公募や新人賞で評価される伏線回収とは?|うまければ評価。しかし、マストではない!?
ここまで、伏線回収とはどういうものか、その構造を見てきて、いかに伏線とその回収がうまくいくことがストーリーを面白くするかわかっただろう。ぜひとも、小説や脚本、漫画などストーリー作品に取り入れて面白いものを書きたい!と思ってもらえたのではないだろうか。こんな面白い作品をバンバン書ければ、きっとコンテストで受賞することもできるはず……!
そこで、コンテストの応募作品において伏線回収の巧みさはどのように評価されるのか? コンテスト主催者にアンケートに答えてもらった。
「伏線回収」、使いこなせる……?
SNSには「考察班」と呼ばれる、アニメやドラマの先々の行方を推測するために、なんでもなさそうなシーンを「これは伏線では……?」と話して盛り上がる層が存在する。彼らの考察の中には「これは伏線だ!」「フラグでは!?」など、ストーリーをつくる側にとっての技術を理解した指摘が多い。
公募で賞を獲り、いつかはつくる側になりたいと思う人ほど、そういった考察班なる人々の声が身近だったりするのではないだろうか。小説やシナリオの書き方を学んでいるからこそ、自分自身も実は見る(読む)側としては考察班だ、という人もきっといるだろう。
そうなってくると、公募用の作品を書く際に、「絶対に見破られない伏線を張らなくては……」「審査員の度肝を抜く(この意気込みは正しい)伏線回収を入れなくては」などと、強く思い、そこで立ち止まってしまうこともあるだろう。
では、実際に審査員たちが「伏線回収」についてどう考えているのかを見ていこう。
文学賞、シナリオ公募審査員たちのアンケート結果
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伏線回収をうまくストーリーに入れれば評価されるのか?

「伏線回収」を評価すると言いつつも、それだけで決まるわけではない理由がそれぞれあることがわかる。ミステリ系の文学賞であっても、「伏線回収」の巧拙だけでは大きく評価が決まらないというのは、ハードルが高いといえば高いが、「伏線回収」はほどほどに、それ以外のところでストーリーの面白さを生み出せばいいともいえる。
大前提として、「伏線を張って」、物語が進んだ先で「回収」される必要があるため、長編の文学賞でなければ「伏線回収」を盛り込むことはそもそも難しい。短編、中編の場合は、別のポイントで勝負するのが良さそうだ。
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応募作品の中には、「伏線回収」が逆効果になっている作品が見受けられることはありますか?

「伏線回収」が逆効果になっている具体例としては以下。
- 登場人物の言動がわざとらしく、伏線であることが予測できてしまう
- 伏線回収含め、ミステリとしての技や整合性に囚われるがために、登場人物の設定や人物像と乖離した行動を取らせている(このキャラがこんな行動するわけないと思うのだが……みたいな)原稿は散見される
また、「伏線回収」が生かされているかどうかは「作者の筆力と、ストーリーや展開がちぐはぐになっていないか」で判断する、という声もあった。
最初の設問結果から考えても、無理をしてまで「伏線回収」を入れる必要はないだろう。それならば審査員はどこを重視しているか?
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伏線、その回収がスマートであることよりも受賞の決め手となり得るのはどんなものでしょうか?

キャラクターの魅力に触れた回答が半分以上を占めた。「総合的判断」については、文章力も含めた全体的な技術を求められており、ここにはおそらく「伏線回収」も技術のひとつとして入ってくるだろうし、キャラクターの魅力も入ってくる。これはなかなか厳しいハードルだが、今後プロとしてやっていく上で必要な筆力を求めてのことだろう。
どんなジャンルの賞を目指すとしても、まずはキャラクターをしっかりつくり込むことからはじめてみるのが良さそうだ。
もう一つ、興味深い結果を見てみたい。
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読者の間では「伏線回収の巧みさ」を重視する傾向が長く続いているように思いますが、このトレンドについて選考委員や編集者の皆様はどのようにとらえていますか?

この問いでは、「読者が求めている要素であり、エンターテインメントとして重要だと思う」という選択肢もあったが、それを選択した主催者はゼロだった。
物語の中でうまく機能していれば評価はされるが、「伏線回収=良作」という基準ではないことがわかる。
新人賞で重視されるのは伏線回収だけではない
結果的に、「伏線回収」はマストではない、マストだとしても「伏線回収」だけが評価されるわけではないことがわかった。
「伏線回収」が巧みな作品は、読み手としてはワクワクするものだ。一方で、書き手を目指すならば、「伏線回収」はあくまで、物語をどんどん読み進めさせるために身に着けておきたい技法のひとつだと捉えておこう。
もし、ストーリーには必ず「伏線回収」を入れなくてはいけない、しかも得意ではない、と悩んでいたら、ぜひ以下の主催者からのエールを受け取ってほしい。
- 読者を楽しませようとするその姿勢、本当に素晴らしいです!
- 伏線回収等が上手く機能しているのか、といった技術的な不安があるのであれば、知人・友人などの第三者に原稿を読んでもらい、意見を乞うのが良いかと思います。ただ、新人賞の選考・下読みにおいては「技術」と同じくらい、書き手の「熱量」を感じたい、とも思っています。(新潮ミステリー大賞)
- 特に伏線だけを考えるのではなく、観客や視聴者に、どうする? どうなる? と思わせて、より引きこんでいくことを考えてみて下さい。(シナリオS1グランプリ)
- 選考過程を見ていると、技術も評価されますが、将来性も大きな評価点だと感じます。福ミスは、受賞作が必ず書籍化されます。そして、今後長く作家として書き続けてくださる方を期待しています。あなたの作品をお待ちしております!福ミスで作家デビュー目指しましょう!(島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞)
- 伏線など意識しなくていいと思いますし、また回収しなければと強迫観念を抱くこともないと思います
アンケートにご協力いただいた主催者のみなさま、ありがとうございました!