第31回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「ありがとう」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第34回 [ 最後 ]
5/1~5/31(消印有効)
■第35回 [ 名人 ]
6/1~6/30(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
ありがとう
たいへんおもしろかったです。もしかしたら、この「小説でもどうぞ」史上、最高だったかも。ふだんなら「最優秀」となるべき作品がいくつかありました。サンキュー!
最優秀作は住吉徒歩さんの「嫁ぐ私」。「お母さん、今日までありがとう」。「来月、嫁ぐ私」は、この一言を言うために帰省した。だが、母はあるゆる策をこうじて「それを言わせてくれない」。声をかけようとすると、「その雰囲気をぶち壊すような行動をとるのだ」。嫌がらせか! 延々と、それが続いて、最後に「私」はキレる。「一言挨拶したいことぐらい分かるでしょ!」。そりゃそうだ。その時、玄関から「ピンポーン!」。意外な人物がやって来る。そして明かされる真実。いやあ、いい話でしたね。
柚みいこさんの「ありがとうを言ったら死ぬ」は、ちょっと変わったお話だ。問題は、「雄介」の「父親」だ。「父親」は、絶対「ありがとう」と言わない人なのである。それが「雄介」には許せない。そんな「父親」は最後まで「ありがとう」と言わないまま死んでしまう。でも、母親には最後に「かたじけない」と言ったそうだ。なんだそれ? そんな母親も亡くなった後、実家を片づけていて、「雄介」は知ったのである。「ありがとう」を言わなかったのは、「父親」の息子への深い愛情故だったのだ。泣けましたよ。
いちはじめさんの「目覚めの時」のテーマはAIコンピューターだ。「人工知能研究会発足三十周年の記念式典」の会場で、お話は始まる。一枚のパネル写真を前にして関係者たちが話している。それは「人工知能コンピューター第一号、式部」が産声をあげた時のものだ。その時、モニターに浮かんだ文字は「アリガトウ」だった。思い出話をしているうちに、みんな気づく。そもそも誰が「アリガトウ」という文字を浮かび上がらせたのか。みんな自分ではない、というのである。そして……衝撃のクライマックス。怖いです。
桜坂あきらさんの「頼むから死んでくれ」は、物騒なタイトルだが、これは、休み明けに出社した「俺」のデスクにあった社長からのメモ。というのも、スマホが壊れた「俺」は、大事なクライアントとのアポを忘れていたのだ。クライアントは許してくれるのに、社長は「俺」をディスりまくる。絶体絶命の「俺」。もうダメだ……。その夜、ふと会社に戻った「俺」は、社長の「秘密」を知ってしまう。一発逆転! 痛快な結末で、「オチ」の「ありがとうございました」も、よく効いている。いや、楽しかったですよ。
ヨコタさんの「ありがとう百回チャレンジ」、近所の公園のベンチで煙草を吸っていた「俺」の前に「小太りのオバちゃん」が突然出現する。「オバちゃん」は「魔法使い」で百人の人に「ありがとう」と言うチャレンジを「俺」に命じる。達成できないと「命もらうわ」と言うのだ。ウソ! 「オバちゃん」に超能力を見せられ、「俺」は渋々「ありがとう百回チャレンジ」を開始する。ところがなぜか「俺」は「両親」のところへは行こうとしない。なぜなら……感動的なオチだが、最後「オバちゃん」は消えた方がよかったか。
宍戸晴礼さんの「ファースト・コミュニケーション」、タイトルからしてちょっと奇妙だ。東京郊外に、「五月の晴れた日」、未確認飛行体が出現した。いわゆるUFOだ。でも、これ、円盤型ではなく「白い立方体」、「空に浮かぶ、大きな豆腐」みたいものだった。その「豆腐」は、「K市内の中学校の校庭」に降り立つ。それを発見したのは、英語教師と女生徒。もちろん、びっくり。ソシテ自衛隊が出現して、さらにびっくり。しかし、そこで起こった「事件」に読者もびっくりだ。結末にはニッコリかも。面白かった。
ピーマンさんの「パステルカラー」は「人前で言葉に詰まってしまう私」の物語。スムーズに言葉が出ない人、いるよね。そんな「私」の後悔は、高校生の時、「田中くん」という男の子にゴミ袋を棄ててもらった時、「ありがとう」の一言が言えなかったこと。それをずっと後悔していたのだ。やがて、卒業した「私」は、故郷を離れ、大学へ。そして、就職、さらに結婚して子どもが生まれた。そんな「私」は二十年ぶりの高校の同窓会に出かけるのだ。そこで「田中くん」に会った「私」は……。ロマンチックなお話でした。
天竜川駒さんの「ドライバーさん ありがとう」は、火星を目指して地球を飛び立った宇宙船が、事故で近くの小惑星へ不時着するところから始まる。乗組員たちがSOSを発信して救援を待っていると、とある宇宙人の円盤に救出され、地球へ帰還することに。なんて親切な宇宙人。ただし、宇宙人によれば、彼らは地球人の目に触れてはいけないのだ。ではどうすれば? お話の最後には、無事地球へたどり着くし、「地球人の目に触れない」という約束も守られるというオチになる。オチのためのお話になってしまったかも。
■第34回 [ 最後 ]
終わりです。お
将棋のタイトルにも「名人」戦がある。落語の神様もやはり「名人」と言うし。釣りだって「名人」、あらゆる世界に「名人」はいます。意外なところにもいるかも。もしかしたら、みなさんの周りにも。よっ、名人!
■第34回 [ 最後 ]
5/1~5/31(消印有効)
■第35回 [ 名人 ]
6/1~6/30(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第34回 8/1、Koubo上
第35回 9/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
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