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第36回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「アート」結果と講評 

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結果発表
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第39回 [ 眠り ] 
10/1~10/31(消印有効)

■第40回 [ 演技 ] 
11/1~11/30(消印有効)

※募集期間外の応募は無効になります。

第36回結果発表
課 題

アート

「アート」がテーマ故、作者の「アート」観が問われます。そこに作品のヒントも隠れています。断トツの傑作は一つ。でも最優秀ではありませんでした。その理由は後ほど。

最優秀賞

 最優秀賞は、瀬島純樹さんの「寸法を測る」です。「おじいちゃん、何を作っているの?」と美大に行っている孫娘のリクが訊ねるところから小説はスタート。「リク」と「わし」は別々に作品を作っていた。そして、最後に答え合わせのように、作品をお互いに見せ合う。なんと、「リク」が作っていたのは、「わし」の等身大の人形だった。そうか、「わし」の写真を撮っていたのは、寸法を測っていたのか。そして「わし」の作ったのは……。いいですね。素敵な終わりでした。オチの後の文章も可愛いです。

佳作

 ササキカズトさんの「動物の絵」は完璧なショートショート。冒頭は「一人の若い男が絵を描いていた」。テーマは「動物」。特に「馬や牛」。「男」には助手の「若い女」がいて、その「女」は「男」の絵を崇拝している。いや「絵」を通じて、二人は愛し合うようになる。だが、最後に悲劇が二人を襲うのだ。そして、明かされる「絵」の秘密。お見事。ほんとうに素晴らしいです。でも、一つだけ欠陥が。「絵」が有名すぎて、この「オチ」を使った作品、他にもあるのですよ。


 昂機さんの「僕の無人島脱出記」は、タイトル通り、無人島がテーマ。「骨の隋までインドア派」の「僕」は、漂流してからは島で「木彫り」三昧。食べる物には困らず、湧き水もある。あとはアートを作りながら、助けを待つだけ。「僕」は木彫りの「人面タコ」、「人面ミミズ」、「人面カワセミ」を作っては海に放り投げていた。するとある日、海岸に「ずたずたの魚」が。しかも、どんどん増えてゆく。ヤバい。サメがいる。どうしよう。その後の怒濤の展開にはびっくり。もう、むちゃくちゃです(褒めてます……笑)。


 藍染迅さんの「せっかちな芸術家」。山奥の河原に来ていた「私」は「川原に小石を積んだ塔が立ち並んでいる」のを見つける。その正体は何? 「現代アート」? すると、風が吹いて小石の塔を押し崩す。これもまた「諸行無常アート」の一部なのか。そして、「私」は「アート」の運命について考える。「アート」は時を超越できるのに、せっかちな芸術家が多すぎるのだと。せっかちな人間が増えすぎ「人類は滅びの道をつき進んでいる」のだと。だから「私」は……この「私」の正体は誰でしょう。中々ユニークな作品。


 仲井令さんの「家庭」、偶然ある企画展で出会った「教授」と話が合い、「俺」は「教授」の「家庭」に招かれる。その時、「教授」は謎の一言を呟く。「芸術に興味があるのなら貴方にも私の作品を見てもらいたい」。どんな作品があるのかと期待して出かけると、そこは問題を抱えた普通の「家庭」だった。「作品」は? そう思っていると、「教授」は驚くべきことを告白する。そう、「家庭」そのものが「作品」だったのである。どんな具合に? 面白いアイデアだが、最後の説明がちょっと腑に落ちにくい。惜しいなあ。


 市井堅治郎さんの「叫び、滅す」は、ちょっと怖いファンタジー。「丘の向こうの街が消えた」と聞き、「優太」は驚く。実は、最近、公園のベンチに座って、消滅したあたりをスケッチしていたからだ。そして、学校に行き、消滅した地区に自分をイジメていた同級生がいて「少し安堵の息をついた」りもするのである。休校が決まった後、スケッチした場所に行き、「優太」は驚く。なんと消滅した部分は「優太」が描いた場所と完全に一致していたのだ。それから……なんとなく展開が読めますね。オチにもう一工夫あれば。


 有原野分さんの「石を売る」。日曜日の公園、バザーみたいな露店が並んでいる中を、「私」が歩き回っていると「小汚い爺さん」が、小石を並べて売っているのである。値段を見ると、なんと「1000000円」(!)。どこにでもある普通の石なのに。びっくりして訊ねると、「爺さん」は並べてある石よりちょっと大きめの石を出してきて、今度は「2000000円」というのだ。いや、もっと高価な石もあるらしい。その理由を聞いて、「私」は石を一つ、格安の1万円で買ってしまう。理由も終わりも意外性がなかったかな。


 とがわさんの「我が子」は「ある一室の床に倒れこんで」いる少女のシーンから始まる。ミステリアスな冒頭だ。秋だというのに、その少女は麦わら帽子を被り、腕を肩までむき出しにしたワンピースを着て、外を歩いている。なんだかおかしい。そして、公園で少女は「爺さん」と出会う。ふたりは淡々と会話をする。おかしなふたりだと周りの人びとは思う。しかもその「爺さん」は少女の名前を知っているのである。なぜなら……最後の種明かしがちょっとストレートすぎて、小説らしいふくらみが乏しかったのが残念。

応募要項
課 題

■第39回 [ 眠り ]

 人生の三分の一近く、我々は眠っています。すごいです。三分の一が「眠り」で、残りの三分の二で、他の人生の課題を分けあっているようものですね。さあ、人生最大の課題に挑戦してください。眠る前にね!

■第40回 [ 演技 ]

 もちろん役者は演技します。演技の専門家だ。けれども、我々一般人だって、演技をすることはあります。というか、すべてが素のまま、ありのままなんて人いますかね。すべて「演技」みたいな人はいるとしても。

締 切

■第39回 [ 眠り ] 
10/1~10/31(消印有効)
■第40回 [ 演技 ] 
11/1~11/30(消印有効)

字数

・2000字程度。データ原稿可。
・空白を含めず、文字カウントが2000字程度。
(1割の増減まで許容)
・タイトル、作者名は文字数に含みません。
・手書きの場合は、400字詰原稿用紙5枚程度。

書式

・書式は自由。用紙サイズはA4判。縦書き、横書きは自由。ただし、選考は縦書き、発表は横書きで行う。
・作品冒頭にタイトル、本名かペンネームのどちらかを明記。
・作品にはノンブル(ページ番号)をつけること。

wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。

その他

・応募の際にはメールアドレスを記入してください。
・入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
・応募者には弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

応募方法

〔WEB応募の場合〕
・所定の応募フォームから応募。作品にもタイトルと氏名を明記。
・未記入の場合は「タイトルなし」「名前なし」で選考されます。

〔郵送の場合〕
・別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、作品末尾に並べ、ホッチキスで作品ごと右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。
・作品は元原稿のほか、コピーを1部提出。
・コピー原稿には別紙(住所等を書いた用紙)は添えない。
・作品は封筒に裸で入れる(過剰包装不要)。
・作品は折らない。
・作品の返却は不可。

応募条件

未発表オリジナル作品に限る。
応募点数1人3編以内(同工異曲は不可)。
AIを使用した作品は不可。
入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。

発 表

第39回 2025/1/1、Koubo上
第40回 2025/2/1、Koubo上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※発表月の翌月初頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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「小説でもどうぞ」の応募作品を添削します。

受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/