第26回「小説でもどうぞ」課題「冗談」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第29回 [ 癖 ]
12/1~12/31(消印有効)
■第30回 [ トリック ]
2024/1/1~1/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
冗談
課題が「冗談」だったせいなのか、「えっ、これは冗談?」と思えるような作品もありました。いろいろな意味で。もしかしたら、結果も「冗談でしょ!」と思われるかも。
受賞作になったのは、渡鳥うきさんの「深夜に一発」。深夜、パソコンのキーボードを叩く謎の男。実はある大国のスパイだったのだ。その国と敵対国の間に緊張が高まり、男は忙しい。尿意を覚えた男が席を離れた隙にコソ泥が侵入、ついやりすぎて男を殺してしまう、そして……その後の展開がまったく読めず、どうなるかと思ったら、最後に「ジョーク」。はて、と思うと、さらに、最後の最後に止めの「ジョーク」。いや、おもしろかった。なにしろ、この「ジョーク」がつまらないところが最高ですね。
ともみさんの「クリスマスの贈り物」は、「クリスマスの朝」に始まる。「少年」は「不機嫌な表情を浮かべて」、「広いダイニングの真ん中」に座っている。忙しい両親や親戚からのプレゼントは、どれも少年を満足させない。だから、全部放り投げてしまったのだ。困惑していたらいつも世話をしている家政婦がこう言う。「坊っちゃん、もうひとつありましたよ」と渡したのは「缶に入ったクッキーマン数個と、メッセージカードが1枚」。それを読んでみると……以降、怒濤の展開がおみごと。いい話ですね。冗談だけど。
柚みいこさんの「冗談みたいな話」は、タイトル通り冗談みたいな話です。道で出会ったふたりの酔っ払いが意気投合して、小さいな居酒屋へ。中へ入ると店のオヤジも酔っ払い。全員どうしようもない連中だ。そして、この三人による「冗談」合戦、というか「ホラ」合戦が始まる。酔いが進むほど、「冗談」は過激化。その結果、とんでもない事態に。なるほど、と納得。酔って「冗談」を言うのはいいが、どんな結果になるか気をつけましょう。なにしろ、「冗談」だと思っていたら「ほんとう」だったりするんだから。
穴木隆象さんの「マフィア御用達のステーキハウス」。久しぶりの米国出張で、奇跡的に人気のステーキハウス店の予約がとれ、ウキウキとその店へ。案内されたのは、何十年も前に「食事中のマフィアが射殺された席だった」。しかも食事の内容も飲んでいたワインも当時のそれとまったく同じものが提供される。やがて、店は怪しい雰囲気になり、当時と同じような事態に。危機一髪! おもしろいです。もちろん、これは「ドッキリ」なのだが、最後にもう一ひねり。それがあまり驚きではなかった。惜しい!
河音直歩さんの「強盗」はちょっと切ないお話。「浩太が小学四年生になったとき、母親は再婚をした。相手は、武田といった」。その「軽薄そうな男」は、夜仕事から帰るとお土産をくれたのだ。「コンビニから盗んできたぞ」と言いながら。「武田」は「明るい冗談好きで、いつもありもしないことばかり」言う男だ。ある日、風をひいて「浩太」は休む。すると、どうやら風邪をひいたらしい「武田」も、家に戻ってくる。そして……冗談を媒介にした義理の親子の心の交流は素敵だが、実父の話は不要だったかな。これも惜しい!
湯﨑涼仁さんの「冗談教えます」の主人公の「私」は「冗談教えます」という「立て看板を張り出した怪しげな教室」に通うようになる。というのも、自分が教育係をしている「冗談」がうまい「篠田」にお株をとられているからだ。「篠田」は営業成績がトップ、「私」はビリの方に近い。まずいですよね。まじめな「私」は教えられた通りに「冗談」を言う。そこが「冗談」に向いてない証拠なんだが。結局、「私」は「無理して冗談を言うのはやめ」ることになる……でも。いい終わりです。「冗談」抜きで。
昂機さんの「アンドロイドはジョークを理解する夢を見るか?」。三十年前「世界初のAI搭載人型アンドロイド・アイ」の最初の一言は「それでは、地球の支配権を明け渡してもらいましょうか、人類さん」だった。なんとジョークだったのだ。そして舞台は現在へ。アイリスというアンドロイドがジョークの名手で芸人の「オオアタリ春秋」の楽屋へ、ジョークを習いたいとやって来る。アンドロイドもジョークができないとダメなのだ。熱心さにうたれてジョークを教えようとする春秋だが……オチがすぐわかるのが難点か。
村木志乃介さんの「ジョークおじさん」には「ジョークおじさん」が出てくる。「僕の高校」の近くに出没するのだ。「気になったんだよねぇ」と言うと「木になった」ふりをするおじさんだ。ダジャレか……。そんなおじさんに遭遇して困惑しながら、どうしても突っ込みたくなる「僕」。そのふたりのチグハグな問答の最後に小さな事件が起こるのだが、そこだけが長く、しかも、それがオチになっているのかどうもよくわからない。「ジョークおじさん」を含めて、登場人物の印象がちょっと弱かった。
■第29回 [ 癖 ]
「無くて七癖」といいますね。誰でも癖を持ってます。ぼくにもあります。内緒だけど。恥ずかしい癖、可愛い癖、びっくりする癖。変な癖に、珍しい癖。そういえば、ペットにだって癖はあるんですよねえ。
■第30回 [ トリック ]ミステリーに欠かせないのが「トリック」。昔から、たくさんの「トリック」が考案されてきました。「密室殺人」とか、もう多すぎてうんざりするくらい。あとはみなさんにおまかせします。どのように料理しようと。
■第29回 [ 癖 ]
12/1~12/31(消印有効)
■第30回 [ トリック ]
2024/1/1~1/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字であればOK。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙は不要。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らないこと。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第29回 2024/3/1、Koubo上
第30回 2024/4/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の次月頭に記念品は発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
● WEB応募
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〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
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