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ミステリー仕立て版「桃太郎」|伏線は「裏」から生まれる

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ミステリー仕立て版「桃太郎」

おじいさん黒幕版「桃太郎」で伏線を張ってみる

前回、おじいさん側のストーリーを考えたが、ここには謎解きのヒントがいくつかある。
たとえば、おじいさんは犯行の現場に根付を残してしまっているし、また、桃太郎は桃から生まれたと釈明しているが、実は本当の息子だから顔は似ているはずである。
こうした表と裏の齟齬を使い、「実はこう」ということをにおわせるのだ。
では、実際に伏線を張ってみよう。

 

〔ミステリー仕立て版「桃太郎」〕

  1. 伏線A おじいさんには自慢の印籠があり、それを根付で帯につけている。
     
  2. 伏線B  桃太郎は出自を聞き、「人って桃から生まれるものなの?」と聞く。
     
  3. 伏線C 血縁関係はないと言うが、なぜか桃太郎はおじいさんの若い頃にそっくり。
     
  4. 伏線D おじいさんは、桃太郎が幼い頃から、「鬼がいかに残虐か」を語り、「悪いことをしたら罰せられなければならない」と諭す。
     
  5. 伏線E 桃太郎はおじいさんのことが大好きで、直情型の人物だったから、鬼は悪だとまともに信じてしまう。
     
  6. 伏線F あるとき、村人の家が荒らされる事件が起こり、現場に虎のパンツがある。おじいさんは、「虎のパンツと言えば鬼だ、鬼が犯人」だと断定する。
     
  7. 桃太郎は村を救おうと、家来を連れて鬼退治に出かける。
     
  8. 伏線G 途中、茶屋のおやじに鬼について聞くと、「鬼たちはとても優しく、つい最近もうちの子の病気を治してくれた。あの人たちが犯人とは思えない」と言う。
     
  9. 伏線H 鬼ヶ島に渡し舟で渡る。そのとき、船頭は「旦那、15年前も来たね」と言う。 桃太郎は「他人の空似だよ」と言う。
    →伏線Cの「血縁関係はないはずなのにおじいさんにそっくり」の回収。
     
  10. 伏線I 鬼ヶ島に着き、鬼と戦いになるが、鬼は弱く、簡単に征伐できてしまう。しかも、盗んだとされる財宝は持っていない。また、鬼は虎のパンツなど履いておらず、そのことについて桃太郎が問うと、「私たちが虎のパンツを履いていたのは昔のこと」と言われる。
    →伏線F「『虎のパンツと言えば鬼だ、鬼が犯人』と言った(そんなことを言うのは老人)の回収。
     
  11. 伏線J 鬼は、「どうせ秘薬が欲しくて来たのだろうけど、もうここにはない、秘薬は15年前に盗まれた。犯人はわからないが、根付(留め具)を落としていった」と言う。
    →伏線A「おじいさんは印籠を根付で帯につけている」の回収。
     
  12. 桃太郎は、なぜ鬼が悪いやつだと思い込んでしまったのだろうかと考える。
    →伏線E「桃太郎はおじいさんに、鬼は悪だ信じ込まされている」ことの回収。
     
  13. 伏線K 桃太郎は村に帰るが、鬼は殺さず、生け捕りにしたと言い、村の牢に入れる。
    →伏線G「茶屋のおやじの弁」や伏線I「鬼が弱い」ことから、殺していいものか迷う。
     
  14. 深夜、寝静まったところ、牢に忍び込む者があり、その男が鬼を殺そうとしたとき、桃太郎が現れ、「おじいさん、何をしておいでですか」と言う。
    →伏線K「おじいさんが怪しいと思い始めていた」伏線の回収。
     
  15. 茶屋のおやじが言った「鬼は優しい」、船頭が「15年前にも来たね」(おじいさんと桃太郎はそっくり)、現場に落ちていた根付(おじいさんのもの)から、犯人はおじいさんだと推理。実際、おじいさんの部屋から、鬼が盗んだとされていた財宝が出てくる。
    →伏線G「茶屋のおやじの弁」、伏線H「船頭の弁」、伏線J「根付という遺留品」の回収。
     
  16. 鬼が悪者であるかのように吹きこみ、ぼくを鬼退治に行かせたと見抜く。
    →伏線D「子どもの頃から鬼は残虐と聞かされていた」の回収。
     
  17. 桃太郎は「ぼくはおじいさんの実の子」と推理する。
    →伏線B「桃から子どもが生まれるものなのか」という疑問の回収。
     
  18. 桃太郎は、おじいさんは処罰する。
    →伏線D「悪いことをしたら罰せられると洗脳されていた」こととの整合性という回収。


伏線がA~Kの11個張られ、すべて回収された。
これだけのことが、比較的楽に考えついたのは、事前におじいさん側のストーリーを考えたからだ。

では、最後に「伏線の張り方」を公式化してみよう。
 

  1. 謎を解かれる側のストーリー(裏)を考える。
    行動の動機、きっかけ、何を、どうして、どうなったかを考える。
     
  2. そのときに、謎を解かれる側は重大なミスを犯す。
     
  3. 以上を踏まえ、表のストーリーに伏線を張る。
    裏を知っていると、表と裏の齟齬を使い、違和感やにおわせをだしやすくなる。
     
  4. 張った伏線を順次回収していく。
     

表から見ると伏線につぐ伏線で複雑なストーリーに思えるが、全くそんなことはない。誰だってできる方法だ。
表からでは何も思いつかなかったら、裏のストーリーを考えてみよう!