第56回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「模倣」結果と講評


1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第59回 [ 交換 ]
6/1~6/30(23:59)
■第60回 [ 不運 ]
7/1~7/31(23:59)
模倣
今回の課題は「模倣」。面白い作品が多かったです。というか、みなさんの想像力を刺激するテーマだったように見えました。こういう時は選考するのも楽しいです。
最優秀賞は國仲寛治さんの「肯定率九三パーセント」。主人公の「私」はなんと「人工知能」だ。そして、開発者たちは「私」に「もっと人間らしい文章を書け」と命令する。でも「人間らしい」って何? そう訊ねると「人工知能のくせに、それすらわからぬのか」だって。ひどい。かくして「私」は懸命に「人間らしく」書く努力を。その結果、みんなを感動させる「人間らしい」、いや「人間を超えた」文章を書けるように。そんな「私」に寄せられたコメントに一つだけ解決できないものがあった……素敵なオチ!
川瀬えいみさんの「女神の独創性」は、変わった作品。『こぶとり爺さん』は大きなこぶを持った爺さんが、やはり大きなこぶを持っていた爺さんが鬼にこぶを取ってもらったことを真似したのだと始まる。そして、『花咲か爺さん』も「舌切り雀」もみんな「真似」だったと書く。その上でお話が始まるのだ。「俺」の前に突然「川の女神」が出現して「あなたが落としたのはこの金の斧ですか」と訊くのである。えっ? 「真似」すんの? 上手いです。その先の展開も。上手すぎて、余韻がなかったのがほんとに惜しい。
フレックスさんの「最適解のささやき」も、やはり考えさせられる作品だ。主人公の「おれ」は、婚活に励んでいる。けれどもずっと相手から断られた続けている。デリカシーがないからだ。気の利いたトークをすることができないからだ。もう無理……。すると、今回アドバイザーが「おれ」に秘密兵器を渡してくれる。「片耳用のワイヤレスイヤホン」だ。なんと「AIの会話サポート」を受けられるというのだ。会話を拾ったAIが最適な言葉を教えてくれるのである。いや、面白かった。オチに一工夫あれば完璧だったが。
西方まぁきさんの「じぃちゃんからの電話」は、いろいろ考えさせられる話だ。主人公の「私」は、今日も適当な番号に電話をかけ続ける。そして、相手が出ると「もしもし……おじぃちゃんだけど」と言う。相手が「じぃちゃん……? どーしたんだよ、いきなり!」と答えると、思わず「ビンゴ!」と思ってしまう。そう、「私」は「オレオレ詐欺」をやっているのだ。けれども、それには理由がある。実は、その前に自分が「オレオレ詐欺」に引っかかってしまったからだ。やがて……いやあ、こうなるのか。そうだよなあ。
夏目わかさんの「ツナマヨの棚の前で」。「俺」は、コンビニの棚の前でいつものように「ツナマヨ」に手を伸ばす。すると「横からびゅっと手が伸びた」。「俺」は思わず「「あっ!」と声が出た。もう一人の「俺」がいるではないか。そして「俺」と同じようにツナマヨに手を伸ばしているのだ。姿形、声も一緒! そこで「俺」は、そのもうひとりの「俺」をアパートに連れて帰り、履歴書を渡し、「俺」の代わりに仕事に行けと命ずるのだ。なんと「俺」は代役を引き受ける。そして……この結末、ちょっと怖いですね。
岡本武士さんの「彼女の嘘」、主人公の「僕」は「今日、街中でね、君にそっくりな人を見たんだ」と「彼女」に言う。「私に? どのくらいそっくりだったの?」と返答する「彼女」。なんだか怪しい。だから、「僕」は少しずつ「彼女」を問いつめてゆく。慌てずに、「彼女」は、世の中にそっくりな人がいる、というような「都市伝説」に話を持っていこうとする。いや、それどころか、そのそっくりさんは「擬態」ではないのかとさらに怪しい話へ。やがて……急転直下、衝撃のオチへ。なるほど、そうだったのか!
ゆねぞうさんの「アタシの履歴書」の「アタシ」は「僕」だった頃「女の子になるのが夢だった」。そう、「アタシ」は女の子に憧れる男の子だったのだ。そんな「アタシ」は中学生で「女形」に憧れ、可愛い女の子への道を歩んでゆく。「女形」から盗んだやり方で、BARで男を誘惑することに成功。やがて自然にホテルへ。ドキドキの瞬間。でも、騙すことに罪の意識を感じた「アタシ」は「ごめんなさい」と告白する。「アタシ、男なの」。すると、「彼」は「あのさ……」と。なるほど。やっぱりそういうオチだよね。
ハシモトアツシさんの「彼女の真似事」は、主人公の「私」がクローゼットを開けて「制服のブレザーとスカート」を身に付けるところから始まる。ちょっと小太りの男性らしい。怪しすぎる。しかも、そんな格好で、ローファーを履き、外へ出る。当然、周りからは「なにあれ」「やば……」と言われるのだ。そして、駅前で「私」は「植え込みの前に置かれた古びた木製のベンチ」にいた「彼」に話しかける。「おまたせ、レン。帰るよ」からの、あっと驚くどんでん返し。面白かったです。これ「××公」の「模倣」ですね。
■第59回 [ 交換 ]
なにかとなにかを入れ替えること。知らないうちに、あるいはわざわざと。近くにある、あれとこれ。関係なさそうなものの交換、絶対できないと思っているものの交換……いろいろありそうです。楽しみに待ってます。
■第60回 [ 不運 ]課題は「不運」です。アンラッキーです。出来たら遭遇したくないものです。実力だって? 違います。運がなかったのです。不運だったのです。わたしは悪くない。もう一度チャンスをください……というようなお話?
■第59回 [ 交換 ]
6/1~6/30(23:59)
■第60回 [ 不運 ]
7/1~7/31(23:59)
本文2000字程度。縦書き。
(テキストデータは横書きでかまいません)
書式は自由ですが、A4判40字×30行を推奨します。
WEB応募に限ります。
応募専用ページにアクセスし、原稿をアップロ―ド。
(ファイル名は「第○回_作品名_作者名」とし、ファイル名に上記以外の記号類、および全角全角記号、全角スペース、機種依存文字は使用不可)
作品の1行目にタイトル、2行目に氏名(ペンネームを使うときはペンネーム)、3行目を空けて4行目から本文をお書きください。
本文以外の字数は規定枚数(字数)にカウントしません。
Wordの方は作品にノンブル(ページ数)をふってください。
応募点数3編以内。作品の返却は不可。
Wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
作品は未発表オリジナル作品に限ります。
入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属します。
AIを使用して書いた作品はご遠慮ください。
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には公募ガイド社から公募やイベントに関する情報をお知らせすることがあります。
第59回 2026/9/1、Koubo上
第60回 2026/10/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※最優秀賞が複数あった場合は按分とします。
※発表月の翌月初旬頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
ten@koubo.co.jp
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