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第33回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「不適切」結果と講評

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結果発表
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第36回 [ アート ] 
7/1~7/31(消印有効)

■第37回 [ すごい ] 
8/1~8/31(消印有効)

※募集期間外の応募は無効になります。

第33回結果発表
課 題

不適切

 課題は「不適切」。真っ向から切り合う作品、斜め上(?)から取り組んだ作品といろいろありました。これはやはり真正面から向かい合ったものの方が面白かったですね。

最優秀賞

 受賞作の大中博篤さん「さよならガルシアマルケス」も、やはり直球勝負の物語。「第四次世界大戦後、我が国はラテン文学を国文学に制定し、それ以外の舶来文学を皆不適切認定し迫害することになった」。というわけで、「ラテン文学を読むこと」が唯一の娯楽になった世界のお話だ。いや、はっきりいって地獄でしょ(笑)。ついには、ガルシアマルケス全集を持っていない人間はみんな強制収容所送りに! となると、当然反抗する人間も出てくる。武器は? もちろん、文学さ。最後はたいへん楽しいですね。

佳作

 白浜釘之さんの「不適切な民族」は、直球のお話だ。世界にはまだ未知の文化がある。そう考えてフィールドワークをした研究者が、その成果を発表する。なんとその民族は「雌雄による役割分担」があったり、「他の民族とわずかな土地や食糧をめぐって」争ったり、「他の生物を殺した上に味付けして食べ」るのである。この民族、稚拙ではあるが宇宙を航行する装置さえ所有している。こんなヤバい民族なのに。どうすればいい? 決まってる。早く滅ぼすしかないじゃないか。わかりやすいのもたまには悪くないです。


 エフエフエフさんの「あるじとの再会」はちょっと複雑。棺桶に横たわる祖父を前にして「俺」は犬のように泣き叫んだ。それからしばらくして、姉に子どもが生まれた。実に可愛い赤ん坊だ。舐めたいくらい。その赤ん坊と「俺」がふたりだけになった瞬間だった。なんと、赤ん坊が言ったのである。「おい、なぜあのときあんなことをした」と。びっくりするじゃないか。赤ん坊は「祖父」の生まれ変わりだったのだ。だが、お話はそこで終わりじゃない、なんと……。なかなか素晴らしいオチでした。ヒントはタイトルです。


 佐藤海斗さんの「ステゴロ」は、「小林」と「清水」で結成されたお笑いコンビ「ステゴロ」の物語。「アウトローな見た目と悪態をつく漫才」で、お笑いファンから人気の「ステゴロ」だが、やはりコンプライアンス重視のテレビ番組には縁遠い。結局、人気は下がり、地方での営業が主な活躍先になった。そんなある日、ネタ作り担当の「小林」は、舞台の上から笑わない少女を見つける。なんだかDVを受けてるようだ。とても「ステゴロ」のネタでは笑えない。そこで「小林」は一世一代の決意をする……なんかいい話だ。


 瀬島純樹さんの「傷のある顔」。「あの男が、ゆっくり正面から入ってきたときには、それはもう身の毛がよだつくらい恐怖を感じました」という文で始まる。しかも、口にするのは「記録することが、はばかられる暴言ばかり」で、そこには他に誰もいない。「不適切な存在」がいままさに「不適切な行動」を起こし、「不適切な結果」を招こうとしている。だから「わたし」は咄嗟に行動したのだ。その結果……まあ、なんとなく予想はつくのだが、この作品も「不適切」という課題を微妙に捉え損なったかも。やはり惜しい。


 枡田耕司さんの「新しいペット」の主人公は愛猫「ミケ」が失踪して、やる気をすべて失った「私」。ゴミの山に埋もれ、辞職して、あとは自殺するだけと決心したアラサーの女性だ。最後にゴミを清掃してもらうため「掃除屋」に依頼すると、来たのは若いイケメンの男。いったん外に出て、ペットカメラを作動させ、若い男の挙動を監視してみた。なんと、男は「私」のパンツをかぶり、ブラの内側を舐めているではないか。忘れていた「私」の「女」が蘇る。そして……「不適切」という課題がやや未消化か。惜しい。


 あらささんの「母の判断」、主人公は八十四歳の「私の母」。時々、「大学生の孫の有美」が様子を見に行くが、丈夫で一人暮らしをしている。しかし問題はある。物忘れがひどくなり、特に人の名前は思い出せない。そんなある日、手伝いに行っていた有美から緊急の電話が。母は嘔吐をして外科に向かったというのだ。えっ? 嘔吐なら内科じゃないの? なんで? 母親がそう言ったから? これはもう絶対「認知症」が進んでいるのだ。そう確信して病院に向かった「私」が見たものは……オチがちょっと。


 酒井一樹さんの「不適説」……って、タイトルは間違いではありません。主人公の「わたし」は、昔から「不適切な人間」と思われてきた。母の葬式でお坊さんのお経の声がミッキーマウスに似ていてゲラゲラ笑い出し大顰蹙ひんしゅくとか。どうしてそうなるの? なにかの病気? すると、こういう「不適切」な行動をとる人間は、「空に住まう見えない『不適者』」によってコントロールされているという説、すなわち「不適説」が広まっているというではないか。やっとわかった真実。だが……。無理矢理に作った感がちょっと。

応募要項
課 題

■第36回 [ アート ]

 テーマは「アート」。日本語いうと「芸術」。ゴッホやダヴィンチはもちろんアート。世界にはたくさんのアートがある。中には「これがアート?」ってものだって。いろんなところにいろんなアートを見つけてください。

■第37回 [ すごい ]

 いろいろあるでしょ。「すごい!」と唸ることが。本を読んで、テレビを見て、人と会って、何かを食べて、SNSで見て、思い出して、等々等々。人生の中で出会う「すごい!」を教えてくださいませ。

締 切

■第36回 [ アート ] 
7/1~7/31(消印有効)
■第37回 [ すごい ] 
8/1~8/31(消印有効)

字数

・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。

書式

・書式は自由。用紙サイズはA4判。設定できる人は縦書きで。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。

wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。

その他

・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

応募方法

〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。

〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。

応募条件

未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。

発 表

第36回 10/1、Koubo上
第37回 11/1、Koubo上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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「小説でもどうぞ」の応募作品を添削します。

受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/