第28回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「誓い」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第31回 [ ありがとう ]
2/1~2/29(消印有効)
■第32回 [ 選択 ]
3/1~3/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
誓い
今回は、うまく行っている作品とうまく行かなかった作品の差がいつもより大きかったかもしれません。「誓い」というテーマは難しかったのかも。「誓い」は苦手?
受賞作はササキカズトさんの「誓い倶楽部」。そもそも「誓い倶楽部」って何でしょう。それは、成績が上がった友人の「近藤」が通っているサークルなのだそうだ。いや、アヤシそうじゃないですか。それでも、つい、「俺」は「誓い倶楽部」に行ってしまう。すると、出てくるのが「誓いシール」、「誓いバッジ」、「誓いステッカー」に「誓いソング」。さらに「誓いの水」に「誓いラーメン」まで。こんなのインチキじゃないか! そう言うと、近藤は……。いや、最後の最後まで「誓い」がテーマになってました。
敷島怜さんの「約束 ――デュレンマットへのレクイエム」は衝撃的なお話だ。「僕」は毎晩妹の夢を見る。僕が八つの時、四つ下の妹が突然消えた。そしてショックを受けた母は断崖から投身自殺。村の旧家の跡取り息子だった父は、事件の後、酒の飲み過ぎがもとで吐血して死ぬ。家族を奪った「犯人に正義の裁きを下す――そのために僕は警察官になった」のだ。執念の捜査は続き、二十年後ついに、「僕」は真実を突き止める。その真実とは……。これはもう大どんでん返しでしたね。しかも、最後にまた新たな「誓い」まで。
齊藤想さんの「禁酒禁煙禁ギャンブル」は、文字通り「禁酒、禁煙、禁ギャンブル」を「彼女」に誓った「おれ」のお話。守らないと別れると言われているのである。さて、どうすればいいのか。酒やタバコやギャンブルの代替品を見つければいいのである。一週間後、やって来た「彼女」は発見する。煙草代わりの大麻、酒代わりの輸入炭酸水、競馬代わりの一口馬主投資。結局、それらも禁止に。かくして、「おれ」の部屋は禁止事項だらけに。「禁寝坊、禁徹夜、禁浮気……」等々。でも、最後の「さらに……」がわからないんですが。
酔葉了さんの「誓いの丘」。「私」は三十年ぶりに、ある小高い丘の上にやって来る。実は、銀行に入行する寸前、同じ大学から同じ銀行に入る友人の「彼」と、この丘の上で約束したのだ。「私」は将来、頭取になることを。「彼」は「君に仕える常務くらい」に、と。それから、月日が流れ「私」は常務になった。「彼」は、初任店で上司と喧嘩し、いつの間にか銀行を辞めてしまった。どこでどうしているのやら。哀れなやつ。ところが、その頃「彼」は……。見事な大逆転で、「私」の運命も明らかに。皮肉が効いてます。
貘太郎さんの「風が吹く時」は、大量の廃品が集積された街はずれの集積所で始まる。そんなゴミの山で作業をしている老人がいる。何してんの、少年が声をかけると、老人はレアメタルを集めている、という。そして、大量廃棄社会を作ることに加担した自らの罪を償うために「未来から来た」と告げるのである。感動した少年は、老人に「ゴミを出さない研究をする」と誓うのだ。そして、少年が去った後……いい話なのだが、途中で、このSF的物語のオチがわかってしまうのが残念。もう一ひねり欲しかったですね。
白浜釘之さんの「誓いの日」の「私」は「十年目の誓いの日」に、「その店」にやって来る。物静かなマスターも十年前と同じように店にいて、同じように挨拶してくれる。実は十年前、「私」は付き合っていた「彼女」と別れたのだ。「仕事を取るか恋を取るか」で、二人とも「仕事」を取ったからだ。けれども、十年後もう一度だけこの店で再会し、そのときまだ独身だったら、また付き合おうと約束したのである。やがて現れる「彼女」。そして……衝撃のクライマックスが。でも、こんな終わりでいいんでしょうか。
船渡川広匡さんの「おさるの友情」は、果実を食べていたニホンザルのボスが「食うか?」といきなり飼育員に話しかける。「お前、話せたんだな」「ニホンザルだからな。日本語は大丈夫だ」。そして、「転職」しようと思っていたふたり(?)は話し合ったあげく、入れ替わることになるのだ。飼育員は全裸になって「サル」に、さるは制服を着て「飼育員」に。しかし、「サル」になったらボスの座を巡ってナンバー2と戦わねばならない。さて、その顛末は……。面白い話だが、肝心の「誓い」がちょっと弱いのが残念。
S・フィドルさんの「お嫁さん」は、摩訶不思議な物語。夜中にインターホンが鳴る。眠い目をこすってドアを開ける。チェーンロックの隙間から、白いウエディングドレスを着た女が、「今日は結婚式よ」と言うのである。夢? 違う。女は、今日、三十歳の誕生日で、この歳になっても独身だったら結婚することを約束したらしいのだ。覚えてないけど。気がつくと、新婦の父やら外国人の神父やら、隣の住人までやって来る。そしていきなり結婚式が始まるのだ。不条理なお話はいいが、ちょっと辻褄があってないのでは。
■第31回 [ ありがとう ]
「ありがとう」は感謝のことば。どんな時、このことばを言いますか。あるいは言われましたか。あるいは「ありがとう」の気持ちをどう表現しますか。どんな「ありがとう」を見たり、経験したりしたことがありますか。
■第32回 [ 選択 ]人生は「選択」の連続です。どの学校に行くか、どちらの政党を支持するか。いや、別に、ご飯が先がオカズが先も選択だし。あの子がいいかこの子がいいかも……。どっちもはダメですかって? 選択してください!
■第31回 [ ありがとう ]
2/1~2/29(消印有効)
■第32回 [ 選択 ]
3/1~3/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第31回 5/1、Koubo上
第32回 6/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
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「第〇回小説でもどうぞ」係
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