第35回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「名人」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第38回 [ サプライズ! ]
9/1~9/30(消印有効)
■第39回 [ 眠り ]
10/1~10/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
名人
今回は、充実した作品が並び、読んでいても楽しかったです。頭を痛めたのが最優秀ですが、一見「最優秀っぽくない」作品を選ぶことになりました。そういうときもあります!
最優秀作は、有原野分さんの「人生の名人」。これは、生きてゆくときに出会うもの、起こること、すべてに楽しみを見つけようとする「人生の名人」の物語。そんな「私」を他の人たちは馬鹿にするのである。だが、「私」は平気だ。人生が終わるときになっても、次の世界を楽しみに待つことができるからだ。お話は、以上。オチも意外な展開もありません。直球で「人生の名人」を描いただけ。そのシンプルさが最高です。いままで、こんなタイプの作品はなかったですね。逆転の発想というべきでしょうか。
篠原ちか子さんの「冬のご馳走」も、最後のオチで大逆転。びっくりです。雪の日、バスを待ちながら、「わたし」は、猟師で「ワナ猟の名人」と呼ばれた祖父のことを思い出している。たとえば、野ウサギがワナにかかって死んでいた。祖父は「かわいそうだが、こいつらは悪さをするでな」と言うのだ。さて、この日、わたしは夫の好物のトリ鍋セットを買って、家に戻ろうとしている。いったい、家に帰ることと「名人」とは、どんな関係があるのか。なんと……小説自体にワナが仕掛けてあったのです!
桜坂あきらさんの「レントゲン名人」は、タイトル通り、女性の下着が透きとおって見えてしまう名人がテーマ。舞台は「名人を探せ」という素人参加番組の公開収録の場。出てくる自称「名人」は、たいしたことのないやつばかり。そこで司会者が「他にはおられませんか?」と声をかけると、「レントゲン名人」が手を上げるのだ。信じられない? そこで実際に、司会者が会場の女性二人組を指名して調べてもらうと、ほんとに二人とも正解! このお話、そこからのオチが秀逸。なるほどそう来るのか、と感心しました。
宮本享典さんの「Roland Kirkには遠く及ばない」のタイトルにあるRoland Kirkは大学のジャズ研でテナーサックスをやっている「おれ」のあこがれの人。ちなみに、ぼくも好きです。この方は「循環呼吸」という、鼻から息をすいながら口から息を途切れなく吐く奏法で有名なのだが、もちろん「おれ」もその奏法に挑戦している。そして、一旗上げるため、有名なジャズのライブハウスの「ジャムセッション」に参加する。そして……「名人」は「おれ」ではなく、オチに出てくる人物でした。楽しい作品ですね。
宇田川千鶴子さんの「吸血鬼はお助け名人」は、「吸血鬼の末裔」である「僕」の物語。「僕」は末裔なので、太陽の光を浴びても、ニンクク問屋で働いても平気。食事は雑穀もいける。深夜に飛びこんだ病院の輸血パックかコンビニのカロリー液があれば大丈夫。そんな「僕」は、ビルの屋上で「悩み相談」の仕事をしている。ある日、「僕」のところに「一度も恋愛したことがない」処女の女性がやって来る。そして、「僕」は彼女の相談にのるのだが……面白いお話だが、肝心の「名人」のところが弱かったのが残念。
籾木はやひこさんの「ハエ取り名人」は、文字通り、ハエを取ることに卓越した天才のお話。主人公の「おれ様」は、なんとハエ(笑)。しかし、「飛ぶこと」の天才なのである。ハエにも天敵はいるが、「おれ様」は頭とテクニックを使って生き抜く。人間など目じゃない。あまりにものろくて、バカにしているくらいだ。というか、人間をからかうことを人生(ハエ生?)の目標にしているくらい。ところが、ある日、人間の世界の「ハエ取りの名人」に出会う。その名は……このお話も展開がちょっと予想通りすぎだったか。
村木志乃介さんの「お母さんは料理の名人」は、ほとんど食事の場面だけが書かれている。「浩介」の前の食卓には「鍋」が置いてあって「獣の体臭を思わせる生臭いニオイが充満している」。なんだかそれは「父の体臭」のようでもある。そういえば、ここ数日、父は不在だ。ふだん肉を食べることなどないというのに、肉の大盤振る舞いだし。食べる。美味しい。だが「不思議な味」だ。そして、「母」は「学校では内緒に」と言うのだ。いったいなぜ。みなさんの予想通り。でも、この作品ちょっと「後味」悪いです。
雪宮鷺さんの「美の名人」は、「一人の平凡な女」が主人公。その女は、すべてが平均的だったが「一つだけ、人と違うところがあった」。鏡を買ってきて粉々に割ることだ。そんな女のところに、一人の男がやって来て、「悪魔」と名乗り、あなたを美しくしてあげよう、と申し出る。信用できないよね。魂と交換するんでしょ。そう疑う。だが「悪魔」は、最近大量の魂をゲットしたから、なにもいらないというのである。もちろん、女は「悪魔」の言う通りにする。そして……ちょっと結末の意味がよくわからないんですが。
■第38回 [ サプライズ! ]
日本語にすると「驚き」とか「びっくり」、あるいは「不意打ち」でしょうか。いいサプライズも、歓迎できないサプライズもあります。人生を振り返ると、あれはほんとにサプライズだったってことありますよね。
■第39回 [ 眠り ]人生の三分の一近く、我々は眠っています。すごいです。三分の一が「眠り」で、残りの三分の二で、他の人生の課題を分けあっているようものですね。さあ、人生最大の課題に挑戦してください。眠る前にね!
■第38回 [ サプライズ! ]
9/1~9/30(消印有効)
■第39回 [ 眠り ]
10/1~10/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。縦書き、横書きは自由。ただし、選考は縦書き、発表は横書きで行う。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
AIを使用した作品は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第38回 12/1、Koubo上
第39回 2025/1/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
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● WEB応募
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「第〇回小説でもどうぞ」係
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