第32回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「選択」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第35回 [ 名人 ]
6/1~6/30(消印有効)
■第36回 [ アート ]
7/1~7/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
選択
今回のテーマ「選択」は難しかったのでしょうか。テーマを書けて、きちんとしたオチまであったのが少なかったのは、残念。でも、最優秀は超傑作! なので、大満足です。
受賞作に選ばれたのは深見将さんの「Y字路」。「Y字路」は、画家・横尾忠則さんの傑作で、別れ道のところに立つ家を描いた作品。「私」が、その絵の前に立ち圧倒されていると、話しかけてくる人がいる。誰かと思うと、なんと横尾忠則さん本人ではないか! そして横尾さんは言う。「どちらがいいですか?」と。質問の意味がわからず困惑していると、横尾さんは、描かれたどちらの道がいいかと訊いたのだと言うのである。そして、横尾さんは、なんと……。いや、びっくりしました。この展開には。
白浜釘之さんの「人生の選択」、主人公の「俺」はお笑い芸人だ。ぽつぽつ売れるようになったのは、相方の拓也の書く台本が面白いからなのだが、もう一つ理由があった。その日、どのネタを演じるのかを選ぶ「俺の勘」がスゴいのだ。だが、あるときTVで演じたブラックジョークがネットで炎上。仕事を休んでいるうちに「過去の人」になってしまったのである。そして、芸人時代の「選択ミス」を後悔しながら死の床につく。そして……壮大で面白い(しかも長い)オチだが、逆に、大げさすぎる感じがした。難しいね。
矢野クニ彦さんの「ハラショー」はちょっと不思議なお話だ。「七十五歳以上の高齢者を死刑にする法律が施行され」た結果、多数の年寄りたちが「死刑」を待つ事態に。主人公の「九十五歳になる高橋源次郎」もその対象の一人だが、認知症と偏屈な性格故、職員ももてあましている。ところで、対象者たちは「死刑」の中身を選べるのである。①絞首刑、②電気椅子、③ガス殺、④銃殺、⑤服毒殺、⑥その他だ。源次郎が選んだのは、⑥その他、なんと「切腹」を希望。そして、刑の執行の日が来た。最後の瞬間……そのオチでは物足りないかな。
卜部京子さんの「決断」はミステリアスな作品。目覚めると、「私」は「白い部屋」にいる。自分が誰で、なぜそこにいるのかもわからない。助けを求めて壁を叩いても何の反応もない。理由もわからず、自分の正体も不明のまま、監獄のような密室に閉じこめられているのだ。狭い部屋の机の引き出しには弾丸が一発入った拳銃がある。食糧は天井の穴から落ちてくる。聞こえてくるのは、同じ運命らしい隣人の声と、新しい部屋を作るらしい工事の音だけ。さてどうするか。面白い話だったのに、オチがやや弱かった。惜しい。
宮本享典さんの「パラダイスはどっちだ?」は、酒とドライブが好きな「おれ」のお話。「ドライブに出かけ」た「おれ」は、運転中に「不意に眠気が襲って」きて、次の瞬間には「目の前に巨大な閃光があった」。対向車と正面衝突したのである。死んだ。「おれ」はそう思う。すると、声が聞こえたのだ。「どうも初めまして。死神です」。やっぱり。すると死神は「天国」か「地獄」、どちらでも「お好みの方」へ案内してくれる、というのである。「おれ」が選んだのは……なんだか、あまり意外性がありませんでしたねえ。
とがわさんの「洗濯物をたたむ」は切ないお話。「洗濯物をたたまないの?」という「妻の燿子」の声からお話は始まる。「僕」は洗濯物を取り込んだままぼんやりしていたのだ。なにげない夫婦の会話。実は、妻はいまから家を出ていこうとしているのである。激しく後悔している夫は、いつどこで間違えたのだろうかと考える。いつどこで「選択」を間違えたのかと。もしかしたら、いまでも正しい道へ向かう「選択」が可能なのではないかと……しみじみとした気分になるけれど、もうちょっと「キレ」が欲しかったです。
がみのさんの「犬か猫か」。タイトルは明らかに選択だ。よかった(笑)。「ある日、巨大な宇宙船が大量に地球に飛来した」。そして「宇宙船から各国政府に通達が為された」。その中身は、なんと「犬か猫」のどちらかをすべて差し出すこと。拒めば、地球ごと破壊するというではないか。もちろん、理由の説明はなし。宇宙船を攻撃してみたが、科学力が違いすぎて話にならない。どちらを、宇宙船に差し出すか。全地球を巻き込んだ「犬派」は「猫派」の大論争が勃発するのであった。面白いが、オチがちょっと……。
坂本雨季さんの「母と娘の正しい生き方」は、タイトル通り「母と娘」の物語だ。「わたし」はスーパーで買ってきた惣菜を並べ、鍋料理を作ろうとする。なので、母親に「お鍋だけど、いいよね」と言う。返事はなし。さらに「寒いから(窓を)閉めるよ」と言う。やはり返事はない。母親に銀行の封筒を握らせる。返事なし。このあたりでなんだかおかしい感じがしてくる。年金暮らしの母と出戻りで「手に職のない」「わたし」のどん詰まりの生活。実は……。どこが「選択」だったのか、ちょっとわかりませんでした。
■第35回 [ 名人 ]
将棋のタイトルにも「名人」戦がある。落語の神様もやはり「名人」と言うし。釣りだって「名人」、あらゆる世界に「名人」はいます。意外なところにもいるかも。もしかしたら、みなさんの周りにも。よっ、名人!
■第36回 [ アート ]テーマは「アート」。日本語いうと「芸術」。ゴッホやダヴィンチはもちろんアート。世界にはたくさんのアートがある。中には「これがアート?」ってものだって。いろんなところにいろんなアートを見つけてください。
■第35回 [ 名人 ]
6/1~6/30(消印有効)
■第36回 [ アート ]
7/1~7/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第35回 9/1、Koubo上
第36回 10/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
● WEB応募
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● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
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