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第29回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「癖」結果と講評

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結果発表
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第32回 [ 選択 ] 
3/1~3/31(消印有効)

■第33回 [ 不適切 ] 
4/1~4/30(消印有効)

※募集期間外の応募は無効になります。

第29回結果発表
課 題

 今回は大混戦。上位4作品はハナ差でゴールになだれ込んだ、という感じでしょうか。となると、最後の勝ち負けは「決め手」があるかどうかが分かれ目になりました。

最優秀賞

 激戦を勝ち抜き「最優秀賞」となったのは齊藤想さんの「持つべきものは」。アパートの部屋で、二人の女が酒を酌み交わしている。「咲美」は彼氏のグチを言う。「私のクセが気に入らない」のだと。すると、友人の「菜穂子」は、予想に反して、その彼氏の言う通りだと言うのだ。「口を開けながら食べるクセがあるよ。そりゃ百年の恋も冷めるって」。かくして、「菜穂子」は「咲美」の「クセ」を冷静かつ残酷に指摘してゆく。ふたりの友情、大ピンチ……からの大逆転。いや、クセって素晴らしいですね。

佳作

 星野芳太郎さんの「貧乏ゆすり」も、タイトルそのまま。「俺」が電車に座って文庫本を読もうとすると、斜め向こうの席にいた「中年男」が「貧乏ゆすり」を始める。これもまあ定番の「癖」だ。「俺」はその「貧乏ゆすり」が気になって本が読めない。わかるよなあ。では、どうすればいいのか。席から移動する? 男に「貧乏ゆすり」をやめてもらう? それとも、我慢する? 「男」にアイデアが浮かんだ。「俺も貧乏ゆすりで対抗すればいいのだ」。その結果……まさか、こんなことになるとは。さすがのオチです。


 名野映さんの「癖矯正院」。名は体を表す、タイトル通り、この作品は「癖」を「矯正」してくれる施設のお話。そこでは「院長」が、「癖」に悩んでやって来る人びとに、解決策を教えてくれる。どうやって「癖」を直すのか。「院長」によれば「癖」とは「凝り」のようなもので、まず「柔軟体操」から。それが終わると、なんと、やってきたみんなに「癖」を大々的にやらせるのだ。おお、逆療法? そして、最後に「癖は愛おしいもの。直す必要なんてないんです」という結論へ……の後に、だめ押しのオチが。いいね。


 world is snowさんの「傘を忘れる男」は、タイトル通り、傘を忘れるのが「癖」の男の物語。いや、傘を忘れたことがない人はいないのではないだろうか。そういう意味では、「傘を忘れる」のは「全人類共通の癖」のようなものだ、というところでいきなり感心する。そんな「癖」への対抗手段を、「男」はいろいろ思いつく。だが、なかなかうまくいかない。そして、「男」が最後にたどり着いた結論は……いや、それしかないよね。この短編のオチというより、「傘」問題の最終解決策として読んでしまいました。


 十六夜博士さんの「親ゆずり」は、「オヤジ」の葬式に出席する「俺」のお話。「オヤジ」を一言でいうと「武士」となる。「剣道の達人」で「口下手」で「昇進とは無縁」の「派出所勤務の警察官」。「シングルファーザーとして俺たち兄弟を不器用ながら育てた」。「ひたすら真面目」な「オヤジ」が苦手で、「俺」は「高校卒業と同時に家を出た」。そして、「オヤジ」が亡くなってようやく帰郷したのである。そんな「オヤジ」の葬式で「俺」はあることに気づく。それは……いや、なかなか泣けるお話ではありませんか。


 山田万博さんの「クレーム処理」は、ある日突然、ある会社の製品に関してクレームが集中することから始まる。その知らせを聞いた、その製造会社は、緊急に役員会を開催。創業六十年で初めてというクレームの集中に対処しようとする。そして、あらゆる部門を調査した結果は、なんと……わからない。「どこにも落ち度は見つからない」のである。再度の調査の結果、新しいコーティング剤に原因があるらしいことが判明。そして……その理由に、ある「癖」が関係するのだが、ちょっと無理があるのではないでしょうか。


 有薗花芽さんの「わざとのクセに……」。 場所はタイ。「冷房でキンキンに冷えたコールセンターのある高層ビル」から外に出た「俺」に同僚が「飲みにいこうよ」と声をかける。そして、いきつけの屋台で「俺」の打ち明け話が始まるのだ。なんと「二十年以上も会っていない、俺の双子の弟」が「コールセンターの俺が担当する回線」に電話してきたのである。おそるべき偶然。やがて、話は「俺」は「双子の弟」との複雑な関係にたどり着く。そもそも、なぜ「弟」は「俺」が「兄」だと気づいたのか。そのオチが弱い。


 ひのき湯柚子さんの「傷心のマンステール・オ・レ・クリュ」。「マンステール」は独特の匂いがあるチーズですね。さて、主人公(女性)のひとりごとからお話は始まります。寒い朝、「バスローブの前を掻き合わせ」、まずは化粧。優雅な生活に見えて、実は、「在庫整理で税込み770円」のリップを使うのがせいぜい。淡い記憶の中で、昨夜の男を思い出す。どうして夜中に出ていったのか。もしかして白髪を染めていなかったから? とまあ徐々に無気味な雰囲気が。でも「癖」が本筋とほとんど関係ないのでは?

応募要項
課 題

■第32回 [ 選択 ]

人生は「選択」の連続です。どの学校に行くか、どちらの政党を支持するか。いや、別に、ご飯が先がオカズが先も選択だし。あの子がいいかこの子がいいかも……。どっちもはダメですかって? 選択してください!

■第33回 [ 不適切 ]

 ええ、わたしも「不適切にもほどがある」を観てますよ。おもしろいですよね、クドカンのドラマ。そして、いろいろ考えさせられます。というわけで、みなさんも「不適切」について、一生懸命考えてみてください。

締 切

■第32回 [ 選択 ] 
3/1~3/31(消印有効)
■第33回 [ 不適切 ] 
4/1~4/30(消印有効)

字数

・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。

書式

・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。

wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。

その他

・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

応募方法

〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。

〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。

応募条件

未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。

発 表

第32回 6/1、Koubo上
第33回 7/1、Koubo上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/