第25回「小説でもどうぞ」課題「幽霊」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第28回 [ 誓い ]
11/1~11/30(消印有効)
■第29回 [ 癖 ]
12/1~12/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
幽霊
みなさん、ありがとう。おもしろかったです。お盆でもないのに、力作揃い。生きている人間より、死んだ人間の方が、扱いやすいのでしょうか。頑張れ、生きてる人間も。
最優秀作に選ばれたのは、うらかわわたるさんの「幽霊の欲求」。幽霊がテーマなのにぜんぜん怖くない。それがすごい。「わ、ひさしぶり」から始まってずっとひとりでしゃべっている主人公が幽霊なのもすごい。しかも、幽霊たちの世界での流行が描かれていてそこもすごい。でも、もっとすごいのは幽霊の世界が生きている人間の世界と変わらないところだろうか。もしかすると、生きている人間も幽霊みたいなものと考えると、実は怖い話なのかも。というか、ほんとうに我々は生きているの? えっ?
ササキカズトさんの「回送のタクシーにて」も「タクシー・ドライバー」と同じタクシーものだが、一枚上だった。「ぼく」はタクシーの助手席に乗っている。次々にタクシーを乗りこんで来る怪しい乗客たち。踏み切りで事故って、右足が太ももからないというおじさん。長い髪の毛を濡らし、泣いている女の人。道路の真ん中をよろよろ歩き、タクシーに乗ると「のろはれてる」と呟く老婆。怪しい、怪しすぎる人たち……。だが、彼らの話を聞くうちに、やがて意外な真実が。そして、幽霊はどこに……。これも最優秀候補だった。
富士川三希さんの「玲子はいろんな人とルームシェアをしている」は予想もつかぬ展開になるお話。「玲子」がスーパーの袋を玄関に置き「ただいまぁ、みゆきさん」と声をかけると、奥から「おかえり、玲子」という返事。この二人、ルームシェアをしているのだ。「みゆき」は訊ねる。「彼とはどうなの?」。「良い感じ……明日家に来るの」。なぜか大喜びする「みゆき」。そして、翌日「玲子」は「祟さん」を連れて部屋へ。近づくにつれ様子がおかしくなる「祟さん」。そして……衝撃のクライマックス。おもしろかったです。
いちはじめさんの「彼女の願い」は、けっこうぶっ飛んだお話。アイドルが急死して、撮影中だった初主演映画をどうするか、と関係者たちが協議しているところに、なんと「彼女が現れた」のだ! そして、こういうのである。「私、幽霊になっちゃったみたい」と。「撮影の途中で死んじゃって悔しい。私、このまま撮影を続けたい」という彼女の願いに応じて、秘密のうちに撮影は続行。「前代未聞の幽霊を主演にした映画」はついに完成。これで成仏してくれるかと思ったら、完成試写会で……。なるほど、そうなるよね。
中臣モカマタリさんの「タクシー・ドライバー」の主人公の「俺」はタクシーの運転手。ずっと昔、「俺」は、夜に若い女を乗せた。しかも泣いている。そして一万円を渡して、どこでもいいから海辺に行ってというのだ。それで海岸まで行って、そこのベンチで一緒に一時間くらい黙って座っていたら、感謝されてお釣りもいらないって。それからしばらくして、七夕の前に、「俺」は夢を見る。レポーターが「俺」を見つけたといって喜んでいる夢だ。なぜそんな夢を見たのか……その謎解きからオチまで一気。なかなかのもの。
朝霧おとさんの「サフラン」。主人公の「私」の親友・七海が突然の病死。それを連絡してきたのは七海の夫の翔太だ。その現実をなかなか受け止められない「私」。やがて、「私」は翔太のことが気になり始める。というのも、実は初めて七海から翔太を紹介された時から好きだったからだ。少しずつ翔太に接近していゆく「私」。けれど、翔太の家、というか七海の家に行くたびに「なにものかの気配」を感じるようになる。やがて、翔太の身に……。ある程度予想のつく結末ではあるが、やっぱりちょっと怖いです。
酔葉了さんの「幽霊に会いたくて」は、タイトルそのまま「幽霊に会いたい」人のお話です。ではなぜ? 「私」は「ある銀行本店の食堂の片隅」で「遅い昼食を摂っていた」。すると、隣の席の「お喋り好きそうな女子行員」たちがおしゃべりをしている。「二十階の倉庫」で、パワハラで首を吊った営業部の男性行員の幽霊が出るというのだ。なんと! その行員、「私」の知り合いなのである。どうしても会いたい、どうしても……。かくして、「私」は二十階の倉庫に向かうのだが、その理由、みなさんもなんとなくわかりますよね。
内田理李郁さんの「盆踊り」は、新型兵器が投下され、不毛の地になったある場所に、偶然「最新型防空壕の耐久テストの試験者として、重厚な棺桶のようなカプセルに閉じ籠もっていた」「私」が主人公だ。怪我の功名で、ただひとりの生き残りとなった「私」にできることは、バッテリーが切れるまで、事実を記録すること。偶然「指輪」を見つけた「私」は、亡くなった同胞を弔うため、たったひとりの「盆踊り」を決行する。すると、なんだか「沢山の影」が……。それは幻想なのか事実なのか。ちょっとしんみりする結末ですね。
■第28回 [ 誓い ]
いろんなところでいろんなことを我々は誓う。結婚式のときには永遠の愛を。泥酔してみんな迷惑をかけたときには「もう二度と飲みません!」と。みなさんは、どんなときに、どんなことを誓いますか?
■第29回 [ 癖 ]「無くて七癖」といいますね。誰でも癖を持ってます。ぼくにもあります。内緒だけど。恥ずかしい癖、可愛い癖、びっくりする癖。変な癖に、珍しい癖。そういえば、ペットにだって癖はあるんですよねえ。
■第28回 [ 誓い ]
11/1~11/30(消印有効)
■第29回 [ 癖 ]
12/1~12/31(消印有効)
・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字であればOK。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。
・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。
・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。
〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙は不要。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らないこと。
・作品の返却は不可。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
第28回 2024/2/1、Koubo上
第29回 2024/3/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
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「第〇回小説でもどうぞ」係
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