第34回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「最後」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第37回 [ すごい ]
8/1~8/31(消印有効)
■第38回 [ サプライズ! ]
9/1~9/30(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
最後
今回はテーマのせいか、あまり考えなくとも「オチ」が自然とできてしまうものが多かったようです。だからこそ、そこでもう少しなにかが加わると良かったですね。
最優秀賞は尼子猩庵さんの「母校へ」。「廃校になっていた小学校が取り壊されると聞いて」出かけてゆく「私」。二十年ぶりくらいで訪れた母校。すると、「私」より先に訪れている人がいる。五十歳くらいの「上品なご婦人」だ。ふたりは揃って、廃墟となった母校を彷徨う。時に、学校に伝わる、怖い話をしながら。なんだかだんだん無気味な雰囲気に、すると……最後に、お話は趣を一変。いや、びっくりしました。読者として見事に裏切られました。こう来るとは。確かに、これこそほんとうの「最後」かも。
ともみさんの「自由研究 時を止める方法」。なぜ、「時を止める方法」なのかというと、夏休みの宿題が終わっていない「村田さん」が、勝手に「黒魔術みたいなのに詳しそう」と思いこんでいる「僕」に、夏休み最後の日が終わらない方法を教えて、と頼んできたから。思いついた方法は、順に「つまんないことをする」。確かに。次が「アメリカに行こう!」。時差を利用するわけです。でも「僕」が飛行機が怖いからダメ。最後が「走ろう」。苦しくて時間が長く感じるから。もちろん全部ダメ。でも、最後がなんか素敵です。
K蔵さんの「伝説の勇者」は、ダンジョン最深部まで到達した「勇者」と呼ばれる男のお話。強大な魔力を持つドラゴンが目覚め、いまや世界は破滅の危機。ドラゴンを倒すため結成されたパーティも一人ずつ倒され、最後に残った「勇者」がドラゴンと戦うのだ。だが、ドラゴンはあまりにも強かった。突如、「勇者」に閃きが。もしかしたら「太陽が苦手なのでは!」。「勇者」はすべての魔力を集中して大地を割り、日光を呼びこむ。ついに勝った……ところでお話は終わらない。ここに続く、真の「終わり」が泣かせます。
那雪想さんの「最後の予言」、「私」の一人息子「コトハ」は、死を予言する能力を持っている。その力を「私」はビジネスにしたのだ。母子家庭にはお金が必要だからだ。或る日、ホームレスのおじさんに、病院に行かないと半年以内に死んでしまう、と「コトハ」は教えた。それに対して「私」は、金のない人間に予言する必要はないと冷たく言い放つ。それから「コトハ」は「私」と会話しなくなる。反省した「私」は、自由に予言を使ってもいいと言うのだ。すると「コトハ」は……怖い終わり。でもちょっと無理があるかも。
蒼月さんの「n回目の最後」は、どうしようもないダメ男のお話。「これで最後にしよう」と何度思ったことか。ゲームで、「推し」のためにアイテムをゲットする。もちろん、課金する必要がある。仕方ない。それは「私の生き甲斐」なのだから。だが母は、厳しく指摘する。「全然貯金してないじゃない」。グッ。その通りなのである。確かに、貯金するどころか、貯金はどんどん減っている。わかっているが止められないのだ。一念発起して、課金を中断。やればできる。そして……まあ、そうなるよねという最後でした。
立花ヌカ子さんの「最後の手紙」、主人公の「トシオ」は「自分の口から酸素マスクが外されるのを見下ろしている」。人生の終幕である。病室には長女と孫のリンタロウがいる。どうやらリンタロウには「トシオ」を感じることができるらしい。そんな「トシオ」は「スタッフと書かれた腕章を巻き」「タブレットを持っ」た「背広姿の男」に案内されて「区役所のロビーのような場所」に行く。そこで、自分が残した遺産分配をめぐる手紙の運命を知るのだ。最後に、その手紙は……いいお話だが、もう一工夫欲しかった。
湯崎涼仁さんの「最終出社日」は、会社で最後の日を迎える「私」の物語。送別会嫌いの「私」のために、それでも、部下たちが一言挨拶をしたいと集まる。女子社員からは花束贈呈。みんなからの優しい言葉に、再雇用を断ったのを後悔していると呟くと、なんと「私」がやっているようなことは、いまやAIやデータがやっているから、不要だという真実を知るのである。愕然として会社を去る「私」。最後はリムジンでの送迎。運転手と交わす深い会話、と思っていたらなんと……もはや最後が最後にならない日が来るとは。
有原野分さんの「嘘ばかり」は、棺桶の中にいる「わたし」の呟きから始まる。なぜそうなったのか。それはパワハラ上司に我慢できなくなったからだ。鬱と診断されたら「私の評価がどうなる、勝手に死んだらいいじゃないか」といわれたのである。この顛末を妻に告げると、偽装死を用意してくれる会社があるからそこに頼むといい、遺族には保険金・慰謝料が入るし、会社にダメージも与えらると。かくして「死んだ」「私」はとりあえず棺桶の中にいるのだった。だが……結末は予想できますね。それにちょっと不自然。
■第37回 [ すごい ]
いろいろあるでしょ。「すごい!」と唸ることが。本を読んで、テレビを見て、人と会って、何かを食べて、SNSで見て、思い出して、等々等々。人生の中で出会う「すごい!」を教えてくださいませ。
■第38回 [ サプライズ! ]日本語にすると「驚き」とか「びっくり」、あるいは「不意打ち」でしょうか。いいサプライズも、歓迎できないサプライズもあります。人生を振り返ると、あれはほんとにサプライズだったってことありますよね。
■第37回 [ すごい ]
8/1~8/31(消印有効)
■第38回 [ サプライズ! ]
9/1~9/30(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。縦書き、横書きは自由。ただし、選考は縦書き、発表は横書きで行う。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
AIを使用した作品は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第37回 11/1、Koubo上
第38回 12/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
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