第57回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「裏切り」結果と講評


1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第60回 [ 不運 ]
7/1~7/31(23:59)
■第61回 [ 禁止 ]
8/1~8/31(23:59)
裏切り
面白い作品が多くて、選考する時に大いに迷いました。嬉しい悩みです。それにしても、あまりにもオチがきっちりし過ぎてもいけないようです。小説は難しいですね。
最優秀作は、なりはらもなさんの「キビ団子の力」。これは「桃太郎」のリメイクですね。「鬼ケ島」は「邪智暴虐な黒鬼、黒玄鬼」の独裁支配下にあり、彼には正妻のほかに何人もの妾がいた。「桃源」という赤鬼が、妾の一人「白麗」という「白鬼女」に恋をし、ふたりの間に一匹の男鬼が生まれます。殺されそうになったその鬼の子を二人は島から逃れさせる。やがて、その男の子が育ち「桃太郎」となったことを「桃源」は知るのです。鬼退治にやってくる「桃太郎」。そして衝撃のラスト。この「裏切り」はスゴい!
海老原葉冷さんの作品のタイトルは「う」。なんでしょうか。これは「うなぎ」の「う」なんですね。老舗のうなぎ割烹の厨房に侵入したのは「職人の佐川圭介」だった。創作居酒屋からの「タレ」をコップ一杯でも持ってきたら報酬を払うという口車に乗ってしまったのだ。親方は言う。こういうのを「うなぎり」というのだと。おしゃれ(笑)。というわけで「圭介」は「過酷な制裁」を食らうはめに。そして一年後、謹慎期間が終了し……どうなったでしょう、「うなぎり者」は。最後の展開がちょっと怖面白いです。
田中ダイさんの「土曜日のマンマミーア」はとても可愛く、好感の持てる作品です。「二度寝を決めこんでいた土曜日の朝に、アパートのチャイムが鳴った」。気分が悪いと言って寝込んでいる姉に代わって妹の「わたし」が出る。なんと「返金」だって。なに? アパート組合の集金のなにかが封筒の中に。おお一万円も! この一万円があれば近所のおしゃれイタリアンのコースが食べられるのに。そして「わたし」はつい……姉を裏切り、黙ってその一万円でコース料理を食べてしまう。だが……いや、オチが爽やかすぎ。
吉井寛光さんの「裏切りの味」、「裏切り」は冒頭に登場。「その日わたしは二個のスパムおにぎりにむしゃぶりついていた。これは妻に対する裏切りを意味している」。どういうこと?「わたしと妻」はふたり共「こだわり」の人だった。シンプルな味付けが最高。ファストフードやコンビニ飯など論外。そんな二人が出会い、意気投合。結婚したのである。めでたしめでたし。そんなある日、わたしはつい「スパムおにぎり」を食べ、「恋に落ちた」のだ。裏切り……すごく面白かったけど、これもオチは予想できるよね。
さかいたまさんの「浮気清浄機」、まずタイトルが素晴らしい。「空気」じゃなく「浮気」をクリーンにしてくれる機械なのね。そう思っていたら、ほんとにそうだったとは! 実は「俺」は三カ月ほど前から浮気をしている。だから、生成AIに「浮気がバレない方法」を聞いたのだ。なかなか教えてくれないAI。どうやら倫理があるらしい。けれども徹底的な追求の結果、最高の回答を引き出した。それが「ディープウェブ」で販売されている「浮気清浄機」だった……ほんとに面白かった。でもオチがわかっちゃうよなあ。
松川なな子さんの「率直な人」の主人公の「私」はホテルでバイトをしている女子大生。そんな仕事場に四十も年上の「優美さん」が清掃スタッフとしてやってくる。「優美さん」はたいへん覚えが悪い。だから他の従業員は一緒に働くの嫌がる。「私」もイヤだが、「優美さん」が持ってくるお菓子につられて一緒の日にシフトをいれる。「優美さん」には子どももいる。でも「私」だけが知っている「秘密」がある。「私」はその「秘密」を利用しようとしているのだが……。最後は意外な展開に。ちょっとブラックな終り方。
猪本杜奈さんの「嘘ではない」の主人公「一ノ瀬康平」は会話を記録している。なんでもなかったことにされないためだ。その日も「早川祐介の声」を内緒で録音していた。騒がしい店内で祐介は言う。「昔、人を轢いたことがあるんだよ……そのまま、逃げた」。もちろん祐介は付け加える。「誰にも言うなよ」。だから答えた。「言わねえよ」。もちろんすべて録音した。そして三日後。祐介がいきなり胸ぐらを掴んだ。「お前、言っただろう」。「言ってないよ」。でも……。いいオチです。あと康平の動機が欲しかったかな。
嘉島ふみ市さんの「ノストラダムスの大予言」のテーマは、もちろん、あの有名な予言。いつものように満員電車に乗り、出勤する「俺」。偶然見えた中吊り広告の見出しには「新説ノストラダムスの大予言」と。十日後に世界が滅びるらしい。まさか。実は昔、十歳の「俺」は親友と共に予言を信じて裏切られたのだ。まさかね。そう思っていると、その親友から電話があった。会いたいらしい。なんと今度の予言は実現するというのだ。だから俺たちはあることをやった。すると……。面白かったけど「裏切り」かな、これ。
詳しくは、下記の応募条件をご覧ください。
■第60回 [ 不運 ]
課題は「不運」です。アンラッキーです。出来たら遭遇したくないものです。実力だって? 違います。運がなかったのです。不運だったのです。わたしは悪くない。もう一度チャンスをください……というようなお話?
■第61回 [ 禁止 ]「禁止」です。NGです。やってはいけないことです。絶対ダメということです。どんな時、どんなところでなにが「禁止」になるでしょう。あるいは、そんなものが「禁止」になるのはなぜ? いろいろ考えてくださいね。
■第60回 [ 不運 ]
7/1~7/31(23:59)
■第61回 [ 禁止 ]
8/1~8/31(23:59)
本文2000字程度。縦書き。
(テキストデータは横書きでかまいません)
書式は自由ですが、A4判40字×30行を推奨します。
WEB応募に限ります。
応募専用ページにアクセスし、原稿をアップロ―ド。
(ファイル名は「第○回_作品名_作者名」とし、ファイル名に上記以外の記号類、および全角全角記号、全角スペース、機種依存文字は使用不可)
作品の1行目にタイトル、2行目に氏名(ペンネームを使うときはペンネーム)、3行目を空けて4行目から本文をお書きください。
本文以外の字数は規定枚数(字数)にカウントしません。
Wordの方は作品にノンブル(ページ数)をふってください。
応募点数3編以内。作品の返却は不可。
Wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
作品は未発表オリジナル作品に限ります。
入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属します。
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には公募ガイド社から公募やイベントに関する情報をお知らせすることがあります。
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・生成AIを使用した場合は、応募フォームの所定欄に使用したツール名と具体的な利用方法をご記入ください。
第60回 2026/10/1、Koubo上
第61回 2026/11/1、Koubo上
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佳作7編=記念品
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※発表月の翌月初旬頃に記念品を発送いたします。
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