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第27回「小説でもどうぞ」課題「病」結果と講評

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小説でもどうぞ
結果発表
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第30回 [ トリック ] 
1/1~1/31(消印有効)

■第31回 [ ありがとう ] 
2/1~2/29(消印有効)

※募集期間外の応募は無効になります。

第27回結果発表
課 題

 いやおもしろかった。上位3作は、どれも通常なら最優秀作に値するものばかり。審査することを忘れて楽しく読みました。テーマが「病」だから? 考えさせられますね。

最優秀賞

 最優秀作は、味噌醤一郎さんの「パソ子じゃないから」。この作品で病気になるのは、なんとノートパソコン! というか、それに搭載されているAIソフト。「名前はパソ子。俺が名付けた」のである。ある日突然、「パソ子」は「風邪をひいた」と訴える。パソコンなのに。「喉も痛い。頭痛もする。私、病です」と訴えるのだ。そこで「俺」は、「パソ子」を甲斐甲斐しく看病する。やがて、「パソ子」の「風邪」は仮病と判明する。なんだ。だが、それで終わりではなかった。なんと……素晴らしいオチ。完璧すぎます。

佳作

 津田緋月さんの「病気でしょうか?」の冒頭、主人公の老女「ミヨ子」は主治医にいきなり「先生、私、病気でしょうか?」と訊ねる。驚く医師。そりゃそうだ。年がら年中、どこかが具合悪いと文句を言っていた「ミヨ子」が初めて「体調が……とっても良いんです」と言うのだから。「病気」でなくなった「ミヨ子」に向かって、医師は「やりたいことをやってはいかが」とアドヴァイス。そうだ。やれなかったことをやれるチャンス到来だ。そして「ミヨ子」はやり始めるのだが……その結果が、こうなるとは。爆笑ですね。


 篠原ちか子さんの「背中を探して」の「わたし」は徘徊癖のある認知症の母を介護している。この日も、真夜中の一時、母の姿が見えない。きっとどこかを彷徨っているのだろう。近所を探し回り、疲れ果てた「わたし」はやがて、隣町の公園のベンチに座りこむ。そういえば、その母もかつて、亡くなった祖母の介護で苦労したと言っていたっけ。なぜ、同じ目に自分もあうのだろう。そう思っているうちに、ついベンチにゴロリと横たわると……。完璧なラスト。なにより文章も素敵だ。文句を言うなら意外性がないことくらいか。


 ササキカズトさんの「心を病みたい」。いや、ほんとにおもしろかった。途中までは、これが最優秀作で間違いない、と思ったくらい。主人公の「俺」は、自分が「平々凡々な人間」だから「平凡な小説しか書けない」と思っている小説家志望の人間。その気持ち、わかるよ。だから「俺」は「病みたい。病んでみたい」と心の底から願っている。そのために努力しようとさえ思う。もちろん身体ではなく「心を病む」のである。でも、いったいどうすればいいの……だが、最後のオチに無理がある。折角おもしろい小説だったのに!

あざ 作品を読む
みなみ真子

 みなみ真子さんの「あざ」。義母が亡くなって一年、今度は義父がボケはじめたらしい。子どもたちの世話もたいへんだし、デイサービスを利用できるとはいえ、義父の介護もたいへん。さらに、夫は浮気をしているようだし。離婚しようかとも考えていた「私」は、ある日、義父の背中に「擦り傷のような箇所」を見つける。そして、その傷は少しずつ大きくなっていき、信じられないような事件が起こるのである。なるほどねえ。読みながら、いろいろ考えさせられました。ちょっと泣かせるお話ですね。でもあと一歩かな。


 新拳さんの「二十八世紀のノアの方舟」は、「平均寿命が190歳を超えた」「2700年代初頭」の物語。科学の力で病がすっかり克服され、人は老衰か自殺でしか死ねなくなっている。その結果、生きがいを失った人びとは「撲滅された」病原菌を調達して、短期間で苦痛なく死ぬ方法を探すようになった。一方、若年層は死なない長寿者にうんざり。こんな超長寿問題を解決するため、元気な超高齢者を「他惑星へ」移民させる計画が生まれる。だが……。途中までものすごくおもしろかったのに、オチがしょぼい。勿体もったいない。


 今村洋平さんの「白衣の男」、「私」は「崖の上で両手を広げ、深呼吸し」ている。崖の下では妻が手を振っている。でも、「幻聴」はこうささやくのだ。「トビオリタラ、ラクニナルカラ」。その誘惑に「私」が飛び下りようとした瞬間、「白衣の男」が「駄目ですよ! 早まっちゃ」と止めるのである。しかもおかしなことを言う。「芹沢さん、急に施設から飛び出すから」。えっ? 「俺」は芹沢でもないし、施設なんか知らない。どういうこと? ここから一気に話は飛ぶ。でも、そのオチがいまいちだった。惜しい。


 中山りのさんの「別の世界」は、人生の最後を迎えた「私」が「おまえ」に送った手紙が中心。「私」はあるとき、調査に向かった村で、ある女性と出会う。そして恋に落ち、結ばれ、彼女は妊娠する。ところが、突然、彼女は消えてしまう。半年後、村を再訪したが、村人たちは「そんな女性、聞いたことがない」と言うのである。やがて時が流れ、あるとき、「私」は彼女と「おまえ」、つまり子どもと出会う。彼女と子どもは「別の世界」の人間だったのだ。そして……おもしろい話だったが、オチがわかりにくい。残念。

応募要項
課 題

■第30回 [ トリック ]

 ミステリーに欠かせないのが「トリック」。昔から、たくさんの「トリック」が考案されてきました。「密室殺人」とか、もう多すぎてうんざりするくらい。あとはみなさんにおまかせします。どのように料理しようと。

■第31回 [ ありがとう ]

「ありがとう」は感謝のことば。どんな時、このことばを言いますか。あるいは言われましたか。あるいは「ありがとう」の気持ちをどう表現しますか。どんな「ありがとう」を見たり、経験したりしたことがありますか。

締 切

■第30回 [ トリック ] 
1/1~1/31(消印有効)
■第31回 [ ありがとう ] 
2/1~2/29(消印有効)

字数

・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。

書式

・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。

wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。

その他

・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

応募方法

〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。

〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。

発 表

第30回 4/1、Koubo上
第31回 5/1、Koubo上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/