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高橋源一郎の小説指南「小説でもどうぞ」第11回「別れ」結果発表

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作文・エッセイ
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小説でもどうぞ
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第14回 [ 忘却 ] 
9/1~9/30(消印有効)

■第15回 [ 表と裏 ] 
10/1~10/31(消印有効)

※募集期間外の応募は無効になります。

第11回結果発表
課 題

別れ

最優秀賞

 最優秀賞になった山崎雛子さんの「しばしのお別れ」はこんなふうに始まっている。
「『私たち、もう終わりにしましょう』
 そう言うと、女は静かに銃口を向けた」
 えっ? なんかヤバくないですか。これはなにかの間違いではないかと思って読んでいくのだが、状況は変わらず、「俺」は、どんどん「彼女」に追い詰められてゆく。もしかして、「俺」の「今生のお別れ」を描いているの? と思った瞬間、大どんでん返しが! なるほど。そう来たか。感心しました。そこまでわかりませんでしたよ! 粋な「別れ」ですよね、ほんとに。

佳作

 遠木ピエロさんの「手からこぼれ落ちた現実」の「別れ」とは、「物心つく前に離婚し」、「それっきり生き別れの状態となった」父親との「別れ」だ。「私」はずっと、その記憶にない「父親」のことを考えて生きてきたのである。そして、「私」にとって、「父親」との繋がりは、彼が考えてくれたという自分の名前「三玖」だけだった。もちろん、「私」にとって、その名前は「宝石」のように尊いものだった。やがて、ある偶然から、「私」は「父親」と出会う。そして、自分の名前の由来を知るのである。えっ? マジで? ちょっときつい、皮肉に満ちた作品だった。こういうテイストも、ぼくは好きです。

「佐々木さん」
むらきわた

 むらきわたさんの「佐々木さん」は、ちょっと変わったお話だ。「私」と「ペアを組んで」働いていた「佐々木さん」。それは、「自社製品に関する」お客様からの声をまとめる仕事で、ふたりでずっと続けてきたのだ。ところが、ある日、「佐々木さん」は、仕事をやめるのと伝えてくる。なぜだろう。はっきりした理由はないのかもしれない。でも、よく考えてみると、仕事をするのにもはっきりした理由なんかないのだろう。「佐々木さん」は、送別会も断り、ひとりひとりに直接「別れ」を告げて去ってゆく。当たり前のようで当たり前じゃない風景。そして、「私」も会社をやめようと決めるのである。なにかがわかったような気になる作品だ。


 香久山ゆみさんの「さよなら地球」は、タイトル通り、地球に「さよなら」を告げる物語。地球に巨大隕石が近づき、滅亡が近づいている。けれども、著名な学者たちは、ミサイルを撃ち込み破壊すれば大丈夫と声明を出す。それは不可能だと訴えていた「僕」は、ひどいバッシングを受け、最後の日に、一雙の宇宙船に滅びた地球を再建するための生命の種子を積んで出発する。実は「僕」はロボットで、「僕」以外のロボットたちは「脅威が去った後、人間が再び生活できる環境を再生する」ために残るはずだった。ところが……。単純に地球や人類との「別れ」があるのではなく、もっと苦い「別れ」があることが最後に明かされる。おもしろかったです。


 川畑嵐之さんの「さらば愛しき別れ」。「私」には、どうしても忘れることができない「別れ」があった。それは、学生時代からつきあってきた「映美」という女性から、ある日突然、別れをきりだされたことだ。「それは本当に青天の霹靂でショックで言葉がでなかった」。そのショックを引きずって生きてきた「私」は、ある日、ついに彼女の実家を訪れる。そして、そこで「年配の人」に出会い、家に入れてもらう。そこで、「私」が発見したものは……。まことにもって、納得のエンディングなのだが、ちょっと当たり前すぎたのが残念。ショートショートなのだから、もう一ひねり欲しかった。

「某日」
橙貴生

 橙貴生さんの「某日」は、謎めいた作品だ。「一人住まいの部屋に帰ると、お父さんがいた」という文章で始まる。「お父さんがこの部屋に来たことは、一度もない」というのに、なぜ来たんだろう。そして、「わたし」と「お父さん」は、喉の奥に何かがつかえたような不思議な会話を続ける。「せっかくだから、何か食べてみたら」、「ついでに、お酒も飲んでみれば」。この「親子」の関係はどうなっているのだろう。終わり近く「お父さんは、ずいぶん若返ったように見えた。それは少し寂しいことだった」と「わたし」は思う。そして、なんともいえない結末が待っている。たぶん、そういうことなんだろうな。


 箕田はるさんの「旧トンネル」は、「有名な心霊トンネル」を訪れた「俺」の物語。「俺」は、「仲の良いメンツに無理やり連れて来られた」のだ。この「高確率で霊障が起きるということで好評の場所」に。何とも不気味な感じがする。というのも「俺には霊感が多少はあるからだ」。そういうわけで「俺」は相棒と一緒にボヤきながら進んでゆく。しばらく歩くと「遠くの方にやっと、淡い光が見え始める。トンネルの終わりが、近づいてきたようだ」。うん? いったい、何との、どんな別れなの? それは……その種明かしは、想像してください。なるほど、そうだったのか! そう思いますから。

応募要項
課 題

■第14回 [ 忘却 ]

最近、忘れちゃうんです。なんでも。老化のせいでしょうか。でも、ちっちゃいときのことは覚えてたりする。不思議ですね。みなさんは、どんなとき、何を忘れましたか? 大切なこと? つまらないこと?

■第15回 [ 表と裏 ]

今回はちょっとひねった課題です。誰にでも何にでも、表の顔と裏の顔がありますよね。だいたい、ぼくたちは誰かの(なにかの)一つの顔しか知らない。そして、そうじゃないもう一つの顔を観てびっくりするんです。

締 切

■第14回 [ 忘却 ] 
9/1 ~ 9/30(消印有効)
■第15回 [ 表と裏 ] 
10/1 ~ 10/31(消印有効)

規定枚数

A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。

応募方法

郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、表紙にはタイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。

※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、最優秀賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

発 表

第14回 12/15、公募ガイドONLINE上
第15回 2023/1/15、公募ガイドONLINE上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載

※最優秀賞の商品券はAmazonギフト券に変更となりました。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/