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「社葬vs食堂おかめ」前半の伏線と回収|伏線は「裏」から生まれる

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「社葬vs食堂おかめ」前半の伏線と回収

「社葬vs食堂おかめ」のストーリーを紹介しながら、随所に仕込まれた伏線と回収について解説する。
少し長いが、どのように自然に、また意外性と納得感がでるようにしているか、シーンを想像しながら考えてみよう。

「社葬vs食堂おかめ」前半のプロット

シーン1:韓国ソウルのホテル

ホテルの一室で、紳士服の「大波」の大波社長が死んでいる。そばにいた女性は慌てて部屋を出ていく。

【伏線の技法・倒叙】

伏線ではないが、シーン13になって「そういうことか」とわかるという意味では伏線的。
時系列では、紳士服の大波社長と井村総務部長が韓国に進出し、二人で事業成功を祝ったあと、大波社長が急死するという順序だが、この順番を入れ替えることで、「誰が死んだの?」「なぜ死んだの?」「そばにいた女性は誰?」という疑問が生まれ、これが視聴者を引っ張る推進力となる。

シーン2:総務部長、井村の回想

二人の少年(親分とチビ)が田舎道を歩いている。親分が言う。
「俺は社長になる。お前を部下にしてやる。せっかく生まれてきたんだ、でっかい夢を見ろ。俺の葬儀には総理大臣を呼べ。呼ばなきゃ、ぶっ飛ばす」

【伏線の技法・布石】

大波社長の死後、井村総務部長は、是が非でも「総理大臣も列席する葬儀を行う」ことに執着するが、その動機に、少年時代の約束にあったことを前もって描いている。

【伏線の技法・逆転】

この時点では「ボス=社長の大波、チビ=総務部長の井村」と思わせているが、井村はのちに没落し、そこを大波社長に拾われたという経緯がある(本当はボス=井村、チビ=大波)。それゆえに、井村総務部長は恩返しのためにも大波社長の葬儀には絶対に総理大臣を呼びたいと思っている。
このことはシーン13で回収される。

シーン3:大波社長の死から一週間後、ソウル

国際霊柩送還士のエンジェルハース社の社長那美と部下の凛子は、韓国で亡くなった吉崎めぐみの遺体を日本に送還しようとしている。
棺には、田舎の大衆食堂「おかめ」の女将、吉崎めぐみの遺体が入っている。
Kポップアイドルのコンサートを見にきて、胸部大動脈瘤破裂で死亡したと説明がある。
その日は余裕があり、那美と凛子は飲みに行く。

【伏線の技法・フラグ】

「余裕がある」というシーンを書くということは、その後にトラブルが待っていることを予感させる。順調な場面を書くことでメリハリを生む典型的な技法だ。

シーン4:韓国の那美と凛子

案の定、台風が韓国を直撃するという事態となり、予定していた飛行機が欠航になる。
日本のエンジェルハース社に電話すると、会長の柏木は焦って言う。
「吉崎家の遺族に『明朝着なので、明日の葬儀は大丈夫』と言ってしまった。どうにかせい」

【伏線の技法・フラグの回収】

フラグは比較的早く回収され、ここでもシーン3で立ったフラグが早速回収されている。
余裕がある状態が一転、トラブルに。主人公が困るほうへと展開するのがストーリーの鉄則である。

シーン5:吉崎家・葬儀の準備が進むなか、遺族が回想する

母親のめぐみは韓流アイドルのコンサートをプレゼントされ、韓国のホテルから息子と娘に電話でお礼を言う。
「ライブはステキだった。席もよく、私、ソヨンさんと目が合ったのよ」
母親のめぐみは喜びを口にするが、その晩、心臓発作で亡くなる。

【伏線の技法・リフレイン】

「私、ソヨンさんと目が合った」このセリフはシーン12で再び繰り返される。
この時点では何の変哲もない喜びの報告だが、実はこのセリフ自体が嘘であることが最終シーンで判明する。繰り返されるからこそ印象に残り、真実が明かされたときの衝撃が大きくなる。リフレインさせて、伏線(布石)であることを強調している。

シーン6:韓国の那美と凛子

韓国の航空会社にねじ込み、台風の影響のない福岡空港行きの飛行機になんとか遺体を乗せてもらい、その後、トランジットで羽田まで運ぶ予約をとりつける。
那美は柏木会長に電話し、「あたしだよ、こんなの、朝飯前だよ」と言う。

【伏線の技法・フラグ】

大口を叩く登場人物、これはフラグの定番中の定番だ。視聴者は「朝飯前」と言ったということは、「きっとうまくいかないぞ」と予想する。
しかも、那美が言った「朝飯前」を真に受けて、柏木まで安請け合いをしてしまうというフラグの連鎖が仕掛けられている。

シーン7:日本のエンジェルハース社

紳士服の「大波」の総務部長、井村から電話がある。
「明日、大波社長の葬儀を予定しているが、台風で遺体が来ない。どうにかしてくれ」

【伏線の技法・フラグの連鎖】

シーン6の「朝飯前」が、柏木の安請け合いを誘発する。
台風が接近するなか、エンジェルハース社の会長柏木は遺体送還の依頼を受けるが、ついさっき那美が言った「あたしだよ、こんなの、朝飯前だよ」という言葉につられ、安易に引き受けてしまう。

シーン8:韓国の那美と凛子

棺をもう一つ搬送したいと願い出るが、もう重量オーバーで無理と断られる。日本の柏木に報告すると、「もう引き受けてしもうた」と言われる。
紳士服の「大波」社長の葬儀は総理大臣も列席する。延期はできない。
柏木は那美に、「どうにかせい。あるだろ、最後の方法が」と言う。
最後の方法とは、田舎の食堂の女将めぐみの棺と大波社長の棺を交換すること指す。

【伏線の技法・フラグの連鎖の回収】

ここでフラグ型の連鎖が回収される。柏木会長は安請け合いしてしまった結果、トラブルになるが、大企業の社長の棺を優先することで問題を解決しようとする。
このことが「遺体に優劣はあるのか」という物語のテーマを浮かび上がらせる。

シーン9:韓国の那美と凛子

那美はめぐみの遺族に電話し、事情を話す。故人の息子は言う。
「大企業を優先するのが当然です。こっちは棺を空のままやっちゃいます」
無事、一件落着するが、那美は部下の凛子が言う「遺体は平等だが、現実的には大波社長の遺体を優先すべきだろう」という回答に納得がいかない。

【伏線の技法:暗示】

那美は納得がいっていない。このことが展開を暗示している。現実的には大企業の葬儀を優先するしかないが、のちにこの問題を那美が解決することが予想される。
しかし、どう解決するのかは、シーン15で回収されるまでわからない。

シーン10:吉崎家のめぐみの息子と娘

「お母さん、またあとまわしだったね」のセリフのあと、回想に入る。
めぐみは夫の死後、大衆食堂を一人で切り盛りしている。ご飯になっても「お母さんはあとでいいから」、お風呂のときも「お母さんはあとでいいから」。かたづけや明日の仕込みで忙しく、子どもたちを優先する。
回想明け、息子が言う。
「葬式まであとまわしか」

【伏線の技法:リフレインと逆転】

「お母さんはあとでいいから」が繰り返され、めぐみの人柄が強調される。
この段階では、めぐみは「人を優先する人柄」ということしかわからないが、この性格が最終シーン(シーン16)では「チケットを他人に譲っていた」という意外な展開として回収される。