【エッセイストになるには?】気ままに書いたエッセイが仕事につながった!村井理子さんの「楽しむ力」の強さ


何気ない日常の中にも面白いことは山ほどある
面白いことはないかと探す癖をつける
当たり前の日常を書きながら、それを面白くするにはどうしたらいいだろうか。
「私は子どもの頃から、面白いことがないかとずっと探しているタイプで」
先日も、村井さんがスーパーに行ったところ、豆腐に話しかけていたおじいさんがいたそうだ。
義理の父を病院に連れていったときも、義父がトイレに行って戻ってくると、パンツが出ていて、思わず写真に撮ったとか。
「この前もスーパーのレジで、おばちゃんが『モバイルのチケットありますか』と言うので、『ないです』と言うと、『あんた、スマホ持ってるやん、モバイルチケットあるやろ』『ええよ、面倒くさいから』『なんでや、自分のお金のことなのに』って、関西のおばちゃんはおせっかいですね」
面白いことは日常に山ほどある。それを書こうという目で見ないと気づけないが、創作の目で見れば見つけられる。探す癖をつけよう。
好きこそ最善の方法 書くことを仕事にするということ
楽しんでやっていると仕事が寄ってくる
翻訳家になるつもりはなかったという村井理子さん。きっかけは、WEBの学校に通っていた友人の卒業制作だった。
「友人がWEBサイトを作ることになり、ジョージ・W・ブッシュ大統領の妄言を翻訳し、載せてもらったのですが、それが『ダカーポ』に転載され、翌日、出版社からぶわーっと電話がかかってきて、あれよあれよという間に……」
『ブッシュ妄言録』が売れると、取材が殺到し、派遣社員で働いていた会社は居づらくなって辞めた。エッセイを書き始めたのは、ちょうどその頃、20代後半。
「エッセイはWEBで書き始めたのですが、上司の悪口(笑)とか、ペットのこととか、『お好み焼きチャレンジ』とかいって30枚ぐらい焼いて重ねたりとかやっていました。まじめに書きたいという気持ちは全くなく、楽しいことをやりたいだけでしたね」
本人が楽しんでやっていると読む人も楽しく、それを見た出版社の人から連絡があり、エッセイも依頼されて書くようになった。
村井さんの場合、翻訳家になるつもりもエッセイストになるつもりもなく、楽しんでやっていたら、仕事のほうが寄ってきたという結果になった。夢を実現させるのに、好きに勝る方法はない。
村井理子さんが「やられた!」 と思ったエッセイ
寿木けい著『閨と厨』(CCCメディアハウス)
妻、母、働く女、娘として日々を生きる40代。明日も果敢であるための打ち明け話20編を収録。ツイッター「きょうの140字ごはん」著者初のエッセイ。
「Twitterフォロワー11万人超の寿木けいさんの『閨と厨』はすごい! いったいどこからひねり出してくるのかという表現! 令和の向田邦子です」
「やられた!」 と言わせるために エッセイ人間に私はなる
なんでもエッセイにしてしまう、そんなエッセイ人間になるには?
好奇心、文章力、誰かに伝えたい欲
エッセイ人間とは、エッセイが好きで、見るもの聞くもの、すべてをエッセイの素材にしてしまうような人。エッセイが書きたい、書かずにはいられないような人のことを指す。
そんなエッセイ人間になるには、何が必要だろうか。
まずは好奇心。これが0だと始まらない。何を見ても「へえ」と興味を持ち、手を出してみようと思う。それぐらいの野次馬根性があったほうがいい。
好奇心が乏しい人は、なるべく疑問を持つようにしよう。「星はなぜ落ちないのかな」のようなことでいいので、疑問を持てば答えを得ようとして調べ、調べれば興味がわき、好奇心が育つ。
次は文章力。この素質は持っている人が多く、また、筋力と同じで、書けば書くほど上達するので心配はいらない。
最後は、誰かに伝えたいという欲。これがないと日記で自己完結してしまう。「恥ずかしい」という感情が発信を阻害することも。
だが、幸い私たちには公募がある。余計なことは考えずに応募してしまえば、この問題は解決する。
エッセイを書いて、成果を出すには?
入選したい、エッセイストになりたいと思うなら、人とは決定的に違う特徴を持ちたい。
オリエンタルラジオの中田敦彦は「優れるな、異なれ」と言っているが、エッセイの場合も「うまくなろう」ではなく、「人とは違う自分であろう」とするのが近道。
あなたにキャッチフレーズがつくようなら成果が出る日は近い。
エッセイ人間になるために必要な“力”
【 興味力 】
好奇心が旺盛で、どんなことにでも興味が持てる、あるいは一つのことにのめり込める能力を“興味力”と言う。興味力は行動力の源泉。
【 文章力 】
文章力は基礎体力のようなもの。あって当然。なければ文章という山には登れない。文章力は筋トレと同じで、書けば書いただけアップする。
【 発信力 】
書いたものを誰かに伝えたい欲、またはその効果。欲は今はなくても徐々に募ることがある。効果が出るようにするには特徴、個性が必要。
村井理子
1970年静岡県生まれ。翻訳家。訳書に『ブッシュ妄言録』など。エッセイも手がけ、『村井さんちの生活』『更年期障害だと思ってたら重病だった話』『兄の終い』ほか著書多数。ぎゅうぎゅう焼きの考案者。
※本記事は2021年11月号に掲載した記事を再掲載したものです。