し、撮ったあとで露出の補正をすること。適正な露出設定をしなくても、あとで白飛びや黒つぶれを直すことができます。
RAW現像をしても、補正の範囲なら問題ありません。
〇覆い焼き、焼き込み
覆い焼きは、光を当てたくない部分を覆ってプリントすること。焼き込みは逆に一部を強く露光させて焼くことです。部分焼きとも言います。
昔は写真屋さんがやっていたこうした技術も、デジタル写真なら簡単にできます。
やはり、被写体を強調するなど補正の範囲なら問題ありません。
〇HDR機能
HDR(High Dynamic Range)とは、明るさの違う複数の写真を合成すること。
暗い室内から明るい屋外を撮った場合、暗い室内にピントを合わせると屋外が白飛びし、屋外にピントを合わせると室内が黒つぶれしますが、自動的に3枚以上の写真を撮り、白飛びや黒つぶれがないようにいいとこ取りしてくれるのがHDR機能です。
この機能を使って応募しても問題ないようです。
スポーツもそうですが、道具も腕のうちということのようです。
〇長時間露光、多重露光
長時間露光は、花火や滝の写真などのときに使う機能です。幻想的な写真が撮れます。
多重露光(多重露出)は、1コマの中に複数の画像を重ねて合成する機能のこと。いずれも問題ありません。
ただし多重露光で、カメラの向きが違う写真を合成するのはNGです。
〇比較明合成、深度合成
比較明合成は、同時に撮った画像を重ね合わせ、ピクセルごとに明度を比較し、明るいほうのピクセルを採用して1枚の写真にする機能。
深度合成は、ピント位置を変えて複数枚撮影し、それをカメラが合成し、手前から奥までピントが合った1枚にできる機能。
こうした機能を使っても問題にはならないようですが、最終的には個々の作品を見ないと判断できません。OKとNGの境界はグレーです。
ちなみに、「フジフイルムフォトコンテスト」では、「合成写真で応募できますか」という質問に対し、以下のように回答しています。
〈ネイチャーフォト部門は、自然をテーマにしているため応募できません。但し、彩度や明るさの微調整の補正でしたら、ネイチャーフォト部門へご応募いただけます。また、自然風景であることを前提に、撮影位置、カメラを変えずに同じ景色を撮影していた写真であれば、規定内としており、比較明合成、深度合成モード、多重露出(1ショット目と2ショット目でカメラの向きを変えて撮影した画像は不可)は応募できますが、撮影技法、表現を総合的に見て、最後は弊社と審査員で判断いたします。〉
(フジフイルムフォトコンテスト)
加工がOKかどうかは、フォトコンにもよる
加工が許されるかどうかは、最終的にはそれぞれのフォトコンによります。 もっと言うと、フォトコンの趣旨、目的にもよります。
〇芸術写真
芸術性を問う写真賞では、表現のために加工することはよくあります。
問題となるのは合成写真かどうかではなく、芸術的かどうかです。
〇スナップフォトコンテスト
家族の微笑ましい写真やペットの写真などを募集するコンテストでは、そんなにナーバスにならなくて大丈夫です。そもそも補正や加工について何も規定されていないスナップフォトコンも多数あります。
〇一般的なフォトコンテスト
芸術というよりは写真技術を問うようなコンテストで、スナップフォトコンではないもの(プロのカメラマンや写真家などが審査員)では、おおむね補正や加工について規定してあります。
下記のようなものが標準と言えます。
〈以下に該当する作品は、応募することができません。(中略)画像処理ソフト等を用いて、画像の一部を消去・追加・合成する等の加工をしたもの。〉
(日本橋フォトコンテスト)
〈明度・彩度・ホワイトバランスなどの全体的な色調整は問題ありませんが、実際の風景、また撮影時とは大幅に異なる画像の合成、および大幅な画像処理(色調の調整を除く)を行った場合はご応募の対象とはなりません。〉
(クラブツーリズム「旅の思い出」旅写真大募集)
極端に言うと、「赤ちゃんの写真募集」で、赤ちゃんの後ろに置いた人形を消しても文句を言う人はいません。「かわいい赤ちゃんだね」と思うだけ。
しかし、技術を競うようなフォトコンでこれをやったら、「構図も含めて技術なのだから、あとで加工するなんてずるい。それが入選するってどうなの?」となります。
最終的には応募しようと考えているフォトコンによりますので、応募規定と趣旨、前回入選作などと照らし合わせ、「これはやりすぎた、アウト」「これくらいならセーフ、加工とは言えない」というように個々に判断してください。